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COLUMN 2022.05.15

VFX・DXプロデューサー 結城崇史に聞く

歴史的に有名な壇ノ浦の戦いをどのような映像にしたいと思っていましたか。

今回、菅田将暉さんが演じられている義経は、これまでとはちょっと違いダークな部分がある人物として描かれていて注目を集めています。そんな彼が衝撃的な活躍をするのが壇ノ浦の戦いです。しかも、源平合戦をご存じの皆さんからすると「待ってました!」というべき義経八艘はっそう飛びのシーンもある。源平合戦の一番のクライマックスでもあるし、これは感情移入できる、見応えのある映像をつくらないといけないと思い、プレッシャーも感じていました。

撮影はどのように行われたのでしょうか。

壇ノ浦の合戦シーンは、船の上のカットをスタジオでグリーンバックを使用して撮影しています。安全上のこともあり武者たちが持っている矢はエアーで(実際の矢がなくて矢を射る演技をする)、引いている動作に合わせてすべて後からつけています。義経も、矢に射抜かれた人も、みんな何もない状態で動いています。

船の下の水もCGですか?

すべてCGです。人が動くと船がそれに合わせて揺れますが、それは現場で水のシミュレーションに合わせて実際に揺らしています。

彼らが持っているもの、そして水までCGだとは…驚きました。ちなみに、背景にいる人や船も足しているのでしょうか?

もちろん足しています。奥にいる人も船も、背景はいっぱい足しています。撮影で使った船は3艘。つまり、ほかはCGです。

特に大変だったのは、どんなところでしょうか?

今回はかなり時間をかけてCGを作っているのですが、実は「精霊の守り人」「いだてん~東京オリムピック噺~」などでも協力していただいたウクライナのVFXスタジオと一緒にCG制作を進めていました。しかし、1回目の演出チェック目前にロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が起きてしまい、現地(ウクライナの首都・キーウ)で作業を続けていただくことができなくなりました。一旦連絡が途絶えたのですが数日後に連絡がつき、無事であることを確認できて本当によかったのですが、作業の継続は不可能ということになりまして…。せめて、これまで作業してきたデータだけでもと思ったのですがすでに通信インフラがやられていて、ネットワークの断線などもあってこれまで作業を進めてきた大量のデータを受け取ることも不可能で、作業をゼロからもう一度進めていかなければならなくなりました。
それで、そこから世界中のプロダクションに声をかけ、必死に振り分けを決めてなんとか制作体制を組み直しました。スケジュールが間に合うのかずっと不安で胃がヒリヒリしていましたし、本当に大変で絶体絶命の大ピンチでした。これまでさまざまなトラブルを経験してきましたが、ここまで追い込まれたのは初めてでした。

お願いした会社の方への割り振りはどのようにされたのでしょうか?

カメラで撮影した映像は動きがありますから、ブレしています。そうすると弓矢もその動きに合わせるようにつくらないとズレてしまいます。なので、カメラの動きのトラッキング、対象物の切り出し、矢のCGアニメーションおよびレンダリング(コンピューターによる演算処理)、船のCGや兵士のCG、水のシミュレーション、最終的な仕上げ合成、というように分担を決め、分けていきました。会社ごとに得意な作業、実績のある作業がありますから。そして、それを日本にいる私たちVFXチームが取りまとめていきました。各社にお願いした作業のチェックをしながら、自分たち自身も制作をしていたのでスタッフは本当に大変でした。

今回のCG制作において意識したことは何でしょうか。

制作チームのみんなには「勢いで見せよう」と伝えていました。1カット1カットを丁寧に作っていくことはもちろんとても大切なことなのですが、これまで制作してきた経験で言うと、激しい動きのある“戦のシーン”というのはやはり映像に“勢い”がないとその迫力が見ている方々に伝わっていかない。なので、一連のシーケンスとして、動きの迫力を出すことをいつも念頭に置いて制作を行いました。

今回は本当にVFXチームのみんなにはいろいろな意味で苦労もかけたし助けられました。「結城さん、こんなこと一生に一度あるかないかのこと。頑張りましょう!」と逆に励まされました。そして今回、この窮状をみて国内外で12を超えるVFXスタジオが手を差し伸べてくれて、助けていただきました。普通だったら、こんな火中の栗を拾いに行くようなリスク、まずとってくれない。一旦引き受けたら、スタジオ側も完成させる責任が出てくるわけで…でも今回はウクライナのこともあり、助けの手を差し伸べてくれた。結果100人を超える国内外のCGアーティストが一丸となって完成を目指しました。
そして番組側のポスプロチームにも大いに助けられました。この第18回だけ完成すればそれで終わりなんてことはなく、まだまだ続くこの連続ドラマの制作スケジュールがある中でギリギリの調整をしていただきました。

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