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INTERVIEW 2022.08.28

善児役・梶原善さんインタビュー

~もう少し暗躍していきたかった~

「鎌倉殿の13人」における善児はどのような人物だと思いましたか。

顔色ひとつ変えず、言われるがまま実直に仕事をこなす。それに尽きるのではないかと思います。三谷さんからは「一見、人を殺すように見えない、殺気立っていないタイプがいい」とアドバイスをいただいたので、それを大前提に役柄をつくっていきました。やる気があるようなないような雰囲気で、殺陣たても時代劇っぽいきれいさがないように意識していました。放送回を重ねるごとに、「オープニングで善児の名前があると怖がられている」という報告もいただくようになり、三谷さんの構成によって絶妙な存在感のある人物になれたのではないかと思います。視聴者の方々をドキドキさせるということには僕のほうも毎回ドキドキしていました。

特異な役柄を演じられていましたが、現場での在り方がほかの作品と違う感覚になったりはしましたか。

まさか自分がこんなにも人をあやめることになるとは思っていなかったので、「やっぱり見るのとやるのとは違い、あんまり気持ちのいいもんじゃないな」というのが素直な感想です。第5回の台本をいただき、読んで「えぇっ」となった。愛之助さん演じる宗時さんが大好きだったのでその方をまさか僕が手をくだすことになるとは思ってなかったんです。配役とはいえ、共演者の方々が亡くなっていくのはつらくて…。今回は現場ではあまりヘラヘラしてはいけないと思いながら、撮影に臨んでいました。

三谷脚本のおもしろさはどのようなところに感じますか。

僕は19歳のときに三谷さんと知り合い、以来付き合いが長いのですが、三谷さんも僕も若いころからコメディーが好きで、“笑いを取る”ことが目的のひとつでもありました。ふつうは年を重ねるほど妙に大人になってしまうのか、“感動”を求めたりすると思うんですよ。けれども三谷さんは、もちろん“感動”はありながら、いまだに“笑いを取る”ことへのエネルギーがまったく変わってないんですよね。今回もどんなにシリアスなシーンでも要所要所で笑える場面を入れようとしているでしょ。それが登場人物たちの人間っぽさにつながっているとも感じるので、本当にすごいなと思います。

ちなみに、「鎌倉殿の13人」をご覧になって「この役いいなぁ」と思う人物はいますか。

そうですね、それぞれに魅力は感じますけれど…和田義盛ですかね。横田さんのことも昔から知っているのですが、あんなに横田さんをおもしろく料理している三谷さんはすごいし、横田さんもすごく自由に義盛さんを演じられていますよね。「最高にいいキャラクターをつくったな」と思う反面、ちょっと「僕がやりたかったなぁ」と思ったりして(笑)。厚かましくて縦横無尽な感じがいいですよね。善児は真逆で、グッと感情をこらえながら演じる役だった。それはそれで味わい深く愛着もあります。

善児は主人を転々として最後に義時にたどりつきましたが、彼のことはどう見ていたのでしょうか。また、演じる小栗旬さんの印象はいかがでしたか。

義時は、今までの主人とは違って、冷静に周りの人間との関係性などを計算し、事をなしていく人物だと感じました。直感で「やれ!」と言うのではなく、じっくり相手を研究したうえで善児に仕事をくれていたんじゃないかなと思います。

小栗くんは本当に義時、僕は善児、時は鎌倉時代、そのシーンシーンの時だけは、それがリアルに感じられていた気がする。

善児の人間らしさが見えるきっかけとなった人物に一幡とトウがいますが、それぞれどのような存在だったと思いますか。

台本を読んで、一幡様やトウに出会って何年くらいたっているのかをかぞえてみたんですね。そうしたら、どうやら一幡様と一緒に暮らしていたのは2週間くらいなんです。最初、善児にとって一幡様はただのあずかり“物”でしかなかった。でも! 一幡様が人懐っこい性格で、わりと善児の生活にすぐに溶け込んできた。たぶんお屋敷で暮らしていたときよりも、楽しかったんじゃないかな。善児善児一幡様と過ごすことで人間らしい生活を経験できたのでは。一幡様は、虫を捕ったり、木の実を食べたり、お屋敷では絶対に経験できないような、子どもとして一番したい生活を善児と一緒にできたのではないかなと思いますね。そして善児の気持ちに変化がおきた。

トウとは出会ってから8年くらいたっていますが、どういう思いで善児が彼女を育ててきたのか、僕自身もいまいちわからないんですよ。その謎はいつかトウが答えてくれるかもしれないので、僕は下手なことは言わないようにしておきます。ただ、彼女との出会いによって善児の中でちょっと歯車が狂ってしまったのは確かですよね。

善児の最期については、どのように感じましたか。また、今回の撮影で善児として生きた時間はどのようなものになりましたか。

正直、名残惜しいです。「もう少し暗躍していきたかったな。このスリルを味わっていたいな」とは思っていますが、結局は善児がまいた種だし、しかたないのかなとも思います。今回の大河ドラマの出演が決まり最初の何話かの台本を読み終えたころ、三谷さんからメールが来ました「代表作にしてください」と。本当に僕にとって善児は代表作になってしまった…三谷さん。

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