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INTERVIEW 2022.05.22

藤原秀衡役・田中泯さんインタビュー

~大切なのは、内部に秘められたエネルギー~

時代劇のおもしろさはどのようなところに感じますか。

僕にとってはですけれども、時代劇に関心を持てる最大の理由は、「昔の時代のこと」だと思って見ても「現代とたいして変わらないな」と感じるからなんですよね。例えば「水戸黄門」が長く私たちに愛され続けているのは、やっぱり現代にも悪代官がいるからじゃないですか。どこかそういう身近な感覚があるからだろうと思うんです。
要するに、時代を過去のものとして止めてはダメなんですよね。止まったら伝統じゃなくなってしまうわけですから。もちろんそのまま保存することに意味がないとはまったく思いませんけれども、“時代”というものの見方や中身、そして現代人が見る意味みたいなものを担うことを、時代劇はもっと意識したほうがいいような気もするんですよね。時代劇だからこそはっきり言ったり、表現したりできることもいっぱいあるのではないかと思うので。

「鎌倉殿の13人」で描かれる平安末期から鎌倉時代についての印象を教えてください。

貴族社会から武家の社会に変わって、武力で地位を獲得しようとしていた時代ですよね。正直に言いますと、人と人が簡単に殺し合うような、いくさ続きの時代は好きではありません。数々の才ある策略の中に、苦しい思いをしていた人もたくさんいたでしょうし…。とはいえ、さきほども言ったように、何百年たった今の世もそんなに変わらないんじゃないかと思うこともあるんですけどね。
歴史というものはヒーローの物語が目立ちがちですが、それは当時生きた人間の1%ほどで、大半の人間たちは歴史に残っていないわけですよね。そういう残らなかった人間たちの歴史とどう向き合っていけばいいのだろうかということも、この作品や時代と向き合いながら考えました。逆に言えば、「鎌倉殿の13人」での源頼朝は、見た目は威厳があっても、ちょっと後ろから見たら滑稽だったり、悲惨だったり、ずるかったりして、おもしろく描かれています。そういう人間としての見え方を、もっとバラしちゃっていいんじゃないかなとかね(笑)。

藤原秀衡は奥州で“覇者”といわれるくらい大きな存在の人物ですが、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

今回の秀衡は“静のエネルギー”を持っている人だと感じましたが、奥州平泉で独自の勢力を保っていた藤原氏という存在は、歴史上ではそれは大変な出来事だったと思います。今回のドラマの中でも“北の王”と言われたりしていますし、奥州で長いこと続くえにしを大切にしながら立ち上がってきた人物ですから、やっぱり頼朝にとっても、都の中央政府にとっても、気になってしかたがない存在だっただろうとは思います。僕としてもオファーをいただく前から、とてもとても興味のある人物でした。

藤原秀衡の中にある“静のエネルギー”というものを、どう伝えたいと思っていましたか。

僕が言うエネルギーというのは、今となってしまえば、死んだ秀衡の中にどれだけの言葉が流れていて、何を思っていたとか、そういうことを全部ひとまとめにして届けるという意味だったりするわけですよ。それを見て、「なるほど。こういう人だったのか」とわかったときに、その人の魅力が増したり、逆にガッカリしたり、いろいろあるのではないかと。だからこそ、見えない内部に秘められたエネルギーというのはとても大切なものだと思っています。

藤原氏の一族については、どのような印象をお持ちでしょうか。

東北の奥州藤原氏の歴史は大河ドラマになってしまうくらいすごく、今考えると常識はずれですよね。初代・清衡のころから自分の夢を息子の夢にしてしまうようなことをしていて、さらに商売までやっていた金持ちの一族だったわけじゃないですか。いろいろな秘密がいっぱいあったと思いますけど、ちょっと想像がつかないですよね。だから頼朝は気持ち悪くてしょうがなかったんじゃないですかね。なんか嫌だったんだと思います。

今回描かれる源義経はどのような人物だと感じられましたか。

今回の義経は、台本を読む限りではかなり奔放な人という印象です。時代劇って、その時代に書物として成立していたものが現代まで残ったうえで成り立っているわけですよね。だからそういった意味では、言葉をもとに現実の映像を作っているわけです。ですから、義経像を含め、昔と今の言葉から生まれるものの間に、恐らくいろんな解釈のギャップは生まれているんじゃないかと思います。

今年で映像デビューされて20年になると思いますが、映像作品についての向き合い方に変化のようなものは感じていらっしゃいますか。

僕はセリフを話す人になりたいと思って生きてきたわけではないので、自分がやれることはたぶん、“体と言葉の間にギャップを作らない俳優”なんですよ。世の中には、体を置き去りにして口から言葉を発している人間が結構いると思いますが、自分は、体と言葉が合っている役ならできそうだなと思って精いっぱいやらせてもらってきたように感じますね。

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