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INTERVIEW 2022.11.06

北条泰時役・坂口健太郎さんインタビュー

~相手の心の機微に気がつける聡明な人~

物語が進むにつれて泰時の意思表示がどんどん強くなっていますが、彼が心の成長を遂げる転機となった出来事は何だったと感じていますか。

やっぱり、頼家の死は大きかっただろうなと思います。泰時は父上の背中を見ながら健やかに育ってきた男の子だと思うので、義時御家人たちを粛清していくのを見て、しかたのないことだと理解している部分はあっても、「本当にこれでいいのか」という疑問も少しずつ抱いていたと思うんです。その中で竹馬の友のような関係だった頼家の死はかなり衝撃的だっただろうなと。頼家もすごく切ない男の子だなと坂口健太郎として台本を読んでいるときから感じていたし、泰時として接していても、少しずつ暴走を始めてしまう彼をどうにかして救える方法はないかと思っていたんですけどね…。最悪の選択を取らざるを得ないのはすごく苦しいし、いろんな御家人の思惑が重なった結果とはいえ、その決断を下したのは父上なんだという思いはあると思うんですよ。そこから泰時の心のヒビがどんどん大きくなっていったのかなとは感じています。

かつては仲間だった御家人たちとの争いが続き、第41回では和田義盛ともいくさになってしまいました。よろいを着て戦う泰時の姿もありましたが、どのような心境になりましたか。

ものすごく大変でした。でも、泰時って実際に戦ったら強いのか弱いのか、正直よくわかっていなかったんですよ。巻狩りに行ったときは弓の名手という雰囲気を出していたけれど、ふだんは盛綱がすごく守ってくれてもいるので、どうなんだろうと。

心境としては、畠山重忠の乱のときに和田義盛に「戦は怖いか。なら俺の戦い方を見ておけ」と言われて、その戦いを見て培ったものもきっとあったはずなので、その人と戦うというのはしんどかったです。しかも実朝和田の関係性もよく知っていますから余計に…。最後、実朝を「危ないです!」と言って戦場から遠ざけたときに義時が「八幡宮へお連れしろ」と言って去っていくんですが、「そのときの義時にらむ目がすごくよかった」と演出の方たちに言われたんです。それは、これまでも「父上は間違ってる」と言ってきたし、「実朝和田のことを必要としている、これは助かるかもしれない」と思ったあとの父上のあの行動だったので、怒りとか悲しみとか、なんだかいろんな感情がごちゃまぜになっていたんだろうなと思います。

泰時は実朝のことをどのように支えようとしているのでしょうか。

僕は、実朝の細かな意思表示を敏感に察知できる聡明さを大事にしたいなと思っています。なので、彼からの恋愛的な視線とかも繊細に受け止めたいなと。泰時にはその気持ちにまったく気がつかない無頓着さがあってもいいと思うのですが、僕としては、実朝が持つ多くの悩みを感じられる人でいたいなと思うんですよね。とはいえ、その感情イコール自分への愛情であると敏感に結びつき過ぎないほうがいいとも思うので、その塩梅あんばいは難しいのですが…。実朝の心の異変に気がつきながら、気がついていないフリをしたほうがこの関係性が切なく見えるんじゃないかと演出と話をし、気を使いながらお芝居しています。でも、2人はすごく親しい友であり、美しい関係性だなと見ている方に思っていただけたらいいなと思いますね。

逆に泰時を支えてくれている人々もいますが、まず、妻・初にはどのような思いを抱いていますか。

泰時は決して万能な人ではなくて、未熟な部分もあるがゆえに父上に対して反発をしてしまったりするのですが、そういうときには空気抜きをして良い方向に導いてくれる人だと思うんですよね。だから僕としては、とのシーンではうまく尻に敷かれたいなという思いがすごくあります。特に最近は、精神的にかなりキツいことが多いのですが、の一言で気づかされたり、思い直したりすることも多いんですよ。泰時は彼女に愚痴を言うことが多いのですが、あれはちょっと甘えている感覚というか、少し言い過ぎかもしれませんが、いじめられて帰ってきて、お母さんに「こんなことされたんだよ!」と言っているような感じですかね。なのでの前では、泰時の無邪気さや子どもっぽさがチラリと見えてもいいのかなと思って演じています。

