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INTERVIEW 2022.10.23

八田知家役・市原隼人さんインタビュー

~多くのベールに包まれた八田知家の魅力~

「鎌倉殿の13人」における八田知家はどのような人物だと思いますか。

今作での八田は、なかなか周りの人間が言いにくいことを言えてしまう、しかも嫌味なく、ポロっと言えてしまうような、そういう立ち位置の存在であり、人間くさく、自分にうそがつけなかったり、どんな争いが起こっていても自分の言葉を相手に届けるまでは執着し続けたりするような面もある人物だと思います。ですので時には何かおきてを破ってしまうこともあるでしょうけれど、その土台にはすべてを俯瞰ふかんしてからしっかりと判断しているような面があります。また、相手への恩義や敬意はちゃんと払ったうえで、土足で相手の心に入っていくような、そんな勇気を持っている人物だと思っています。
僕自身も、よくも悪くもものを言わないと気がすまない性格ですので(笑)、似ている部分があるように感じますし、大義名分がほとんどないような時代の中でも何か自分の核を持って生きようともがく八田の姿には共鳴するところがあります。

放送をご覧になった周りからの反響はいかがですか。

八田知家という異質な存在に声を上げてくださる視聴者の皆さまの多さに驚いています(笑)。一匹狼であり、どこにも属さないような性質ゆえにどんな動きを取るかわからない、どういう立ち位置なのか、どんな素性なのか、物語にどう絡んでくるのかも謎、いろいろとベールに包まれた部分があるからか、気にしてくださっている方がたくさんいらっしゃるようでありがたい限りであります。

その異質な雰囲気をつくるために、芝居やビジュアル面などでどう工夫されているのですか。

正直すごく難しかったです。今まで向き合ってきた実在した人物の役の中で一番資料が少なかったこともあり…。ですが、いろいろなことを試してひとつの答えを出していく感じが役者として醍醐だいご味を感じさせていただける貴重な役でもあります。例えば座り方も、あぐらではなく一人だけひざを立てているとか、悪気はないけれどはたから見ると少し枠から外れたように見える演出をしてみたり。けれども、憎めないし、確信をつくような思想も持っていて、そういうところにかれて呼ばれている面もあると思いますので、どこかで扱いにくそうな雰囲気を残しつつ、「やっぱりこの人がいないと成立しない」と思ってもらえる部分もしっかり残そうと意識しています。

ビジュアル面でも型にハマらず、泥臭くいたいので、ヒゲも整えず、髪の毛も崩れている。決してキレイではないけれども、心で生きているような人間くさい雰囲気を見た目からも出せたらいいなと思っています。服装も生き方も着崩している職人という感じです。ちなみに、セクシーさは全く狙っていません(笑)。

以前より「俺は俺だ」という強い軸を持ちながらも、徐々に坂東武者たちと共に行動することが多くなってきました。その中でも北条義時のことはどのような人物だと感じていますか。

どこか親心というか、心配だから見守っているという感覚です。義時は職人気質な八田にはなんでも話しやすい、頼りやすいと思っている感じもしますし、八田もそれを受けバックアップしていると思っています。ただ、それが本当にバックアップなのか、そう見せかけて実は八田だけの正義があるのか、演じていて常に天使と悪魔が戦っているような感覚ではあるのですが(笑)、当時は身内同士でも潰して上に立とうとしたり、秩序や規律がわからなくなる恐ろしさのある時代ですので、義時八田の関係もまた前半とは別の空気感になるのではないかと僕も楽しみです。

第34回では義時に「のえさんを見極めてほしい」と頼まれ、自信満々で「裏表なし!」と答えていましたが、あれは本心でしょうか。

本心だと思います。ですが、見る目はなかったですね(笑)。やっぱり男の世界で職人として生きていますから、女性をしっかり見たことがなかったのか、見当外れなヒントを渡してしまうという。たまに隙を見せて視聴者の皆さまを引き付ける演出のしかたも、三谷作品ならではの憎らしいところですよね。そこから生まれる人間の愚かさとか、皮肉さなどが生々しく本当におもしろいと感じます。みんな必死に生きてはいるけれども、どこかで隙を見せてしまったり、見せてはいけない姿があったり、それらが混沌としてしまうゆえに争いが起きてしまう、そして取り返しのつかないことにどんどん発展していってしまうという、時代が人を作るのか?人が時代を作るのか?いつも考えさせられます。

撮影中に何度か八田知家のお墓参りをされていますが、何か心境に変化はありますか。

八田知家という人物はあまり史実が細かく残っていないので、わからないことが多いのですが、「わからない」で終わらせてしまうのは役者ではないので、何か少しでも近づきたいという思いから、お墓参りをさせていただきました。お墓に行って周りを掃除させていただくことで、だんだんと役への硬さが取れてくるのを自分の中に感じました。しっかりと敬意を持って近づいていくうちに、より今作品で表現する八田としては「型にはまらなくてもいいのかな」と思えるようにもなりました。ご子孫の方にお話を伺っても、やっぱり「あまり史実が残っていないんです」ということで、本当に追いかければ追いかけるほど逃げていくような存在なんですけれど、だからこそ三谷さんがどう描いてくださるのか楽しみでしかたがないです。歴史にはやはりわからないからこそのロマンがありますし、現代の日本人が描くことで未来に紡いでいきたい希望や夢を含め、いろいろな解釈があると思いますので、今回このドラマで八田知家を演じられることは本当に楽しいですし、日本人としても生涯の誇りになる役だと信じています。

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