INTERVIEW 2022.04.10
平宗盛役・小泉孝太郎さんインタビュー

台本をお読みになった感想と、「鎌倉殿の13人」における平宗盛の印象を教えてください。
三谷さんの作品に初めて参加させていただくということで、宗盛がどんな方かはあまり決めつけずに演じようとは思っています。最初は、なよなよした方なのか、父がカリスマ的な清盛なのでもっとしっかりとした方なのか、どっちだろうと思ったのですが、極端に清盛と対照的な宗盛ではなく、時代のめぐり合わせで悲運な方向に流されていくような方なのかなって今は考えています。宗盛のキャラクターが一番出せるのは、壇ノ浦の直前から最期にかけてだと思っているので、それまでは絶大なる父・清盛を立てながら、バランス感覚を持った従順な跡取りというのを大事にしたいですね。

台本に関しては、「これが三谷ワールドか!」とびっくりしました。ものすごく人間っぽく、現代に近いんですよ。読みやすすぎて驚いたという感じです。時代によっては難しい言葉が多くて辞書をひかないとわからないこともあると思っていたのですが、北条や源氏側には今のところ一切なくて(笑)。平家側の雰囲気はまた違いますが、スラスラスラっと読めてしまって、「1100年代の話だけど、現代劇のようにスッと入ってくるこの感覚はなんだろう…」と不思議に思っています。映像として完成したらどうなるのかすごく楽しみです。
ライバルとして源頼朝という人物がいてお互いに一族を背負って戦う関係性ですが、源氏や頼朝に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
頼朝が三男坊というところがおもしろいなと思っていて。頼朝は若いときに伊豆に流されて苦労したと思いますし、生まれ持っての性質もあるとは思いますが、三男坊らしい気質というのも感じます。長男、次男にはない負けん気の強さとかたくましさとか。宗盛も三男坊なので似ているところもあるのかなとは思いますが、平家と源氏では環境が違うんでしょうね。平清盛には絶対的カリスマ性みたいなものを感じますけど、息子世代になると少し慢心していたのか、武士っぽくないイメージも多いじゃないですか。柔軟性が足りない…って言ったら良くないかな(笑)。でもそういうところが家によって対照的だから余計におもしろいのかなと思います。
宗盛にとって父・清盛はどんな存在だったのでしょうか。また、跡取りとしての運命を宗盛はどのようなメンタルで受け入れていたと思いますか。
やっぱり父親の存在っていうのは、とても大きかったでしょうね。きっと僕らが思っている以上に、良くも悪くも呪縛みたいなものはあったと思います。背負っているものがあまりにも大きいですから。絶対に平家を滅亡させてはいけないし、頼朝の首は取らなきゃいけないし。それって生きるか死ぬかじゃないですか。計り知れないプレッシャーだったり、目には見えないこわいものと戦っていたのではないかと思います。常に自分の命が狙われるのではないかということと、清盛の跡を継ぐプレッシャー。その2つは大事にしながら演じたいです。


後白河法皇を演じる西田敏行さん、丹後局を演じる鈴木京香さんとの共演はいかがですか。

西田敏行さんの後白河法皇はずっと見ていたくなるような、役者として男として嫉妬するほどの魅力を体にまとっている方だと思いました。リハーサルから「こういうふうに表現されるんだ!」とか、勉強させていただくことばかりです。
鈴木京香さんはめちゃくちゃきれいでしたね。「なんて美しいんだろう」って思って。ご本人もとてもチャーミングですてきなんです。飾らない感じといいますか。西田敏行さんと鈴木京香さんのシーンは見ていて「このままこのシーンがずっと続けばいいのに」と思うくらい、おふたりとも役者として、とてつもなく魅力的に感じます。
北条義時は、リーダーになりたいと思っていなかったのに、運命のいたずらでリーダーになっていきます。宗盛は平清盛や後白河法皇に挟まれながら、リーダーになりたいと思っていたのでしょうか。
「なりたい」とかではなく「ならなければいけない」と思っていたんでしょうね。偉大な父親がいて、“意志を持って”というよりも“宿命を背負う”という感じ。今以上に、“そう生きざるを得ない運命”を宗盛はすごく感じていたと思います。先天的なものは違ったかもしれないけど、後天的な要素で宗盛像というのはできあがったのではないかなと勝手に憶測しています。
