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COLUMN 2022.03.13

教えて! 風俗考証・佐多芳彦さん

~打出って何?~

第10回で政子がりくと牧宗親から指南を受けていた打出うちいでとは何ですか?

打出とは、もともとは貴族の文化で、朝廷などで大きな宴会や派手やかな催しが行われる際に、人が着ているかのように着物を組み合わせて御簾みすの脇に置く装飾です。平安の初めは人が入っていたらしいのですが、院政期くらいから「鎌倉殿の13人」で描く時代になると、もう人は入らずに、服だけを置くようになります。おそらくは鎌倉時代以降はなくなってしまったのではないでしょうか。華やかな行事の際のオーナメント、クリスマスにおけるクリスマスツリーみたいな役割です。あのシーンでは、京都生まれのりくさんが打出の文化を政子たちに教えますが、京と鎌倉では着物も全然違うので、もしかしたらうまくいかないかもしれないと思っていました。でも、実際にやってみたら、“女房装束じゃないけど、小袖こそででもキレイじゃん”と(笑)。

※女房装束…いわゆる十二ひとえ

想像を上回ったのですね。

段取りから何から相談のうえであのシーンをつくったのですが、担当のディレクターさんや美術チームがすごく力を入れて頑張ってくれました。“小袖を貴族の女性たちのようにどれだけかっこよく飾れるか”ということが、われわれにとってもチャレンジになったわけです。やってみたら、とても良かったのでびっくりしました。女性スタッフの存在が大きいですね。女性らしい細かな心配りをしてくれたので、きれいな打出が再現できました。すべて男ばかりでやっていたら、ちょっと悲惨なシーンになったかもしれません。女房装束は使っていないけれども、かなり出来はいいんじゃないかなと思いました。

貴族にとって、打出は大切なことだったのでしょうか?

そうですね。打出は女房装束の重ね色目を御簾の下からのぞかせるのですが、出来が悪いと日記なんかに「センスが悪い」って書かれちゃうんですね。なので彼らは打出をするために、装束司しょうぞくしという貴族、打出に詳しいインテリアコーディネーターみたいな人物を呼んでくるんです。そして、例えば季節感ですとか、催しにふさわしい重ね色目の女房装束をコーディネートしてもらって、あのように見せるわけです。
女房装束は絹の塊みたいなものですから、一領でもものすごく高価です。だから、いいセンスのものを大量に飾れる家があったら、それは経済力の示しでもあります。センスが悪かったり、置き方が悪かったり、着付けが悪かったりすると、とたんにみんなから「ひどかった」って日記に書かれちゃう。だから、貴族たちはかなり一生懸命に打出をつくり上げていたんですよ。和泉市久保惣記念美術館でご所蔵の『駒競行幸絵巻』という鎌倉時代の絵巻物にとても美しい打出の絵があります。気になった方がいらっしゃったらご覧になってみてください。

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