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INTERVIEW 2022.01.30

実衣役・宮澤エマさんインタビュー

~たくましく、明るく、探究心強く~

実衣役をオファーされたときの感想をお聞かせください。

そこまで映像作品に出演した経験がない中で、NHKでは連続テレビ小説「おちょやん」(2020年)に出演させていただいて、そこからいきなり大河ドラマっていうのは正直衝撃でしかなくて、とても光栄なことであると同時にびっくりしました。日本全国、そして世界に配信されていくということを考えると、ものすごいチャンスをいただいたなという、期待とプレッシャーの合間で(笑)。すごくうれしいなと思いながらも、責任重大だなと思ってお受けした印象があります。

ちょうど撮影の初めのころに三谷さん演出のミュージカルに出演していて、そのときに実衣というキャラクターについての説明をしてくださいました。「どんな人生を送ったのちに阿波局となっていくのかは史実としてわかっていないことのほうが多いけれど、激動の鎌倉時代を生き抜いた一人でもあるから、たくましく明るく生きてほしい」というようなことを言っていただいたので、彼女のことをたくさんリサーチしました。この時代、男性も女性も過酷な運命を背負う人が多いので、その中で明るく生き抜くってどういうことだろうと思ったのを覚えています。

今のところ、実衣はどのような人物だと思って演じていらっしゃいますか。

北条家は、源頼朝との縁がなければとても和気あいあいとのんびり暮らしていた家族なのではないかと思うんです。もちろん坂東武者どうしのいざこざとか政治の問題はあったにせよ、なんとなくうまくやっている家族だったのかなと。あまり年齢のことには触れられていないんですけど、最初の何回かって実衣はたぶん史実でいくと9歳とかなんですよね(笑)。なのでひと言だけ言うとか、あまりフルな文章でしゃべっていることが少なくて。三谷さんに「なんでなんですか?」って聞いたら、「子役がやる可能性があったから」とか言って笑っていました(笑)。まぁそれは冗談だと思うんですけど、実衣の一生は“子どもらしさ”というところから始まって、お兄ちゃんお姉ちゃんに構ってもらえないからこそ、ちょっと皮肉っぽいことを一人で言っている下の子という感じ。そういう子ども時代がベースとなっているキャラクターで、誰も話してくれないから自分で一生懸命探りにいって、首を突っ込まなくてもいいところに突っ込んでいったりとか、いろいろなことに対する興味がたくさんある女の子なんだろうなって感じはしています。ですので、少ない言葉数ながら、「謎めいているんだけど、芯はあるんだろうな」って見ている方に思っていただけるように演じています。

三谷さんは当て書きをされることが多いですが、「当て書きされているな」と思うことはありますか。

いつも変な役をいただくなぁとは思うんですけど(笑)。でも、三谷さんはよく「当て書きはその人にぴったりなものというよりは、この人がこれをやったらおもしろいんじゃないかっていう役をその人に当てて書く」とおっしゃっているので、いただく役というのは、たぶん三谷さんがこれを私にやらせたらおもしろいんじゃないかっていう神の視点から見ての役だと思うんですよね。先ほどもお話ししたんですけど、三谷さんのミュージカルをやっていたので「これ、どういうつもりで書いているんですか?」って、ありがたいことにお聞きできたんですよ。結果的に現場に入ってみると監督の演出がもちろんあるので、意図を受け止めておくという感じではあったんですけど、「最初のほうは表情にあまり出さないでほしい」とか「独自のリズムやテンポ感を持っている人でいてほしい」ということはなんとなくおっしゃっていました。それが子ども時代の実衣にぴったりで、まともに見えてちょっと変な人でもあるみたいな。実衣は探究心があるのに人からいろいろ話を聞かせてもらえないうえに、とても平和だった北条家に源頼朝が来てものすごい政治の渦に巻き込まれていってしまうことに対して「私には無関係なのに…」って思っているんだと思うんです。でも、歴史の中で埋もれていってしまった普通の人の気持ちを代弁している瞬間もあるような気がしていて。実衣は、北条家が頼朝との関わりを持たなかったらあったであろう未来みたいなものを象徴しているのかなって思うことがあります。

姉・政子と源頼朝の結婚について、実衣はどう思っていたのでしょうか。

実衣頼朝さんだけのシーンはほぼないのですが、ある日現れて気づいたらお姉ちゃんと恋仲になってて、結婚したせいで自分の人生が狂わされていくんですよね。どこがいいのか政子に聞くところがあるんですけど、本当に聞いているんだと思うんです。悔し紛れとかでもなく「なんであんな人にひかれてるの?」って思うんですけど、政子に「何かを成し遂げる人だとピンときたから」みたいなことを言われて。たぶん実衣からしてみたら、政子はいい意味で上昇志向が強いし、そういう大義名分を持っている人に憧れが強い人だっていうのも知っているから、「いただきました」みたいな会話が成り立っているんだかわからない不思議な返しになったのかなと(笑)。「お姉ちゃんの好きそうなタイプだなぁ」みたいな。ただ、いずれ戦に巻き込まれるようになって、自分の人生について諦めというか大人になっていくにつれて、頼朝に対する感情も変わっていくのかなと思います。それまでは本来ああいう人に興味がないので、基本的に自分とは関係ない人だと思っている感じです。

大河ドラマへの出演は初めてになりますが、率直な感想はいかがですか。

連続テレビ小説「おちょやん」でもお着物を着て芝居をしたんですけど、そのときに動き方がふだんと全然変わることを実感したんです。だけど、今回は思っていたよりお着物が動きを制限するものって感じがしなくて。今のお着物を着た作法だとあまり美しく見えないことでも、お芝居を通すと成立する動きもあるので、もしかしたらあまり“時代劇”ってことを意識したお芝居は私を含め皆さんされていないのかなって。最低限の「こういうことはしなかったであろう」とかはあるんですけど、鎌倉時代がひとつの時代としておもしろいのは、あまり映像でも描かれていない世界ですし、残っている資料がすごく少ないので、「間違っている」って言える人はあまりいないと思うんですよ。当時の人だって、お着物を着ていようが着ていまいが、たぶん崩している瞬間とか背筋が伸びていない瞬間とか人間だから絶対あったはずで。今回はそういう普通の瞬間をたくさん切り取った作品でもあると思うので、あまりガチガチな時代劇にとらわれず、こういうふうに生きたかもしれない、こういう人たちだったかもしれないってことを大事にしています。

北条家についてはどんな印象ですか。

とてもバランスがいいんですよね。お父さんは大ざっぱで大柄な感じで、愛之助さん演じる三郎兄上(宗時)は言うことはビッグマウスなんだけど思考があんまり伴っていない感じ。そこに唯我独尊の政子がいて、弟の小四郎(義時)を「あっちにいけ、こっちにいけ」ってあしらって、実衣実衣で勝手。その中でみんなの尻拭いをしている小四郎兄上がいるっていう…うまくいってるサイクルだったのに、ものすごい異物の頼朝さんが入ってきてしまうんですよね。それによってそれぞれのそれまでの役割が生かせている瞬間と、だんだん変わっていってしまう瞬間に分かれていって、いろんなことが起きてしまう。特に実衣に関しては変わっていく環境に順応せざるをえなくなって、子どものころの強気な感じが全く消えるわけじゃないんだけど、少しずつ物分かりがよくなっていくようなところもあって。だんだんと北条家のみんなが違う岐路に立ち始めていくんだなという感じはします。

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