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INTERVIEW 2022.07.03

源頼朝役・大泉洋さんインタビュー

~源氏の嫡流ゆえの孤独~

改めて、三谷幸喜さんはどのような脚本家だと思われますか。

三谷さんは喜劇の脚本家だと思われているだろうし、実際そうなわけですけど、僕としては実はものすごく怖い話を書かれる人だと思うんですよね。思わず笑ってしまうおもしろいシーンもあるけど、突然ナイフで斬りつけられるかのように怖いシーンがきたりするように感じるんです。そんな三谷さんの描く怖い部分というのは今回の「鎌倉殿の13人」でよく出ていたんじゃないかなと。前回出演させていただいた「真田丸」(2016年)よりは確実に怖かったですね。戦国時代よりさらに前の時代の話だからかもしれないけど、中盤からは特に「怖い脚本だな」と思って見ていました。

「鎌倉殿の13人」で描かれた源頼朝はどのような人物だと思いましたか。

演じていて思ったのは、いつまでたってもどこか孤独だったのかなって。自分の土地を持たずに伊豆に流されて、最初は義時の兄・宗時に担がれていたようなところもあって。頼朝は坂東武者を利用したけれども、坂東武者たちも戦うためには旗頭が必要なわけで、頼朝を利用する。つまり頼朝には本当に気を許せる人ってそんなにいなかったのかなと思うんです。何をするにも坂東武者の顔色をうかがわないといけないし、兄弟たちもいたけど、彼らも油断できないというか…。頼朝の存在価値というのはやっぱり血の尊さだから、その血はほかの兄弟たちも受け継いでいるわけですよね。

ということは、「頼朝はダメだ。義経神輿みこしに担ごう」となられてしまっては終わりなので、兄弟といえど油断は大敵。「鎌倉殿の13人」の中では、政子義時盛長などには心を許していたような気がするけど、実際の頼朝さんはどうだったんでしょうね。なんとなく、ずっと孤独がつきまとっていた人なんじゃないかなって感じています。

以前から「好感度が下がる」と心配されていた頼朝役ですが、長く演じてきた大泉さんとしては、彼の下してきた判断をどう感じていますか。

今という時代から見ると頼朝さんがやってきたことはひどいことだらけだと思うけど、やはり僕はね、自分の役ですから、あの時代を生きるためにはそうせざるを得ない行動だったんだろうなという思いはあります。頼朝さんがいたからこそ、そのあと何百年と続く武家の時代の基盤が築かれたのだとも思うからね。ただ、僕ら現代人からしたら彼の決断はひどいし、また三谷さんの描き方もね(笑)、頼朝が倒していく相手をとてもすてきな人物に描くからより悪く見えちゃうんですよ。でも頼朝は自分の直属の兵は持っていないから、坂東武者に戦ってもらうしかない。そして、先ほども言ったように油断してほかの兄弟たちのことを坂東武者に担がれてしまっては困る。生き残ることに必死だったんだと思います。上総介を殺してしまったり、範頼義経などを次々に粛清したことはひどいけれども、一歩間違えれば自分が殺されるかもしれない時代の中で生きていかなきゃいけなかった頼朝さんの日々は、現代の我々には想像できない怖さとシビアな命の駆け引きの連続だったんだろうと思いますね。
ただ一点、政治家として厳しい決断をすることで好感度を下げるのは別にいい。だけど、第21回で幸せそうな八重にむかって昔の話を散々するシーンは謎でしたね(笑)。本編40分弱しかないのに、「ここにこんな尺使います?」っていう(笑)。「頼朝の器の小ささを見せるために尺を使うならもっとほかの人を描いてあげてほしい」と僕は思いましたよ。三谷さんに聞いちゃったもん。「頼朝はどうしてこんなこと言うんですか?」って。そうしたら「単純に幸せそうな八重を見てイラッとしたんじゃない?」と。本当にすてきな役をいただけて三谷さんには感謝しかありませんが、あれだけは理解できなかったです(笑)。

頼朝にとって、後継者となる頼家はどのような存在だったのでしょうか。演じる金子大地さんの印象も教えてください。

大地くんは同じ北海道出身だし、年齢の離れ方も親子に近いから、とにかく可愛かわいくてしょうがないね。本当の息子みたいに見えちゃうわけ。しかも頼家はどこか頼りないから余計に可愛いというか、僕がいなくなってからすごく受難が多いんで、すでに生き返って助けてやりたくなってます。撮影の順番的に、僕が生きているシーンと死んだあとのシーンを織り交ぜながら撮っていたわけですよ。だから、僕がいないあとの世の中で頼家が苦労していたりすると、「おい、大丈夫か!? あいつらに何か言われているならパパに言いなさい!」みたいな気持ちになって(笑)。「頼家をなんとか助けてあげたい」って思いますね。どうやら本編で死んだらその先の台本をもらえないみたいなので、僕も先のストーリーはわからないんですけど、うわさによると頼家が暴れているらしく…。小栗旬くんから「いや、やっぱり死ぬの早すぎた!」みたいに言われるんですよね。どんなことになっちゃってるんだろう(笑)。でもやっぱり親としては、生き返って「頼家、そんなことをしたらダメだ」ってとがめるよりは、「みんな頼家の言うことを聞きなさい」って言いたくなる。ダメなパパなんです(笑)。

北条にかくまわれてから最期まで、必死に支えてついてきてくれた北条義時のことはどう思っていますか。

セリフでも「鎌倉殿はいつも私にだけ大事なことをおっしゃいます」って義時が言っていたけど、頼朝さんは義時という人を本当に信頼していて、もちろん自分の後継者は子どもたちだけど、それをしっかり支えてくれるのは義時だと思ってたんじゃないですかね。

およそ1年間、源頼朝として生きた撮影現場はいかがでしたか。

撮影が始まってからずっと楽しくて、いい現場でしたね。頼朝さんの死が近づいていくにつれて登場するシーンは減っていくし、僕が他局の連ドラに入ったりしたものですから、大河の現場にくるスパンが、2週間とか空くんです。そうするとね、なんだか周りから「ずっとしゃべってるね」って言われたりするような、とにかく話しだしたら止まらない現場でした。久々に行っても小池栄子さんとかがまるで僕がいないかのように目の前で悪口を言ってるから、それにツッコんだり言い合ったりしながらゲラゲラ笑って。楽しかったですね。
クランクアップは第25回にあった親戚一同が集まるシーンで、たくさんの人に囲まれて終わることができてすごくありがたかったんですが、おもしろかったのは、ワンシーンごとにいつも映像のチェックをするんですね。だから最後も「チェックしてください」と言われたんだけど、その時の最後のシーン、餅の寄りの映像で(笑)。「なんで僕は餅の寄りをチェックしなきゃいけないの?」って聞いたんだけど、「大丈夫ですから、ぜひ見てください、お願いします!」と言われ、モニターの餅を見てたわけ。そうしたら画面に「鎌倉殿の13人」って出て、そのあとに僕の今までの動画が一気に流れて、泣くつもりはなかったのに、感動で泣いてしまいました。周りにいた(坂東)彌十郎さんとか(小栗)旬くんとかも泣いてくれてて、ありがたいなぁと思いました。

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