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「センゴク」宮下英樹インタビュー完全版 その1

執筆者のアイコン画像松岡忠幸
2022年04月29日 (金)

マンガ大好き松岡です。私物の「センゴク」単行本を金沢局で一列に並べて撮影しようとしたら、廊下を使うしかありませんでした。
金沢局の廊下にコミック並べてみた

人気週刊漫画雑誌での連載がおよそ18年に渡って続いたマンガ「センゴク」シリーズがとうとう完結。ということで、石川県七尾市出身の作者・宮下英樹さんにインタビュー、3月30日(水)「かがのとイブニング」で放送しました。1時間を超えるインタビューのほんの一部しか放送できなかったので、Webで完全版をお届けします。

3つのポイントに絞って聞きます

アナウンサー20年目、松岡と申します。よろしくお願いします。

漫画家の宮下です。よろしくお願いします。

アナウンサー20年目になろうとしているからこそ、18年にわたる長期連載が、いかにとんでもないことかと思います。語り始めると本当に何時間あっても足りないので、きょうは3つのポイントに絞って聞かせていただきます。

◆歴史研究は苦しくないの?
◆漫画家・宮下英樹は どうやって石川で育まれた?
◆18年も連載すると いろいろ変わったのでは?
宮下英樹さんに聞きたい!

「センゴク」ってどんなマンガ?

主人公の仙石権兵衛秀久は、戦に敗れ落ち延びたところを、
仙石権兵衛秀久

信長に見いだされ、
信長

秀吉の家臣となって何度も失敗しては挽回し、
秀吉

大名にまで出世した実在の武将です。
大名にまで出世

最新の歴史研究を取り入れた、戦国武将のリアルな心理描写が特徴で、単行本の巻末には参考文献がびっしりと並びます。
参考文献

歴史研究は苦しくないの?

18年で読み込んだ史料となると、膨大な量になるのでは?

最初は、いわゆる軍記を見ていくのですが、それはやはり作者の歴史観や主観が入ってきてしまいます。ちゃんとした実証的な歴史って、いわゆる日記や、当時の手紙のやり取りを紡いでいくんです。それを、僕は全部は見られないわけです。やっぱり手紙とかつまらなくて頭に入らない。なので、研究者の方が、どういう史料を使っているのかというのを見ていって、僕は一応それを裏取りというか、確認していくわけです。
宮下英樹さんの史料棚宮下英樹さんの史料棚
それで、そのとおりだと思ったらそのとおり描くし、ちょっとこういう考え方もできるんじゃないかってなったら、違う考え方も入れるという感じにやりますね。

史料にあたるだけではなく、取材で現地に足を運ぶということでいろいろな写真をお借りしてあります。まず、これは何ですか?
合戦祭

合戦祭ですね。北条氏の戦いに参加させてもらった時の写真です。時代考証の先生にお誘いいただいて、この革の鎧も先生にお借りしました。

自分で合戦に参加してみて初めて分かることってありましたか?

鎧が、縛り方ひとつでちゃんと重心のバランスがとれるようになっていて、着付けによって、強そう、弱そうというのが出るのを実感しました。
一番驚いたのは大砲の音です。映像だとあの音の凄さは分からないものだなと本当に驚きました。

この山道は何ですか?
山城

いわゆる土のお城ですね。特に戦国時代の初期の頃は、石垣とか天守閣がなかったりするお城がすごく多いんです。ほとんど普通の山と一緒なんだけど、多少「堀」があったり、「坂道」とか、道に「折れ」を作ったり。
僕も最初はただの山登りっていう感じで行ってたんですけど、城郭の研究者の方とかに、ちゃんとこれはお城として作ってあるものなんだって、教わっていくわけなんですね。

一番謎だった写真が、この田んぼらしきものに囲まれた道です。
古戦場跡

これは姉川の取材です。いわゆる古戦場跡です。古戦場の広さとかを見ていくわけですよね。

広さを見る?何のために?

本当にこれぐらいの人数が、お互い展開できるかなとかです。一国の主同士が対峙するわけで、一国の存亡がかかっているわけですから、どれくらいの距離感なら、大名同士を守りつつ合戦ができるかとか。
例えば、ここだとだだっ広い感じですけど、当時だと道以外はもう歩けない場所だったりするわけです。
今では田んぼだったりするんですが、当時は灌漑(かんがい)も発達していないので、いろんなところに田んぼを作るわけにもいかないんで、道以外はすごい草むらだったりして歩けなかったりするとか。そういうのを想像したりするわけですよね。
姉川の戦い考察

土地を見るだけでそんなに想像を巡らせられるものですか?

