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INTERVIEW 2022.10.16

北条義時役・小栗旬さんインタビュー<前編>

~頼朝から学んだ政~

長らく北条義時の人生を追体験されてきて、初期からの変化をどのように実感していますか。

だんだんとダークになっていくことは最初からわかっていましたが、義時の中にはちゃんと根拠があって行動しているんだなと感じています。それは何かというと、やっぱりひとつは“怒り”なんですよね。義時は「確実にこうしたほうがこの東の武家が生活していくためにはいいはず」とずっと考えているんですけど、それを理解してくれる人間があまりに少ないという状態が続いている。結局みんなは「自分の立場を上にしたい」と思っているから…。だからこそ義時は、どんどん自分の思いとは真逆の「争いで勝たなければやっぱり礎は築けない」という方向に思いが行ってしまって、やりたくない戦もやり続けなければいけなくなってしまっている。そしてだんだんと本人的にも、果たして本当にやりたくないものだったのかどうかがわからなくなってきている気がします。そういうシビアな決断や選択がはたから見るとダークに見えるのだろうけれど、それをすることによって“本来自分がつくるべき鎌倉幕府”になると信じて突き進んでいる感じなのかなと思います。

“本来自分がつくるべき鎌倉幕府”というのは、兄・宗時が掲げた坂東武者が上に立つ幕府でしょうか、それとも、頼朝が目指してきた幕府でしょうか。

たぶん半分半分だと思います。武士の政権をつくり、その一番上に北条がいるというのが間違いなく理想としてあると思いますが、でもやっぱり学んできたのは頼朝の政なので。本来義時は恐怖で人を支配するなんてしたくなかったはずなんですけれど、「力によってある程度みんなを抑えておかないと反発が起こる」と徐々に気づかされて、「そうしないとなかなかみんなで同じ方向を向くことは難しいんじゃないか」と思っているからこそ、「頼朝がやってきた政は、非情だけれども実は正解だった」と思っていると思うんですよね。

でもそうなると、頼家のときは彼の中での権力に対する思いみたいなものと、理想を目指そうとすることの間にズレがあった。そして実朝は、素晴すばらしい鎌倉殿ではあるけれども、やっぱりその甘さのおかげで小さな争いが起こってしまうであろうと思っている感じです。

直近での“やりたくない戦”には、畠山重忠の乱があったと思います。重忠と戦うときの心境はどのようなものでしたか。

重忠との戦いは、「もうここまで来たら、とりあえず自分の目指したところに突き進むしかないんだ」と思わされるものだったような気がしています。あれは本当に筋が通ってないのにやらなきゃいけない戦いだったし、しかもその口火を切ったのが父上というのがあったので、非常に大きな出来事でしたね。

台本のト書きには「激しい格闘の末」というように書いてあるシーンだったのですが、実際の撮影では、演出の末永さんに「ものすごい醜い戦いにしてほしい」と話したんですよ。それは、『最後の決闘裁判』という映画があって、マット・デイモンとアダム・ドライバーという俳優さんが決闘裁判をするのですが、生き残るために戦うという点で今回と似たようなものを感じて、そういう雰囲気にしたいなと。なぜかというと、武芸に優れている重忠義時が勝つには卑怯ひきょうな手を使わないとどうにもならないというか、あそこで死んでしまったら義時も自分の目標としてきたものをすべて失うわけなので、どうしても死ぬわけにはいかない。だから何かしらで重忠に勝たないといけないわけです。そのために重忠の刀を落としてなんとか泥試合に持ち込むような立ち回りをつけてもらって、本当に2人でボロボロになりながら撮影しました。そして重忠から「この先の鎌倉を背負っていくのは私ではなくやっぱりお前なんだ」と思いを託されるんですよね。そこで義時の中では「この死を本当に無駄にしてはいけない」と考えるようになって、今まで以上に余分なものを排除するしかないっていうところにたどりつくのだろうなと感じています。

撮影はすごく暑くて大変だったし、終わったらよろいもボロボロになっていたけど、たくさんの方々の協力を得てすごくいいシーンが撮れたんじゃないかなと思っています。あと余談ですが、「やっぱり俺は馬のさばきが上手だったな」と思いましたね(笑)。

お互いをすごく知っているからこその愛情がぶつかった戦いが、余計に切なかったですね。

そうなんですよね。お互いにとって無意味な戦いなんですよ。意味を探すことがすごく難しくて、結局はお互いの誇りのぶつかりあいでしかないっていう…。今の僕たちからすると「いいじゃん、別にそのくらい折れたってさ」と思うようなところもあるのですけれど、その誇りをかけて全力で挑んできた人を、意味なんてないけど真正面から受け止めるしかない戦いだったので、本当に悲しかったです。

そこから家族との対峙たいじも始まり、ついに父・時政とも別れることになってしまいましたが、義時としてはどのような思いになりましたか。

あれも悲しかったですね。父上と今まで共に生きてきた時間が思っていた以上に役者・小栗旬の中に溜まっていたので、実際の北条義時という人を考えたら、最後の別れの瞬間が父上に対してああいうシーンになったことが果たして正しいのか正しくないのかわかりません。しかし、自分が演じてきた北条義時にとっては、ああせざるを得なかったのではないかと感じています。
正直台本を読んでいる段階では、いろんな感情を我慢しようと思っていたんですよ。ト書きには「涙をこらえて」みたいに書いてあったのですが、もう少し冷静に、心の中はぐちゃぐちゃでも、ちゃんと「これであなたとはもう会えません」とお別れしようと思っていたんです。けれど、結局撮影では抑えきれなくなってしまいました。でもそれはある意味、自分が想像していたことを自分が超えてくれた瞬間に出合えた感じがしてうれしかったですし、ここまで(坂東)彌十郎さんと築きあげてきた関係性、過ごしてきた時間が、本当にいいものだったのだと感じました。

ドラマも終盤になり、新たな登場人物も増えてきましたが、3人目の妻・のえ、朝廷と鎌倉を行き来する御家人・源仲章に対してはどのような印象をお持ちですか。

終盤になって新しく登場してくる方たちのことを、義時は基本的に信頼していないんですよね…。のえさんのことは素晴らしいおなごだと思っているし、きのこを大好きだと言ってくれるのでたまらないんですけど、少しずつ、彼女が頑張って義時に見せていたメッキが剥がれてきている感じもあって、これまでの奥さんたちとはまた違う関係性になっていくのではないかという気がしています。

そして生田(斗真)くんが演じる仲章のことは、基本的には“いけすかない奴”と思っているというか、やっぱり義時頼朝を見て過ごしてきたので、朝廷はあんまり好きではないんですよね。この鎌倉で武家政権を築く。それがずっと目指してきた目標だし、そのために一体どれだけの尊いものが失われてきたのかということが、義時の中で大きな傷になっているので、そこに何もわかってないのに突然現れる西の奴らというのは、やっぱりどうしても許せないというか。それによって実朝も影響を受けますし、義時の“怒り”はどんどん加速している感じがしています。

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