特集

INTERVIEW 2022.04.03

文覚役・市川猿之助さんインタビュー

~物語のスパイスのような存在に~

三谷幸喜さんが描く文覚という人物をどのように演じようと思っていますか。

今回の文覚は怪僧なんですよね。京都の神護寺にある肖像画ではとても尊いお顔をされたお坊様ですけど、この作品の中では史実をそのままやるのではなくて、台本に書かれたままの文覚をやろうと思っています。だいたい三谷さんの僕に対する印象が“うさんくさい”ってことなんだと思うんですよ。三谷さんはふだんを大事にされる方なので、変につくらずに出していこうと思っています。ちょっとダークな面もあり、人間らしいところもあり、いい加減なところもあり、みたいな。僕は、情熱は持ってやるんだけどすぐ飽きちゃったりする人間だから、三谷さんが当てて書いてくれているとしたら、そういういい加減さが出ていると思います。

うさんくさい雰囲気を出すために意識していることはありますか。

撮影の当日に台本を読んでそれっぽい表情をしていたらいいかなって。うさんくさい人ってそうじゃないですか。あまり考えて行動をしないというか、その場でパッパッと行動してしまう。だから気持ちを考えずに、とにかく矛盾してもいいからその場で取り繕うという感じでやっています。
あとは監督に「どういう感じですか?」と伺って、監督の描いたスケッチの中でやるようにしていますね。一番いいのは三谷さんと話すことですけど、そう簡単にはいかないから…。でも実は以前、文覚の登場シーンを見た三谷さんから「世の中に完璧って言葉があるんだ」ってメールでお褒めいただいたんですよ。なのでとりあえず、僕の芝居を見た三谷さんに喜んでもらえるようにと思って演じています。

文覚は、ボロボロの服装で登場したと思ったら次現れたときは急に羽振りがよくなっていたり、神出鬼没な人物だと思いますが、一年間通して出演する場合と少しずつ出演する場合では、やはり取り組み方は変わりますか。

「風林火山」(2007年)で武田信玄を演じたときは一年を通した演技の計算をしないといけなかったけれど、ちょこっとだけ出るときはインパクトもあるので、計算方法は全然違いますよね。出番の間があいているとつながりを気にしていても伝わらないかもしれないから、計算するっていうより、衣装とか決めていただいた見た目を糸口に芝居を考えたりします。文覚の場合は、神護寺という、弘法大師・空海の流れをくみ、お坊さんになるための戎を授けたりするくらいのものすごく大きな寺院を任されるようになる人ですので、相当トップじゃないと着ることのできない緋の衣ひのころもも身につけますし、そういう意味でも物語のスパイスのようにピリッと何かが効いた感じではいたいですね。うさんくささも含め、たとえ服装が豪華になってもどこか汚い部分が匂えばいいかなと。

源頼朝はどのような印象でしょうか。文覚は源氏再興の思いを持って頼朝に近づきますが、彼に何か魅力のようなものを感じていたと思いますか。

歌舞伎役者が想像する頼朝は、絵に残っているような、あんまり親近感のない感じの人物だと思うんですけど、今回はそれとはまったく違って、大泉洋さんならではの人間味あふれた頼朝なのですごく新鮮ですし、僕は好きですね。
源氏再興に関しては、どうなんでしょうね。きのうの敵がきょうの味方になるような、裏切ったり裏切られたりするのが源平の世なので、それぞれいろんな思惑があると思うんですよ。だから文覚からしたら別に誰でも良かったんじゃないかなって感じもしますけどね。

三谷さんの作品にはこれまでも出演されていますが、改めてどのようなところにおもしろさを感じますか。

やっぱり演じる人を知り尽くして書いているおもしろさですよね。だからみなさんあまりつくりこみ過ぎないというか、素のままな部分も出ているような感じが魅力だなと。僕に関しては自分に笑いの要素があるなんて全然思ってなかったけど、なぜかいつも笑い担当になっちゃうんで、三谷さんに発見してもらった側面がいろいろあるなと思います。
あと三谷さんがよく、「古い器に新しい酒を入れるのか、新しい器に古い酒を入れるのか」ということをおっしゃっていたりして、常に「視聴者や観客を驚かしてやる」と思っている人だから、今回はどういう感じになるのか気になっています。鎌倉時代なんだけど人間的には僕らと同じ位置にいるという感じで描かれていると思うし、「鎌倉殿の13人」というタイトルだから、“世の中は人々による歯車で動いている”ということを描くのだと思っています。そういうところも三谷さんの手法のひとつですよね。

特集

新着の特集をご紹介します