最初のうちはそうでもなかったんですが、いろいろ行ったりする中で、少しずつ想像できるようになってきましたね。
例えば、お城ってだいたい川に守られていたりするものなんです。城跡があったりしたら、現地の方に
「昔ここに川がありませんでしたか?」とか聞いたら、やっぱりあったりするんです。古地図を見たら川の流れがやっぱり今と違っていたりとか。

ブラタモリみたいですね。

まさにそうですね。だから、私の地元の七尾とかを取材していて、昔は商売の時などに荷物を川を使って町に運んでいくわけですけど、橋げたと川面が近すぎるように思えるわけです。この隙間に船って通れるのかなと思ったりするわけです。
それで聞いてみたら、この辺は地盤沈下が結構あって、地盤沈下する前はちゃんと橋げたが高くて船が通れたんだよって、そういう話を聞いたりとか。

そういう現場の取材をすることでマンガってそんなに変わるものですか?

本に書いてあることと同じことを、現地の研究者の方にうかがっても、話し口調で印象が全然変わってくるというのはまずありますよね。
「ここは城があって守られていた。」って本で読むよりも、現地の先生に、
「ここにこんな城があったら、とても攻められないでしょうなぁ。」って言われたら、「たしかに無理ですね。」となって、想像力が広がるわけですよね。
川の話でも、例えば、
「夕方の河口部分だと流れが急になって、ちょっとした小さい川でも、ここはちょっと通れないでしょうなぁ。」とか、そういう言葉一つ聞くだけでも、イメージの説得力が増してきます。

でも、そうやって調べれば調べるほど、自由に描ける範囲が狭まってしまうんじゃないですか?

そこが面白いところだったりするんです。自由度が減っていくほど、やっぱり人間って、知恵を使ってそれを乗り越えようとするので。
例えば、戦の場面だと、攻める「時間」を考えるんです。大潮の日は川の流れがここに変わるから、ここから攻めようとか。風はこっち向きに変わるからこの日を目指してとか。あと、当時は太陰暦なので月の満ち欠けが日付で分かる訳ですよね。15日だったら満月の夜、明るい夜に行ったんだなとか。

でも、普通、マンガ家さんって、「キャラクターが勝手に動き出す。」って言うじゃないですか。不自由なキャラクターですね。

そうそう!そこが僕は面白い、いいなぁと思ったところなんです。
今までのマンガやアニメで見ていたものと違って、学者の方の実証的な歴史学って、本当に客観的で、それこそ勧善懲悪ではなくて、悪い人が勝つ場合もあれば、良い人が負ける場合もあったりとか。
全部が客観的に描かれていて、僕からしたら、すごく新鮮なドラマで。
これまで通説というのは、どうしても英雄像として描かれることが多かったんです。それが、ここ2、30年の歴史の学者の方々が、どんどん実証的にしていって、すごくリアルな戦国時代になってきていて、それが僕にはすごく新鮮だったんです。

それでも、ここまで徹底した研究って、苦しくないですか?

僕は実は最初、歴史が苦手だったんで、本当にもう、いわゆる一夜漬けでやっていたんです。毎週毎週、やる部分だけ覚えてそのまま描くみたいな感じだったんです。でも、そのうち、最近の歴史の学者の方の研究がすごく面白くなってきて。
英雄が歴史を動かすんじゃなくて、周りの環境、例えば家臣団とのやりとりとか、民衆とのせめぎあいでちょっとずつ政治が変わっていったりとか。戦いたくなくても戦わざるをえなくなったりとか。戦国大名が、周りに合わせて動かざるをえないって、また新しいドラマが見えてくるんですね。
最近の実証的な歴史が、人間のかっこいい部分だけじゃなくて本音が見えるような、戦国大名がふんぞりかえっているわけじゃなくて、すごく板挟みの中で悩んでいる戦国大名像が見えてきて、そこは僕が性根として好きだった感じですね。

「センゴク」宮下英樹インタビュー完全版 その2
「漫画家・宮下英樹は どうやって石川で育まれた?」 に続きます。
5月6日(金)に公開予定です。

この「センゴク」シリーズを読んで、リーダーとしての心得を学んだ現代の青年が自分らしい生き方を考えるようになるというドラマが、NHKで制作されました。
ドラマ×マンガ「センゴク~大失敗したリーダーの大逆転~」
5月13日(金)午後10時からBSプレミアムで放送予定です。
ドラマ放送日に向けて、宮下英樹インタビュー完全版を毎週金曜日3回に分けてお届けします。

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