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児童養護施設を支えよう! 専門の就活サイトに注目を

牛田 正史  解説委員

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親がいない、もしくは親と一緒に暮らせない。
そんな子どもたちを受け入れているのが児童養護施設です。
最近は虐待の増加で、その重要性が一層高まっていますが、職員が足りない、あるいは増やしたくても増やせないという施設も相次いでいます。
そんな中、人材を確保するための新たな取り組みが始まりました。
キーワードはWEB。誰でも簡単に施設の仕事を理解できるサイトが出てきています。

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児童養護施設とは、親が亡くなったり、行方が分からなくなったり、あるいは虐待を受けたりして一緒に暮らせない。そんな子どもたちを受け入れる極めて重要な施設です。
子どもたちは施設で生活をして、そこから学校に通ったりもしています。

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全国で600か所ほどあり、多くは社会福祉法人が運営しています。
子どもの数は、約2万5000人にのぼります。
年齢で言いますと、小学生・中学生・高校生が特に多くいます。
ここは単に住まいを提供するだけの施設ではありません。
職員が親に代わって子どもを育て、進学や就職を支援し、その子が自立して施設を出るまで成長を見届ける、そんな場所なんです。
 
この現場で今、人手不足が大きな課題になっています。
実は今、児童養護施設は2つの大きな変化に直面していまして、それが職員の不足感に拍車をかけている面もあるんです。

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その1つ目は「虐待を受けた子どもが増えている」という点です。
児童養護施設は、様々な事情で親と一緒に暮らせない子どもたちが生活していますが、今から20年ほど前には(2003年)、親が行方不明、あるいは離婚したという理由で入所した子も多くいました。
ところが最近は(2018年)、虐待を受けた子が最も多くなっています。
施設に入所する子どもの6割以上が、虐待を受けた経験があるというデータもあります。

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そしてもう1つの変化は、「施設の小規模化」が進んでいるという点です。
かつてのように多くの人数の子供たちを1か所に集めるのではなく、施設を出来るだけ小規模に分散化していくという動きです。
これは6年前に児童福祉法の改正で掲げられた「より家庭に近い環境で、子どもを育てていく」という狙いがあります。

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この2つの変化は、どちらも「職員が今まで以上に必要になる」という点に繋がります。
小規模化で言えば、施設の数が増えるわけで、それだけ職員が必要になりますし、虐待を受けた子どもについては、心や体に大きな傷を負った子も多くいるわけで、職員がより手厚く、時にはマンツーマンで子どもに寄り添っていく必要も出てきます。
つまり時代の変化とともに、体制の強化がいま一層求められるようになっているんです。

では実際、職員の採用は進んでいるのかというと、正直、多くの施設では、頭を悩ませているのが現状です。若い世代が減って、年々採用が難しくなっているという声も聞かれます。

ただ、そんな中でも、施設が行う採用活動をもっと後押ししていこうという取り組みが始まっています。今回は是非、それを皆さんに知ってもらいたいと思います。

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この採用活動の後押し、代表的なものとして、「チャイボラ」というNPO法人が始めた取り組みがあります。
簡単に言うと、SNSなどを駆使して「施設」と「学生」の橋渡しを行うというものです。
このNPOは、児童養護施設で働いた経験のある若い世代が中心となって結成しました。

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NPOが立ち上げたのが「チャボナビ」と呼ばれる情報サイトです。
個別の施設を紹介しているほか、現場の見学会や就職説明会などの情報も掲載しています。
また、オンラインで、現役職員の生の声を聞くイベントも開いています。
職員の1日の仕事を伝えるコーナーもあります。
さらに、児童養護施設以外にも、生後間もない子を預かる「乳児院」、それに発達障害などの子を受け入れる「児童心理治療施設」といった所も紹介しています。
いわば社会的養護専門の就活サイトとも言えます。

都内では9割の施設が情報を掲載していまして、登録者はおよそ1700人に上ります。
このNPOの活動費は、国などの補助金のほか、個人や企業の寄付で賄っています。

サイトを作ったNPOの大山遥代表理事は、
「児童養護施設はこれまでオンライン上での発信が弱い面もあり、ホームページがあったとしても、学生とか求職者が知りたい情報が網羅されているところも、少ないように感じました。
なので、施設の見学会だったり採用試験だったり、ブログの記事とか、いろんな情報を発信できるサイトを作りました」と話しています。

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つまり若い人に届くようWEB上の発信を強化したわけです。
例えば見学会も、これまでは施設に直接、問い合わせないといけない場合も多かったんですが、このサイトは、いつどこで実施されるか一目で分かりますし、申し込みも行えます。

このサイトがきっかけで、今春、施設に就職した20代の男性に話を聞いたところ、最初は仕事が大変そうだし、この道に進むかどうか決心がつかなかったそうです。でも、説明会や現役職員の話を聞いて、仕事の「やりがい」と「厳しさ」の両面を知れて、逆に決意が固まったそうです。

この、仕事の厳しさも知れるというのは重要なポイントで、NPOの大山さんは、各施設に対して、「しんどかったこととか、苦労した点も含め、ありのままを伝えてください」と、呼び掛けているそうです。

でも、就活サイトというと、学生だけが対象のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
年配の方も含めて、あらゆる世代が対象です。

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施設では、子どもの勉強を見たり、一緒に遊んだり、食事を作ったり、掃除をしたりと、例え専門の資格が無くても行える仕事はたくさんあるんです。

実際に、40代・50代になってから正職員として中途採用される人もいますし、子育てを終えて非常勤やパートで働き始める人も多くいます。ボランティアで働く人もいます。

この児童養護施設の仕事のやりがい、大切さについて、NPOの大山さんは次のように話しています。
「子どもたちと一緒に、あの時こうだったねとか、あの時ごめんねとか、ありがとうねとか、
大山さん泣いてたよねとか、思い出を振り返って、お互い成長出来ているよねって語り合える時があって、すごく尊い仕事だなと感じます。そこに立ち向かっている職員も多くいますし、その職員を大事にすることが、必ず子どもたちにプラスになるというのもしっかり発信して、魅力を伝えていけたらなと思います」。

NPOでは、採用活動だけではなく、職員の研修や交流会もオンラインで開いて、いわば職場の定着を支援する取り組みも進めています。
虐待の急増で、児童養護施設の重要性はますます高まっています。
少しでも関心がある人は、是非一度、サイトをご覧になって貰えればと思いますし、こうした施設や職員への支援の輪が、もっともっと広がってもらいたいと感じます。


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