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地域防災の専門家 田中純一教授から石川県民へのメッセージ

執筆者のアイコン画像ことじろう
2022年06月15日 (水)

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NHK金沢放送局では6月24日、石川の防災を考える「その日に備える あなたに今できること」を放送します。
能登半島の地震、さらに梅雨の時期を控え水害にも警戒が必要ななか、
日頃の「備え」をどうすべきか考える番組です。
放送に先立って行われたスタジオ収録には、
地域防災・減災が専門の北陸学院大学 田中純一教授に来ていただき私たちが日頃何をすべきか、うかがいました。

災害で命を救う「日頃からの準備」

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アナ :災害が起きた時、その日が来てしまった時にですね、
    私たちは何を一番に考えるべきなんでしょうか?

田中 純一教授
適切な避難をすることだと思います。
避難という漢字は「難を避ける」と書きます。
災害が起こってしまうと、避難所に避難をすると単純に思ってしまいがちなんですけれども、
必ずしもその避難所に行くということだけが、難を避けることではない。
その津波であるとか豪雨ということを考えた時には、より高く安全な場所に避難するということも、
これは難を避けるということになると思うんです。
ですので、我々は難を避けるということが自分にとってどんな意味を持っているのかを捉えながら命を守るという必要があると思っています。

 

田中教授が強調するのは「日頃から準備をする大切さ」です。
東日本大震災では、岩手県釜石市の小中学生の多くが高台に避難し、津波を逃れました。
「釜石の奇跡」とも呼ばれましたが、それも「日頃の行動」が導いたといいます。

 

田中 純一教授
皆さんもたぶん記憶にあると思うんですけども、東日本大震災のとき、釜石市で中学生たちが避難行動をとったことによって
多くの人の命を救ったということで、釜石の奇跡と言われて非常に話題になったのがあると思います。
でも、いきなり突発的に避難行動ができたわけではないんですね。
改めて、学校の先生とか生徒さんたちに聞いてみると、東日本大震災がその起こる前から、地震が来たら津波が来る。
津波が来た時には率先して高台に避難するんだっていうことを学校教育の中で学んでいたわけですね。
ですから、奇跡という言葉は使われてはいるんですが、
彼らにとっては平時からやっていること、考えていること、それが具体的な行動になったということだと思うんですね。

 

いざというとき大切な人を避難に導く「声かけ」

田中教授は東日本大震災のとき避難した人を対象に、避難のきっかけを調査しました。
これがその結果です。

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最も多かったのは「地震の揺れぐあいから津波がくると思ったから」次いで「実際に津
波がくるのが見えたから」です。今回田中教授が注目したのはそれ以外のきっかけです。

田中 純一教授
やはり地震揺れが非常に強かったですから、いつもと違うなということで避難に動いてるんですが、
必ずしも全ての住民がその揺れだけで背中押されてるわけではないんです。
例えば「職場や学校の人が避難するように言った」、「家族が避難しようと言った」、「近所の人が避難するように言った」、
それぞれのポイントは決して多くないですが、これを足してみると20%近くなるんですね。
この20%の人は、誰かが背中を押したことで行動に結びついた
声掛けが背中を押すということが裏付けられるんじゃないかなと思っています。

 

防災・減災の専門家から石川県民へのメッセージ

田中 純一教授

石川県は、良くも悪くも大きな災害の経験はそれほどあるわけではありません。
だからこそ「災害は来ない」「大丈夫だ」と割と多くの方が持っていらっしゃるんじゃないかなと思います。
でも一方で激甚災害が各地で増えています。激甚化し、広域化し、巨大化している。
最近の災害を見れば過去の状況が必ずしも続くというわけではないと思っています。
我々に大事なことは、他の地域で起こっている災害は自分のことではないとわきに置くのではなく、「自分事」として考えていく
そういった視点が大事なんじゃないかなと思います。

次の災害が来る前に何をしなければいけないのか。これを自分たちで問いながら、一つ一つできることを増やしていくということが大切です。
一生懸命、できることを増やしても災害が起きた時には、全てのことができるわけではありません。
もしかしたら2割、3割ぐらいしかうまくいかない。
でも準備をやっておけば、その2割、3割は確実にできるわけです。
    
災害が起きた時のことを考えると、平時にできないことというのは、非常時にはできないと思っています。
やはり非常時には平時にやれることしかできないんです。
だとするならば、今やれることを個人で、地域で、積み上げていくということが改めて大事なんではないでしょうか。

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