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COLUMN 2022.07.17

教えて! 蹴鞠指導・山本隆史さん

~みんなの蹴鞠 前編~

蹴鞠しゅうきくは、後鳥羽上皇がとても上手だったそうですね。

そうです。後鳥羽上皇は蹴鞠を大層お好みになられ、「此道このみち長者ちょうじゃ」と称せられるほどの実力者でした。蹴鞠の基礎も築かれています。

蹴鞠は何人でプレーするものなのでしょうか?

正式には8人で行いますが、場所などの関係で6人で行うこともありますし、人数が少なければ4人で蹴ることもあります。人数が減るほどに動く範囲が増えますので、くたびれますね(笑)。蹴鞠をする人のことは、鞠足まりあしと称します。

場所に決まりはあるのでしょうか?

蹴鞠を行う場所のことは鞠場まりば鞠庭まりにわなどと称しますが、鞠場は建物の南側に作るのが良いとされ、1辺が7けん(およそ12.7m)になります。そして、その内側には四方に木を植えます。これをかかり、あるいは、式木しきぼく(四季木)というのですが、松、桜、柳、かえでの木を植えるんですね。松は冬、桜は春、柳は夏、そして、楓は秋を表します。式木の間の距離は2丈3尺(およそ7m)くらいです。

フィールド(鞠場)の中に、木が植えてあるんですね。

実は、遊ぶための道具なんです。木にあえてかけたり、当てたりするんですよ。枝にちょっと触れるだけでもまりの位置が変わりますから、うまく蹴ることが難しくなって、蹴鞠がよりおもしろくなるんです。

プレーヤー(鞠足)はどこにポジショニングするのでしょうか?

式木を結んだ線上の式木の両サイドにポジションするのが基本です。これは、平安末期の公卿・藤原(難波)頼輔が著した『蹴鞠口伝集しゅうきくくでんしゅう』に記されています。ただ、非常にバランスが悪いので、現在私たちが蹴鞠を行う際には、少し前に出て均等に八角形を描くようにポジションをとっています。

では、どのように蹴鞠は始まるのでしょうか?

まず蹴鞠を始めるのに際し、木の枝に紙縒こよりで鞠を結び付けた枝鞠えだまりを鞠場の中へ運び、解役ときやくと呼ばれる一座の長老によって枝から鞠を解く解鞠ときまりを行います。

始めにセレモニーがあるんですね。

はい。それで、そのあと「のき」と呼ばれる最上位の鞠足(一)から順番にポジションに着き、最後に鞠場へ入った鞠足(八)が中央の鞠を手に取り、対面する鞠足(七)へ蹴って渡します。そして、鞠足(七)から「軒」である鞠足(一)へ蹴り渡し、「軒」から順に鞠の試し蹴りをする小鞠こまりを行います。

プレーの前に試し蹴りができるんですね。

鞠は手作りですから1つ1つ個性がありますし、その日のコンディションを含めて鞠の癖をつかむことは大切です。それで、全員の小鞠が終われば、「軒」が鞠を蹴り上げて蹴鞠が始まります。

鞠の大きさと重さはどのくらいなのでしょうか?

鞠は直径18~20cmくらい、重さは120gくらいです。
【参考】サッカーボール 5号 … 直径(目安):22cm、重さ:410~450g

サッカーボールくらいの大きさですけれど、断然軽いですね。材質はなんですか?

鹿革です。円形に切り、しっかりとなめして柔らかくした2枚の鹿革を、毛のほうを内側にして重ね合わせ、馬の背筋の革でじてあります。それで鞠を球体にするには、まず鹿革の一部に設けた小穴から大麦の穀粒こくりゅうを詰め込んでいきます。

大麦の穀粒を詰め込むのですか?

はい。実は、私が鞠を作り始めたころは大麦の代わりにお米を使用していたのですが、お米の場合、濡れて乾くと割れてしまうので、形が崩れてしまいます。それならばと、おもちゃの丸い弾丸も試してみたのですが、粒の大きさが鞠作りには合いませんでした。大麦の穀粒は、皮がしっかりしていて濡れてもお米のように割れることはなく、ちょうど良い大きさで、しかも何度でも再利用できるので理想的なんです。
それで、内側から張り膨らませて十分に形を整えたのちににかわを塗って形を固定し、白の顔料で化粧をして卵白を塗って光沢を出し、穀類を抜いてから小穴をふさぎます。

なるほど。プレーする鞠の中は、空洞なんですね。

空洞です。そうじゃないと重たくて、とてもじゃないけど蹴れないです。

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