特集

INTERVIEW 2022.08.14

比企能員役・佐藤二朗さんインタビュー

~他力本願も比企を守るため~

「鎌倉殿の13人」で描かれた比企能員はどのような人物だと思いましたか。

敵対する北条時政と比べ、懐や器が浅く小さいのだけど、それを全部自分でわかっていて、しっかり自分の弱さを引き受けて、その上で野心をむき出しにした人だったんじゃないかと思います。ある意味、非常に素直な人だったのかなと。この素直さは、勇気が必要というか、自分の弱さを自分で認めるのは、変な言い方だけど、すごく精神がたくましくないとできないと思うんです。僕が比企能員にすっかり愛着が湧いているので、多少ひいきしたい気持ちがあるのかもしれないけど(笑)。でもとにかく、等身大の自分を正直に勇気を持って受け入れた、愛すべき人だったと思うんです。

今回の比企能員って他力本願なんですよ。自分の力で上にいくというよりは、頼家乳母夫めのとになることで血縁関係をつくっていくっていう。そういう賭けが縁にもリスクにもなるけれども、それしかないと思っていたんじゃないですかね。セリフでも「賭けに出るか」とか「比企が生き残る道はそれしかない」と言っていたので、そういう思いだったんだと思います。だから能員みたいな人は、もしかしたら時代が違えばまったく権力闘争に入らないのかもしれないですね。でもそうせざるを得ない時代だった、ということかと。

ドラマの中ではどちらかというと能員よりも妻・道のほうが野心家のように感じました。道はどのような存在でしたか。

大好きなんじゃないですかね。三谷さんからは、「北条時政りくの尻に敷かれているけど、比企家は夫婦対等という感じ」と言っていただいて、能員はむしろに言われたことを結構かして行動しているんですよね。なのですごく“運命共同体”というか、能員のことが大好きなんじゃないかなという印象です。

権力闘争が激化していくにつれてライバルとなってしまった北条時政のことはどう思っていましたか。

認めているとは思います。認めていないと敵対心は湧かないと思いますし、だからこそ嫉妬のような気持ちももしかしたらあったかもしれないですよね。そしてその時政を坂東彌十郎さんが演じているというのが大きくてですね、非常に憎めない、能員にはない懐の深さが坂東さんが演じることで出ていると思うんです。ドラマでは敵対心を持つ相手ですが、僕としては坂東さんの演じる時政が「鎌倉殿の13人」の中でとても好きなキャラクターです。特に第24回の修善寺に幽閉された蒲殿(範頼)に会いに行くシーンが、時政の奥行きのある人柄が出ていて好きでしたね。まぁ、蒲殿を引きずり下ろすきっかけをつくったのも能員なんだけど…。申し訳なくて蒲殿に謝りましたよ。迫ちん(迫田孝也さん)に謝ったってしょうがないんだけどね(笑)。

北条家に嫁ぐことになっためい・比奈は堀田真由さんが演じていますが、印象はいかがですか。

まず、比奈役が堀田真由と聞いて天にも昇る気持ちでした。大好きなんですよ。それを知っていてキャスティングしてくれたのかとプロデューサーに聞いたら、「全然関係ないです」と言われましたけれども(笑)、非常にうれしかったですね。ただ、「私の一族はみんな鼻筋が通って目が大きいのです」というセリフがあって、三谷さんはギャグで書いたのではないかと佐藤家では波紋を呼んでおりました。妻は「完全にギャグだと思うよ」って。堀田真由と僕は全然似てませんから、僕の遺伝子はまったく寝ていたのではないかと思っております。でも本当に可愛かわいいので、小栗義時にどうにか嫁がせないように脚本を変えてもらえないものかと思ったんですけどね、もちろん冗談ですが(笑)。

比企家は頼家とも縁戚関係を結んでいますが、彼の政権に関してはどう思っていたと思いますか。

「しばらくは好きにさせておこう。この比企をないがしろにして鎌倉ではやっていけないことを身をもって知ってもらう」というようなセリフがありましたが、それから考えると、もともと自分とは血はつながってないし、乳母夫になって喜んだのも比企に力がつくからなので、何をしても支えていこうという忠義や我が子のような愛着はなかったように感じています。とにかく考えていたのは、「どうしたら比企が有利になるのか」ということ。頼朝の時代から、建前では「鎌倉殿がおられたから我らはここまでやってこられた」と言いますけれど、本音では「鎌倉殿はいてもいなくてもいい。なんならいないほうがありがたいよね」というようなことをに言ったりするんですよ。そういう意味で能員は打算的というか、腹の中では何を考えているかわからないような人であったかなという感じがしますね。

改めて三谷さんが描く「鎌倉殿の13人」のおもしろさはどのようなところに感じましたか。

コミカルなところもサスペンスフルなところもてんこ盛りだし、演じる俳優陣も一流なので、それはおもしろいものになるだろうと当初から思っていました。時代としては非常に殺伐としているというか、いつ誰が裏切られるかわからないような感じじゃないですか。でもだからこそ浮かび上がってくる人間の本性とか野望、逆に優しさみたいなものが三谷幸喜節でおもしろく描かれていると思いましたし、これからもすばらしい俳優陣と演出によってすてきなドラマがつくられていくんだろうなと思っています。

特集

新着の特集をご紹介します