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INTERVIEW 2022.11.20

のえ役・菊地凛子さんインタビュー

~自分を満足させるために義時を持ち上げる~

今回のオファーを受けたときの感想をお聞かせください。

視聴者として見ている作品に関われるようになるというのは初めてですし、そもそも自分が大河ドラマに縁があると考えていなかったので、本当にうれしかったです。決まってからいろんな方に「すごい! おめでとう!」と言っていただいて。ミュージシャンの方が紅白歌合戦に出場することが決まったら祝福されると思いますが、俳優にとっては大河ドラマがそういう存在なのかなと感じたりしました。
とにかくいち視聴者として第1回から一生懸命見ていて、おもしろいと思っていた作品の中に入れるということと、三谷さんの手がける舞台や映画もたくさん見てきて、「いつか三谷作品に出られたらいいな」とずっと憧れていたということの、2つの思いが一度にかなってしまって、「私の今年の運大丈夫かな、使い切ってないかな」なんて心配になりつつも(笑)、本当に感動しました。

いち視聴者としてご覧になっていた北条家の印象と、中に入って感じた印象の違いはいかがでしたか。

最初のほうの義時さんは巻き込まれている感じというか、関わりたくないと思っていたにもかかわらずどんどん周りが変化してしまったという感じだったのに、今はもう衣装も含めて真っ黒になっているので、すごく輝かしい気がします。なので現場にいてもまだ視聴者としての感覚のままの部分があるというか、放送を見ていたときは政子さんがまだ尼じゃなかったので、衣装合わせでお会いしたときに「キャッ!」となったりして(笑)。「ふん装が変わってる…!」と、ミーハーな感覚になりましたね。

三谷さんの作品は、知らない時代だけど本当にこういうことがあったのではないかと思わせてくれるセリフや関係性が多いですよね。いい意味で時代劇っぽくない、親近感を感じる人間らしさがあって、遠いところの話に感じないという魅力があるなと思っています。たくさんの争いがあるけれども、特に北条家の中で行われている会話は現代と変わらない感覚なので、「歴史ってこうやって紡がれてきたんだろうな」と思うというか、ずっと昔に先祖の方々がいて、きょうまで脈々と受け継がれてきたんだということをとてもリアルに感じています。

「鎌倉殿の13人」におけるのえはどのような人物だと思いますか。

のえは、「自分の夫に偉くなってほしい」とか「男子を産みたい」とか、わりと欲がハッキリしていると思うんですよね。自分の見せ方も結構ハッキリ分けていて、女性たちとは井戸端会議をして「あの人たち辛気臭いわ~」みたいな話もするけれど、男性たちの前では爪を隠しているという。私としてはそういうハッキリした感じは嫌いじゃないし、女性の方には好いていただけるキャラクターなんじゃないかなと勝手に思っています。
誰でも説明のつかない感情はたくさん持っていると思うので、今回のえとして、そういう女性のいろんな面を見せたいなと。私たちだって、後輩と話すとき、先輩と話すとき、旦那さんと話すとき、子どもと話すときとか、ある種毎日いろんなパターンの役割を演じているじゃないですか。そういう多面的なところを見せられる人物として描かれていると思います。

その中で、夫・義時に対してはどんな顔を見せようと努力していると思いますか。

のえはたぶん、義時が好きというよりは、義時に嫁いだ自分が好きなんですよね。自分の生き方にすごく自信を持っているというか。だから義時のためよりも、自分を満足させるために動いている気がするんです。つまり、義時がいろんな争いに巻き込まれていくということは、自分の立場も悪くなるということなので、“自分を守るために義時を守っている”のかなと。でもそれってある種、義時にとっては悪くない状況だと思うので、そういう意味ではそんなに悪い奥さんじゃないのではないかと私は思っています。

義時にとってのえは3人目の奥さんですが、これまでわりといい奥さんを2人迎えていらっしゃったじゃないですか。それで最後にたどりつくのがのえというのがなんか…(笑)。結局はお父さんと同じような感じで女性に操作されるようになるというか、視聴者としては「しっかりしろよ、義時!」と思ったりしますけど、キノコが好きだって思い込んでいたり、女性に対してズレた認識をしている隙に、のえはうまく入っていけるんだと思うんですよ。もちろん「自分を満足させるために義時を持ち上げる」という意識は絶対なので、いかに彼を良い方向に持っていくかというのを、うまくやっていけたらいいなと思います。

「自分を満足させたい」という点で、京都と鎌倉の両方で良い地位を確立している源仲章が魅力的に見えているのでしょうか。

そうですね。やっぱり地位や名誉がしっかりある男性なのでかれているのかなと思います。あとは京の香りがしたというか、「都会だなぁ」と感じる部分があって、ちょっとした憧れから、「その香りに引っ張られたい」みたいな思いがあるのかなと感じます。
なかなか怪しい関係性ではあるのですけれど、三谷さんの台本って、わりとセリフがポンポン展開されているのにハッキリと言及されていないこともあって、どうにでも解釈できるところがあるのがすごいなと思うんですよ。ト書きが多い台本だと、そこに向かって行かないといけないと思って立ち止まってしまうことがありますが、三谷さんの台本にはいい意味でこちらがいろいろと考える余白があって、すごくおもしろいなと思います。話が少しズレてしまいましたが、そういうことをのえ仲章さんのシーンでも感じました。

改めて「鎌倉殿の13人」のおもしろさはどのようなところに感じますか。

出てくる登場人物たちみんないろんな思惑があったりするけれども、やっぱりどこかチャーミングだなと思うんですよね。筋が通っているところは強く通っていて、張り詰めた緊張が走ることもありますが、かと思えば急に栓が抜けたように緩くてチャーミングな表情が出てくるところが魅力的だなと。あとは、三谷さんが演じる方のことをよく見て書いていらっしゃるんだなというのをすごく感じますし、三谷さんだからこそ出せるひとりひとりの人物の感情のヒダみたいなものがたくさん見えるので、そこはやはりいち視聴者として楽しいですし、「このキャラクターのこういうところが好きです」という細かいツボを視聴者の方が持ちやすいのではないかなと思います。そういうのすごくいいですよね。

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