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INTERVIEW 2022.11.20

大江広元役・栗原英雄さんインタビュー

~幕府にとってのベストを助言する~

物語も終盤ですが、前半に比べて広元はどのような変化をしていると感じますか。

終盤になってすごく人間らしくなったという印象です。これまでと同様に御家人たちの前ではあまり本音は出しませんが、誰かと2人で話すシーンなどでは思っていることを打ち明けることがチラホラ出てきているかなと。最初のころは頼朝様と双璧をなすように少し嫌われているようなご意見もありましたが、だんだんと視聴者の皆さまに広元がどのような人物なのかを理解していただけるようになったと感じています。幕府を運営していくうえでの冷徹さは変わりませんが、先頭に立っていく主人公に、より助言していく老文官になってきています。自らそれを中心になって進行していくわけではなく、幕府を運営していくために義時に意見を求められたら助言をするという感じですかね。
ただ、ずっと世の中の動きを目で見ていた広元が終盤では目をわずらってしまうんですよ。なので今後はきっと、心の目で人を見るようになっているのではないかなと思います。

広元としては、執権となった義時をどうサポートしようと考えているのでしょうか。

やはり広元は幕府のことを第一に考えているので、義時が年齢を重ねるにつれて覚醒していくところをずっと見てきているし、彼が頼朝様のそばでまつりごとを学び、どうなったら幕府がダメになるかを知っているからこそ、僕は文官としてそれを支えるということですよね。
御家人との距離感や朝廷との駆け引きとか。いろいろな政策案を出すとか。話し過ぎないからわかりあえるというのもあると思います。ふと言った一言が誤解を生んで追い詰められていくという例もありましたけれど、広元はダークなところに手は染めるけれども、多くは語らないという感じですよね。

政子に対してはまた新たな感情が芽生えているように見えますが、どう捉えていますか。

そうなんですよ。なんだか老いらくの恋みたいな感じ…力を持っているし、鎌倉殿にも親としてものが言える。「頼朝様が亡くなって鎌倉殿は代替わりをしていくけれど、自分が仕えていたのは尼御台、あなたなんですよ」と告白するシーンもあって、おもしろいなと思いました(笑)。「いつからなんだよ」と台本を読みながら感じたところではあるのですが、心のどこかで「鎌倉をまとめるのは政子なんだろうな」と思っているんでしょうね。御家人をまとめる力を持っているし、子どもたちにもいろいろ言えますから。

彼女もずっと幕府を見てきているし、頼朝様に「政治に口を出すな」と言われながらも自分の意見はしっかり持っていたじゃないですか。そういう点でも、広元にとって政子は“戦友”なんだと思います。雇われ側と主人ではあるのだけれども、これまでの時代を知っている方がどんどん減っている今、政子はわかりあえる貴重な存在。もめ事が起こっても強く誰かに加担するわけでもなく、常に中間地点にいるバランサー的な役割を担っている人でもあるので、なんだかんだ言いながら義時政子に頼りますよね。「僕がこうするのはしかたないんだ」と言いながらも、政子の意見を聞くことは、ある種の救いなのではないかと感じます。

そして、文官である広元が見事な立ち回りを見せたシーン(第41回)も新鮮でした。

あるとき三谷(幸喜)さんがスタジオにいらしていたのでご挨拶をしたら、「栗原さん。殺陣たて広元にさせようと思うんですけど」と言われて、「殺陣ですか?」と驚きまして。台本を読んでみたら、鎌倉殿に代々伝わっていた大事な髑髏どくろを取りに行くシーンで、死を覚悟して行くのですけれど、その前に政子に手を握られて頼まれるという(笑)。しかもト書きに「うれしいのを隠す」と書いてあって、僕は笑顔があまり得意ではないのでいい感じになったとは思っています(笑)。

殺陣の動きに関しては演出、殺陣師と相談して、the殺陣という感じで華麗に流れるようにばっさばっさと斬っていくイメージでした。たぶんですけれど、今までの広元を見ている方は結構びっくりされたシーンになったと思うんですよ。きっと三谷さんもそれを期待されたと思いますし、僕自身も「え、広元がこんなことに!?」「え、殺陣をやるの!?」ということがたくさんあって、台本を読みながら「どう表現しようかな」と考える作業が楽しいですね。

長らく鎌倉幕府を見守ってきた広元は、“鎌倉殿”という存在をどう思っているのでしょうか。また、実朝はどのような人物だと感じていますか。

すごく難しいのは、いろいろと頼朝様のころと違うんですよね。頼朝様は自身が流罪になることを経験されて、自分がちゃんと矢面に立って戦場いくさばにも出向いていました。しかし、頼家様のときには教育の方法も変わっていて、頼朝様のような経験は積まれていません。鎌倉殿をもり立てて幕府を上手に運営していくのは、時がたつほどに難しいことだと思います。だからこそ、頼家様でちょっと失敗してしまった教育を、実朝様にはどうしたらいいのか試行錯誤しているところです。
実朝様は優しくてクレバーですよね。最初のほうは自分の心の内をうまく表現できないもどかしさがありましたが、和歌や勉学的なことには優秀な人なので、幕府が自分の手から離れていくということにも徐々に気がついていく。だから朝廷と手を結んでいって、鎌倉殿という地位を元の鎌倉殿に戻そうとするんですよ。頼家様は「周りが自分の意見にしたがって当たり前」と思っていたけど、でもそれは弱さの反動だったとも思います。逆に言うと、実朝様は気の弱さはあるけれども実は芯がすごく強い人なんですよね。だからこそ、どう支えていけば彼にとってベストなのか考えながら接しています。

広元が理想としているのは、どのような世の中だと思いますか。

いくさのない、民たちが安心して暮らせる世だと思います。そのためにも、幕府が力を持ち、朝廷とのバランスを保ちながらも自分たちが優位に立つことを目指しているのかなと思いますね。

改めて、「鎌倉殿の13人」における大江広元をどう演じたいと考えていますか。

お話をいただいてから本当に恐縮しています。「鎌倉殿の13人」が制作されると発表になったときにSNSで、「じゃあ僕は50番目くらいには入りたいな」と冗談で言っていたんですけど、あるとき三谷さんが脚本・演出を担当していた舞台の稽古中に、「無事に開幕しますね。よかったです。ところで、大河ドラマも決まりそうなんで」と言われて、「そうなんですか!…え!?」と(笑)。それから少したって「役、知ってます? 大江広元です」と言われたので、調べるじゃないですか。そうしたら、かなり長生きした人で、かつて「草燃える」(1979年)で岸田森さんが演じられた役だと。そして、三谷さんが新聞のコラムで、「岸田森さんや成田三樹夫さんと一緒に芝居をしたかったなぁ。でも僕には栗原英雄がいる」と書いてくださって、なかなかのプレッシャーも感じましたけれど(笑)、うれしかったです。
あとは、大江さんのことを大好きな方々が鎌倉にはたくさんいらっしゃるんですよ。お墓に伺ったらお花がたくさん添えてあって。ああしておもいを寄せてくれている方々のためにも、真摯しんしに向き合って最後まで演じたいなと思っています。

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