幼いころから見守ってくれている平盛綱はどのような存在ですか。また、彼の「御家人になりたい」という発言をどう感じましたか。

身内を超えた近さを感じています。きっと盛綱のような人がいなかったら泰時はもっと孤独な人になってしまう気がするし、自分のことをよくわかってくれてサポートしてくれる存在はすごく心強いなと思いますね。きっと泰時が孤独な人だったら、このあと“歴史的に有名な御成敗式目をつくる人”にはなっていなかったかもしれないし、胸の内を話せる存在のありがたさを実感しています。
彼が父上に「御家人にしてください」とお願いしたときは、心のどこかでなってほしい気持ちもあるし、彼が「今までずっと泰時を支えてきた」と自負していることも感じていただろうけど、やっぱり父上の手前、「調子に乗るな!」と1回ストップをかけるという、状況を客観視できている泰時もいて、なんだか不思議な思いになるシーンでしたね。
ただそのあとにあった切的きりまとの儀では、泰時盛綱の関係性がよく見えたのではないかと思います。彼とは一緒に育ってきたし、いろんなことを経験してきたから、ある種、友達感覚のようなところもあるんですよ。だからこそ、「あと1本矢が当たれば北条側の勝ちだ」という場面で盛綱が見事に射抜いて泰時と抱き合って喜んでいるさまが可愛かわいく見えていたらいいなぁと。まぁ、それを見ている実朝もいるので、いろんな思いが交錯して複雑ですが、とにかく彼がいることによって救われている部分は多いだろうなと思います。

後半からは、新たに弟・朝時も登場しました。彼はどんな人という印象ですか。

ちゃらんぽらん(笑)! でも憎めない人。泰時からすると「お前はまた何言ってんだよ」と思う発言をしてきたりしますが、シーンとしては朝時がいることで生まれる緩急もあると感じています。彼には、できる兄がいることへの悲しみみたいなものがどこかにあるような気がするんですよね。それを特に感じたのが、第41回で僕がヤケになってベロベロに酔っ払っているときに、今までちゃらんぽらんだと思っていた朝時が「誰にも期待されない人だっているんだ。そんな奴の気持ちなんて考えたことねえだろ!」と言うんですよ。それを聞いて、朝時は生まれたときから父上や僕に対して何かコンプレックスのようなものを抱えていたんだろうなとすごく感じました。それで泰時和田義盛の乱が終わったあとに「板戸で矢を防ぐ案を出したのは朝時です」と父上にうそを伝えて、「役に立つ男になってくれ」と声をかけるんですよね。それは、酔っ払っているときに彼に言われた一言で泰時も一段階成長したからではないかと思いました。
朝時も、僕がいろんな人に「真面目」と言われるからこその立ち回りなのかなって深読みすると思うんですよ。だとすると彼もすごくいい人なのではないかと。次男として生まれた切なさみたいなものを一緒にお芝居して感じたりしています。

そして伊豆へ追放となった祖父・時政とは第42回で再会の場面が描かれました。平穏な暮らしを取り戻した時政の姿をどう感じ、接しようと思いましたか。

時政の夢”みたいな捉え方でいいのかなと思っていました。いろんな激動の時代を生きてきた人が、足腰もちょっと弱くなってお庭で芋をむいていて、泰時と話すことによって幸せだったころの家族を思い出すみたいな。だからあのときは、なるべく子どもの感覚を忘れずにお芝居したいなと思っていたんです。なぜあのシーンで泰時が会いに行くのかと考えたときに、次の世代へのバトンタッチのような雰囲気も感じたし、義時泰時に思いを託して時政のもとに行かせたのかなと思って。なので、時政は僕を孫だと紹介するけど、「楽しかった時代の義時が来てくれたな」と思ってほしいなとも思っていました。
なんだかすごく優しい気持ちになるシーンでしたね。新しいお世話役の女性がいるのを見て、「やっぱり義時の父親なんだな」と思ったりもして(笑)。でも、りくさんとは離れているけれどつながっているなというのも感じたし、すごく可愛いおじいちゃんになっていたので、最期は幸せに送ってあげたいなと思いました。

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