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能登半島地震 住宅の再建のための支援金 地震保険 ローン減免措置

今井 純子  解説委員

能登半島地震の発生からまもなく1か月。被災地では、多くの住宅が被害を受けています。家を再建するための支援策にはどのようなものがあるのでしょうか。今井解説委員。

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【今回の地震で、住宅には、どのくらいの被害が出ているのでしょうか?】
激しい揺れや土砂災害、液状化、火災、津波などで大きな被害がでています。まだ、全容はわかっていませんが、自治体の発表では、これまでに、少なくとも石川県で、全壊や半壊、一部破損などすべて含めて4万4000棟あまり。ほかにも、新潟県、富山県などで多くの被害が確認されています。現地では揺れが続いていますし、雪の重みで被害が拡大することも心配です。

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【不安ですよね。家を再建するには、多額のお金が必要になります。支援策にはどのようなものがあるのでしょうか?】
いろいろありますが、きょうは、公的な制度。民間の地震保険。そして、住宅ローンを減免する制度。この3つを中心に見ていきたいと思います。

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まず、公的な制度ですが、
▼ 壊れた住宅の解体・撤去を自治体が公費で行ってくれる制度があります。自費で解体した場合でも、原則、後から費用を負担してもらえます。今回は、半壊以上の被害が対象になります。
▼ そして、支援金。生活の再建を支援するための見舞金として、被害の程度に応じて、まず、1世帯最大100万円。その上で、建て直しや修理、家を借りるなど、家の再建の方法によって、別に最大200万円が支給されます。

【あわせて最大300万円ですね】
はい。今のところ、法律の適用を受けた石川県の全域と富山県(氷見市、小矢部市、射水市)新潟県(新潟市)の自治体で、家が一定以上の被害を受けた方が対象になります。借りている家が壊れたという方も対象になります。
そして、自治体によっては、独自に、支援金を上乗せしたり、法律の対象になっていない地域・被害も対象にすることを決めた。あるいは、検討しているところもありますので、随時、お住いの自治体のホームページなどで確認していただきたいと思います。

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【どこで手続きをするのでしょうか?】
どちらも地元の市町村に申請します。自治体の窓口の他、郵送やオンラインで受け付けているところもあります。支援を受けるには、住宅が被害を受けたと証明する「り災証明書」が必要になります。原則、現地での調査が必要になりますが、今回、全壊の被害が多いことから、政府は、航空写真などを用いて迅速に証明書を出す方針を示しています。実際に、速やかに証明書が発行され・支援が進むよう、自治体は取り組んでほしいと思います。

【次に、地震保険。これは、加入している人が対象ですね】
はい。損害保険会社の地震保険。それからJA共済など、地震補償が含まれている共済があります。大きな被害が出た地域では、どちらかに加入している世帯の割合をみると、例えば、石川県で48.1%など、全国平均を上回っています。地震保険だけでも、日本損害保険協会によると、今月15日までに、5万件を超える問い合わせや申請がきているということです。

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▼ 地震保険は、4段階で被害に応じて、保険金が支払われ、
▼ JA共済の地震共済では、細かく、損害の割合に応じて、共済金が支払われます。

【この損害の割合は、誰が判断するのですか?】
自治体の調査とは別に、保険会社などの調査員が判定します。こちらも、今回、被害が激しい地域などについては、航空写真などを活用して、すみやかに保険金を受け取れる特例措置をとることにしています。
請求したい方は、基本的に、契約している会社や団体に連絡をとってください。壊れた部分を先に直したり、撤去したりしてしまうと、トラブルのもとになりかねませんので、その前に、とりあえず連絡をとっていただければと思います。
家が壊れて書類がどこにあるかわからない。契約した方が亡くなって、どこと契約していたかわからない。という方もいらっしゃると思います。その場合、こちらの電話番号で問い合わせを受け付けています。
(日本損害保険協会 自然災害等損保契約照会センター0120-501―331)
(JA共済相談受付センター0120-536-093)

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【支援金や保険金がもらえると助かりますね】
はい。当面のおかねに困っている方も多いので、少しでも早く、支援金や保険金が手に入るようにしてほしいと思います。ただ、建設費が値上がりしている中、受け取れる金額は限られます。立憲民主党と日本維新の会、それに国民民主党の3党は、支援金の上限を倍増することなどを盛り込んだ法律の改正案を共同で国会に提出しています。岸田総理大臣も、追加的な支援を検討していると話しています。被災地の現状に沿って支援の充実がはかられるよう、真摯な議論をしてほしいと思います。その上で、もうひとつ。

【ローンを減免する制度ですか】
ローンが残っているのに、家が被害を受けた。どうしたらいいか、という問い合わせが地元の金融機関などに寄せられています。住宅だけでなく、勤務先や船などが被害を受けて、住宅や個人事業の「ローンが返せない」あるいは「いずれ返せなくなる見通しになった」方については、金融機関の同意が得られれば、蓄えのうち、最大500万円と、そのほか、公的な支援金などを手元に残した上で、できるだけの返済をして、払いきれない分は免除してもらうことができる仕組みがあります。自己破産とは違って、ローンを払えなかったという情報が金融機関に残らないため、新たなローンを借りて、生活や仕事を再建するための後押しになることが期待できます。無料で弁護士の支援も受けられます。最も多くのローンを借りている金融機関に申し出をしていただきたいと思います。

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【いろいろな支援があって、調べるのが大変そうですね】
参考になるのが、日弁連で災害復興支援委員会の副委員長を務める永野海弁護士が、ネット上で公開しているかわら版です。
時間の経過とともに、どんな支援が受けられるのか。どのような注意点があるか。などわかりやすく紹介されています。さきほど紹介した支援金などのほか、
▼ 家を建てるお金を借りる場合の特例制度や
(住宅金融支援機構。60歳以上の方を対象に、毎月の返済は利息だけで、本人がなくなった時に、売却などをして返済できる制度など)
▼ 損害に応じて、所得税などが減税される制度なども紹介されています。こちらは、本来、ことしの所得をもとに減税されることになるのを、1年、前倒しして、来月から確定申告が始まる去年の分の所得に適用できるようにする方針を政府が打ち出しています。
外国語版もあるほか、音声付きの動画も見ることができます。「ひさぽ(被災者支援情報さぽーとぺーじ)」で検索していただきたいと思います。
永野弁護士は「過去の災害では、せっかくある支援策がいかされないケースも多かった。ぜひ、どのような支援策があるのか知って、活用してほしい。時間はかかっても必ず再建できます」と話しています。

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【参考になりそうですね】
一方、国民生活センターや損保業界が注意を呼び掛けている点もあります。

【なんでしょうか?】
突然訪問してきた事業者に「お宅の屋根がずれている。今なら修理できる」「保険金の請求を代行します」と勧誘された。その結果「多額の代金・手数料を要求された」「キャンセルしようとしたら多額の解約金を請求された」などの相談が、被災地の消費生活センターに300件近く寄せられています。保険の請求は無料でできます。突然の訪問販売の場合、クーリング・オフもできます。不審に思ったら、能登半島地震関連消費者ホットラインに相談していただきたいと思います。
(石川県、新潟県、富山県、福井県 0120-797-188)
(他の地域からは 消費者ホットライン 188へ)

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公的な支援などについては、各地の自治体や弁護士会などで、無料の相談窓口を設けています。
苦しい思いや悩みをひとりで抱え込まず、ぜひ、相談をして生活の再建につなげていただきたいと思います。


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