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INTERVIEW 2022.03.27

比企尼役・草笛光子さんインタビュー

~三谷さんの作品は、いつも心を刺激されます~

比企尼役のオファーがあってから、脚本を担当する三谷幸喜さんとお話しされたことはありますか。

三谷さんはお忙しいのであまり邪魔はしないようにしていますけれど、「台本いただきました。よろしくお願いします」とはご連絡しました。今回は大泉洋さんの乳母役ですから、二人そろうと「真田丸」(2016年)になってしまうんじゃないかと心配になって(笑)。そうしたら、三谷さんから「今度は大泉くんをひっぱたきます」とお返事をいただいて、「大変だ、どうしよう」と思いました。私の手は痛いらしいし、とてもいい音が出るんですよ。だから彼をたたくなんて悪いし、かわいそうだなって思っていたんです。

でも、台本を読んだら「真田丸」のときにも定番だった“顔をペタペタたたく”ということになっていてほっとしました。大泉さんが何かを言うと私が「はぁ?」って聞き返すやりとりもまたあって。私のお友達から、「今回もおばば様のあれを、そっとやってほしい」って言われていたんですよ(笑)。そうしたら、しっかり最初から台本に入っていたので、お客さんの期待にちゃんと応えてくださる三谷さんにびっくりしました。

「鎌倉殿の13人」における比企尼はどんな人物だと思われますか。

比企尼は、「真田丸」で演じたおばば様のように明るい人ではなくて、波風を立てるようなことはしない静かな人だと思います。でもその一方で、自分の娘をみんな大事なところに嫁に行かせて比企家のために足元を固めていたりもするので、しっかりと芯のある人でもある。器の大きい方だと思っています。

佐藤二朗さんが演じる比企能員はどんな息子ですか。

二朗さんとはこれまでご一緒したことがなくて、「この方が義理の息子ね」くらいだったのですが、一緒にお芝居をしてみたらとても助けてくださるのでありがたいです。「この次は?」とか「いま大丈夫だった?」と聞くとちゃんと答えてくださる。いい息子です。お嫁さん()の堀内敬子さんも助けてくださるし、あの二人がいないと私はダメ(笑)。二朗さんはおもしろいキャラクターをつくる方だから、私はそれに引きずられるような引きずられないような絶妙な感じで演じています。

台本をお読みになって、今回描かれる源頼朝はどんな人物だと感じましたか。

私、最初は頼朝と大泉さんって合うのかなと思ったんですよ。大泉さんはおもしろい部分があるから、真面目に出てこられたら笑っちゃうでしょう(笑)。でも台本を読んだら、「三谷さんは、大泉さんの持っている“もうひとつの面”を頼朝としてお出しになっているんだな」とわかりました。
おもしろくて温かいけれど子どもっぽいことも言うし、ちょっと弱くてみんなが手を差し伸べたくなる方。女だったらやっぱり母性本能をくすぐられてしまうかもしれない、なんて言うと彼が「俺は女心をくすぐるのか」と思ってしまうから、これは内緒。でも、そういうところが頼朝の隠れた魅力かなと思います。実は今回スタジオで最初に会ったとき、私笑っちゃいそうになったんですよ。朝、彼が「おはようございます!」って元気にいらしたから、「ちょっと待って。あとであとで。今は顔を見せないで!」って(笑)。そのあと撮影する大事な再会に感動は取っておかなきゃと思ったの。だからセットで顔を見た瞬間、私はどうなるのかなって思いながら挑みました。

大泉洋さんとの再会が頼朝との再会と重なる部分はあったのでしょうか。

そうですね、ダブってしまいましたね。「彼が小さいときはどんな顔だったんだろうな」とか「小さいころによしよししながら育てたな」とか思い浮かべないと、顔をペタペタたたくとかできないから。鼻をつまむとかもわざとやったの。本当はもっといろんなことをしたかったけど、やりすぎるとお笑いのほうにいってしまうでしょ?(笑) だからあんまり余計なことはしないように抑えています。

久しぶりにお会いしたけど、大泉さんは変わらず優しい方でした。「真田丸」のときに北海道の白いチョコレートを持ってきてくださって、「おいしいわ」って言ったら、今回も持ってきてくださって。まさかないだろうと思っていたらちゃんとあってびっくり。「真田丸」から6年くらいたったのに、忘れずに持ってきてくれたのよ。とても優しいの。思いやりと温かさがある人ですね。

三谷作品のおもしろさはどのようなところに感じますか。

例えば「真田丸」のときは、私の最期のシーンよね。みんなが「おばば様…」って青い顔をしてて、もうそろそろかってところで「ちと早すぎた」って立ったんです(笑)。あれは難しかったですね。だから今回はどんな最期にしてくれるのかなって思っているんですけど(笑)、そういうおもしろかったり心に響いたりする芝居の発想がすごいですよね。大変なこともあるけどやっていて楽しいし、いつも心を刺激されるから、ついていきたいと思います。だからきっと役者はみんな三谷さんを好きなのよね。そして三谷さんも役者をすごく尊敬していらっしゃるんですよ。役者を大事にしながら、ちょっと大変なところへもっていくこの感じ。難しいけれど絶対におもしろくなるんだっていう信頼感があるのがすてきなところだと思います。

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