今年度の最低賃金の引き上げが、10月1日から全国で順次、始まります。
竹田忠解説委員に聞きます。
【 物価高で家計が厳しい中、最低賃金の引き上げは重要 】
A
その物価高も踏まえて、今回の引き上げは過去最大となった。
時給で31円アップして、平均で961円。率にすると3.3%のアップ。
ただ、消費者物価も直近で3%上がっていますので
最大引き上げでも、決して十分とはいえない状況です。
【 実際の最低賃金の状況は? 】
A
最低賃金は都道府県ごとに決まります。
一番高いのは、今年も東京都で1072円、
次いで神奈川県の1071円、
これまで1000円を超えていたのはこの二つだけでしたが、
今年度から新たに大阪府も1000円を超えて1023円、となりました。
一方、一番低い最低賃金は853円で、ここに10の県がひしめきあっています。
(青森、秋田、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄)
一番高い所と一番低い所の差が時給で219円もあって、
依然として地域間格差が大きいわけです。
【 賃金を払う側の企業も困っているような? 】
A
そこが問題です。
特に規模の小さな会社には、いわばダブルパンチで、
物価高で原材料費が上がっている。
そこに、実は今、最低賃金で働く人が増えているんです。
というのも、
賃金が改定後の最低賃金を下回ることになる労働者の割合を示す「影響率」は、中小零細企業の場合、2011年の3.4%から21年の16.2%に増えている。
【 その理由は? 】
A
最低賃金が年々上がっているため、
これまでそうではなかった人たちも最低賃金に追いつかれている。
つまり、企業はそれだけ多くの人の賃上げをしないといけない。
そうなると必要なのは、価格転嫁を可能にすること。
なぜなら、最低賃金引上げで経費が増えるわけですから、
本来はその分を価格に上乗せできれば問題ないわけです。
しかし、下請け企業などからは
納入先がなかなか認めてくれない、買い叩かれてしまう、という苦情が多い。
ここは、公正取引委員会や中小企業庁などがもっと目を光らせて
弱いモノいじめは許さない。
そして、最低賃金は社会全体で支えていく。
そういう視点が大事なんだと思います。
そうでないと、日本全体としても
賃金がいつまでたっても上がりにくい、ということになってしまいます。
(竹田 忠 解説委員)
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