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COLUMN 2022.06.12

教えて! 風俗考証・佐多芳彦さん

~再現! 巻狩り&矢口祝い 後編① 巻狩りの狩場~

文献資料『阿蘇下野狩あそしもののかり史料』を参考とし、映像化された巻狩り矢口祝いについて、風俗考証・佐多芳彦先生に伺いました。

頼朝が初めにいたこの場所は、どのようなものでしょうか?

これは桟敷さじきのすごく豪華なものです。頼朝御家人たちの狩りの様子を見物するわけですが、少し高いところからじゃないと見渡せないだろうと想定し、美術スタッフとも相談して組みました。

なるほど。頼朝は特等席にいたんですね。

巻狩り」は軍事演習を兼ねていましたから、おそらく頼朝御家人たちの差配もしていたと思います。

義時たちがいるこの場所は何でしょうか?

これは待機所です。狩猟の際にはこのような待機所を作り、射止めた獲物などを置いたり、休憩に利用したりなどしていたと想定しています。「巻狩り」の史料がたくさんあればいいのですが、文献史料はあっても、絵付き史料はあまりないんですよ。ですから、当時の文献史料を追いながら、江戸時代の「巻狩り」や「狩り」の風景を参考に再現を試みています。

獲物を追いかけて走っている人たちは勢子せこですか?

そうです、勢子たちです。騎馬武者とこの勢子とが共同で獲物を追い込むんですよ。馬に乗ると視線が上がってより獲物を見つけやすくなりますから、騎馬武者が指揮し、チームプレーで追い込んでいます。騎馬だけでは、細かい動きは難しいですからね。

たいまつを持って追いかける勢子もいるんですね。

獲物が火を見て驚いたり、煙を嫌ったりするので追い込みやすくなりますからね。実は、狩場の風下から火引き縄という火をつけた網のようなものを馬で引き回し、頼朝の前に獲物が集まるように追い込んでいく様子も再現しようと準備を進めていたのですが、撮影場所を視察したらやぶが茂っていて、火事になる危険性があったので断念しました。火のほかには、おそらく鳴り物を持って獲物を追い込んだ人もいたと思います。

鳴り物というのはこれですか?

そうです。例えば、金属で作られた鈴のような道具もあったと思うのですが、もっと激しく音が出る道具も…という話になり、美術スタッフと一緒に知恵を出し合ったんです。獲物となる動物にとって竹がぶつかる音はかなりきつく聞こえるでしょうから、追い立てる道具として使用していた可能性はあると思います。これは推測になりますけどね。

勢子たちは、狩場近くの農民なのでしょうか?

農民も含まれていますけれども、この土地で実際に生計を立てるために狩りをしている猟師や、御家人に従う家人や下人たちも勢子をしていたようです。

何人でチームを組んで追い込んでいたのでしょうか?

史料には、そこまで詳しくは書いていないんですよね。ただ、「巻狩り」は軍事演習という側面もありますから、小隊、中隊、大隊というような戦闘単位で編成されていたのだろうと思います。

狩った獲物は、狩りに参加した御家人が運んでいたのでしょうか?

勢子とも協力して運んでいたと思います。狩りではまず、騎馬武者と勢子が共同で獲物を追い込むのですが、獲物が射手の射線上に入ったら、追い込んでいた人たちは退避します。そのまま追い込んでいたら、流れ矢にあたる可能性がありますからね。それで、獲物を射止めることができたら、退避していた人たちが集まり、獲物を頼朝のほうに運んでいったのではないかということが、史料から何となくわかっています。

獲物は血抜きをして運んでいたのでしょうか?

狩場が汚れてしまうので、運んでからバックヤードで血抜きをしたと思いますよ。

なるほど。ちなみに「巻狩り」は開始するにあたって、開幕宣言のようなものはあったのでしょうか?

おそらくあったと思いますが、残念ながら記録に残っていないのでわかりません(笑)。「かかれー!」という掛け声などで始まったんだろうなとは思いますけどね。

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