特集

INTERVIEW 2022.09.04

九条兼実役・田中直樹さんインタビュー

~空気が動くような雅さで~

今回のオファーを受けた際の感想と、脚本の三谷幸喜さんからのお言葉が何かあれば教えてください。

大河ドラマへの出演のお話をいただけたことはもちろん、三谷さんの作品にまた出演させていただけることがすごくうれしかったです。前回の映画以来、かれこれ20年近く三谷さんの作品に出演させていただく機会はなかったのですが、メールではちょこちょこやりとりをさせていただいていて、「鎌倉殿の13人」への出演にあたっては九条兼実さんのイメージを送っていただきました。「映画『柳生一族の陰謀』の成田三樹夫さんのお芝居をみてください」とのことで、公家のイメージや、矢柴俊博さんが演じられていた平知康とは違い、九条さんがいかに位の高い人物なのかを教えていただきました。

「鎌倉殿の13人」における九条兼実はどのような人物だと思いましたか。

後白河法皇様に振り回される人物というイメージです。法皇様はなさることがむちゃくちゃで、いろいろとすごかったじゃないですか(笑)。位が高い九条さんとはいえ法皇様とでは立場が全然違いますので、“いかに振り回されていけるか”ということを意識して演じていました。「あり得ない状況なんですけど、これ…」というのをしっかりと表現できたらいいなと思っていました。

西田敏行さんが演じた後白河法皇の印象はいかがでしたか。

おもしろかったですね。法皇様は毎回、お芝居を微妙に変えてこられるんです。例えば、第19回で院宣を出すシーンがありましたが、頼朝を討つのか、それとも義経を討つのか、本当に御本人がもうわからなくなったというような感じで演じられて。カメリハと本番で何テイクか撮影したのですが、そのたびにお芝居を変えてこられる法皇様がもうおかしくてしかたがなかったです(笑)。でも、僕は笑うわけにはいかなかったので、我慢するのが大変でした。

九条兼実を演じるにあたり、所作などで意識されたことはあるのでしょうか。

所作については、九条さんは京の名家の方なので、落ち着いて雅に、“空気が移動するかのような動き”を意識しました。また、公家の人たちは基本的に話していることと腹の中で思っていることが全然違います。そういうところが役柄として難しくもあるのですが、その駆け引きを楽しみながら演じていました。

九条兼実と慈円との兄弟関係についてはどのような印象ですか。

九条さんは娘を入内じゅだいさせたけれど思うようにはいかなくて、どんどん政治から離れていくのですが、慈円さんは今まで自分がいたど真ん中にいるので、その温度差みたいなものが出せたらいいなと思って、兄弟のシーンに臨みました。「九条さんはいろいろとしんどくなってしまったのかな…」なんて感じていますけれど、実際にはどうだったんでしょうね。

慈円さんを演じる山寺宏一さんとは、以前三谷さんが脚本・演出をされた映画で共演させていただいて以来となるのですが、そのときも血縁関係のある役柄でした。「鎌倉殿の13人」でも兄弟役というのは、ご縁を感じますね。山寺さんは芸能界の大先輩であり、年齢も上なので、自分が兄で山寺さんが弟というのは不思議な感覚ですが、ご一緒できてとてもうれしかったです。

ドラマをご覧になっての感想や、周りからの反響はいかがですか。

いや~おもしろくてしかたがないですね。三谷さんらしい、いい意味で緩く笑いのあるシーンやキャラクターだと思っていたら、急にグンっと真逆のところに振り切られる怖さがあるじゃないですか。「え? うそ? 前半あんなに楽しかったのに、急にめっちゃ怖いやん…」って。緩いところから一気に厳しいところへもってこられるので、より怖さが増すんですよね。そういう振り幅が三谷さんのすごいところだなと改めて思います。僕が登場する第34回までを見ても、最初と比べて義時がどんどん変化していてゾクッとするし、ひとりひとりの人物像がとても魅力的なので、その人にスポットをあてて追いかけて見たくなるんですよね。最初と最後でどのくらい人物像が変わってしまうのか、本当に楽しみです。

あと、やっぱり大河ドラマってすごいんだなと感じるのは、僕はそんなに出演していないのに、ご覧になっているみなさんにすごく声をかけていただけるんです。「本当に楽しんでいらっしゃるんだなぁ」ということが話をしてくださる方の温度からわかるのもうれしいですし、現場などで自分が経験した話をさせていただくと喜んでくださるので幸せです。僕の両親も大河ドラマに出ると報告したらすごく喜んでくれました。「何の役?」と聞かれたので「九条兼実」と言ったら、「くじょう…かねざね?」と言ってましたけれども(笑)、毎週楽しみにしてくれていて「今度はいつ出るんだ」と聞かれたりしていました。

九条兼実として生きた時間は、どのようなものになりましたか。

とても幸せでした。本当に毎回現場に来させてもらうのが幸せだったので、正直第34回で最後というのはさみしいのですけれど、すごく貴重な経験をさせてもらったなと思います。大河ドラマには初出演でしたが、やっぱり言葉づかいであったり、束帯を着ることができたりなど、ふだんとは違う世界観の中で演じられたことが刺激的で楽しかったです。テンションが上がりっぱなしでした。
撮影のときにちょっと思ったことなのですが、第22回で源頼朝と対面したときに僕が墨をすっていたのは、あれは『玉葉』にその日のことを記す準備をしていたんじゃないですかね。九条さんがあの頼朝との出会いを日記に書いて、それが巡り巡って現代において三谷さんが参考にされて大河ドラマを書かれているのだとしたら、すごいつながりですよね。勝手にそういう想像をするだけでも楽しかったし、ドキドキしていました(笑)。

特集

新着の特集をご紹介します