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INTERVIEW 2022.07.03

政子役・小池栄子さんインタビュー

~ありがとう佐殿 幸せだったよ~

これまでの撮影で、最初に抱いていた印象から政子像に変化はありましたか。

頼朝亡きあとがある意味、政子の見せどころなのかなと思って、ちょっと緊張しています。でも、三谷さんの描く政子は、一貫して自分に正直なんですよね。たぶんこれから、家族含め支えるべきものが大きくなるのかなという感じはしつつ、なんせまだそこに突入できていないので、どういう変化をつけられるのか自分でも未知数ですが、きっと伝説の「承久の乱の演説」は描かれるでしょうから、そこに説得力をもたせられるような厚みのある政子をつくっていかないといけないなと。でもちょっと逃げたくなる気持ちもありますね(笑)。

衣装も初期のころに比べて華やかになりましたね。

テンションがあがりますね。「のしあがったな。頑張ったな」って感じもしますし、とてもみやびでカラフルなので、我ながらウットリしながら着させていただいています。これからは尼将軍の衣装に変わると思いますが、「脱ぎたくないなぁ」と思ってます(笑)。

ひとつ現場で笑ったのが、第何回くらいかな、義経と私と義時の3人で話すシーンの本番前に所作の先生が私のところにパッとやって来て、「栄子さんってきれいじゃないけど、独特の顔ね」って言って去っていったんですよ。それを小栗(旬)さんが「本番前になんてこと言うんですか!?」って笑ってて、私も、「ちょっと先生本番前にね、きれいじゃないって言われてテンションあがる人いないですから、やめてください」って(笑)。菅田(将暉)さんは優しいから「そんなことないです! 政子さん美しいですよ!」なんてフォローしてくれて(笑)。でもそんな先生が、第20回を過ぎたあたりにまたパっと来て、「きれいね」って言ってくださったんですよ。ようやく政子としてスタートラインに立てたのかなと思いました。なかなか身内の人が認めてくださるまでには時間がかかるので、その先生の言葉はうれしかったです。
衣装もそうですけど、メイクも華やかになってくるし、役者っておもしろいもので、たぶん演じていく中で無意識に顔つきとか変わっていくことがあるんですよね。例えば義時を見ていると、「背負っているものが変わってきたんだな」って少し感動することもあるので、自分もそうなっていけたらなと思います。

政子は、はたから見れば残酷にも見える夫・頼朝の行いをどう感じていたと思いますか。

思うことがたくさんあるのが当然ですけど、政子の性格を考えると、「愛した男の決断にはついていく」と決めていたのかなと思って演じていました。止めても無駄だってわかってるし、そういう人にれたのは自分だし、「頼朝様の夢をかなえるためだったら多少の犠牲は目をつぶらないといけない」っていう部分はあったのではないかと。
今年のお正月に放送していた「鎌倉殿サミット2022」を見ていたら、時代考証の先生が「政子は相撲部屋の女将おかみさんみたい」とおっしゃっていて、すごくわかりやすい例えだと思いました。グッと耐えながらも、家を守っていかないといけないし、周りでサポートしてくれる人たちも守っていかないといけない、という部分でとてもしっくりきたんですよね。

頼朝政治のもとで子どもたちにはどう接していこうと考えていましたか。

子どもすらもある意味“政治の道具”として利用することを、割り切ってやっていたのか、それとも母としての思いが強いのか、実は、さんざん現場で話し合ってきたことなんです。それで、「いや、もうそこは私も頼朝側っぽい目線で、ときに非情に見られるかもしれないけど、それでいいのではないか」と思ってリハーサルをしていた時期もあったのですが、途中で違うなと思って。そこは現代のお母さんと一緒で、「なんであなたは私のように子どもを心配してくれないんだ」っていういらだちを頼朝にぶつけるし、「自分だけは最終的に子どもを守らないといけないんだ」っていう気持ちでやっていいんじゃないかと。三谷さんとそれに近いようなお話をメールでしたときも同じような意見が返ってきました。そのように演じることによって、「母としての感情は、時代は違えど同じなんだな」っていうふうに見ていただけると思ったんですよね。

その頼朝という偉大な存在の死は、どのように受け止めていますか。

“死”というものに対する向き合い方が今と違うので、難しいですね。頼朝が亡くなるまでの間に数々の悲惨な“死”というものを体験してきているから、「気丈に振る舞っている」のか、それとも「なりふり構わず感情を出していい」のか、みんなで考えていたんですけど、結局は「気持ちのままでいいんじゃないか」って。これまで本当に素直に佐殿すけどのを愛し家族を愛してきた一人の女としての頼朝との別れのシーンでいいんじゃないかっていうことですね。
当初から私と大泉(洋)さんが一緒の画面に映ると「笑ってしまう」なんて意見が外からあったので、それを大泉さんが気にして、「アングルによって俺たちおもしろくなっちゃうから気をつけてくれ。ここは絶対に視聴者を笑わせたくないから」なんて、すごいいろいろ注文したりしていたんです(笑)。そういうやりとりも楽しかっただけに、さみしいです。「ありがとう鎌倉の佐殿。幸せだったよ」という気持ちで別れさせていただきました。

どうやら退場したら台本はもらえず、みなさんオンエアで初めて見る状態らしいんですよ。それを知って「俺も死んだらもらえないんだって。死ねねぇよ!」って言う大泉さんに、みんな冗談で「退場したら無理だよ。関係者じゃないんだから」なんて言って笑ってたんですが、途中で退場していったみなさまの思いを無駄にしないようにがんばらないといけないなっていう気持ちになりますね。

政子としては、息子・頼家が政権を継ぐことをどう思っていたのでしょうか。

頼家役は金子大地さんなのですが、すごくぴったりなんですよ。お坊ちゃまのワガママな横暴さもよく出ていて、でも無邪気さもあって、「この子が長男だったら可愛かわいくてしょうがないな」って思うのと同時に、「この子を愛しすぎるとダメな母親になって一緒に落ちていくな」って思うくらい魅力的な頼家を演じてくれています。なんせ長男なんでね、愛情は強いし、頼家を見て頼朝様を感じる部分はあるし、でもどこかで「この子1人の能力では鎌倉殿は務まらない」ってことを早めに悟っているような気もするんですよね。だからこそ、どういうタイミングで政子頼家という可能性を律していくのかはなかなか難しくて厳しい決断になるんじゃないかなと思います。

小池さんの中で、「鎌倉殿の13人」の撮影はどのような時間になっていますか。

以前「義経」(2005年)に出演したときのことは、緊張しすぎて思い出せないことが多いんですよね。若かったですし、「大河だから失敗しちゃいけない」という恐怖心に押しつぶされそうになってしまったりもして…。でも、できあがった放送を見ると確かにすごいスケールですが、現場はとても素朴でほかと変わらないんですよ。今回は最初から出演させていただいているということもありますが、「大河だから特別」って気持ちが逆になくて、自分の中では「いいな」と思っています。
だから若いキャストの方が現場に途中から参加してくると、昔の自分を見ているような気持ちになって、「絶対に不安だろうな」って感じて、積極的に話しかけるようにしています。できれば途中から参加していなくなる方でも「すごく楽しかった」と思って帰っていただきたいなって。それが当初からいるメンバーとしての責任かなと感じていますね。

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