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能登半島地震 災害時にペットは?同行避難・犬猫の一時預かりは?

土屋 敏之  解説委員

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◆能登半島地震では人間だけでなくペットなど動物も多く被災

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コロナ禍で全国的にペットを飼う人が増えたとも言われますが、今回特に被害が大きかった能登半島北部などには犬と猫だけでもおよそ1万匹いると推計されています。
その被害は今も正確にはわかっていませんが、石川県獣医師会などによると家屋の倒壊や火災に飼い主と共に巻き込まれたり地震で驚いて逃げ出した犬や猫も多いとのことです。東日本大震災では逃げた犬がその後野犬化して問題になったケースがありましたが、能登半島でも今後迷子の犬・猫が野良化するおそれもあります。
そして、動物病院や獣医師などのスタッフも被災し、多くが通常の形での診療は再開できていません。県獣医師会会長で自らも穴水町の動物病院が大きな被害を受けた宮野浩一郎獣医師は、先週から現地での診療を再開はしたものの断水が続いていることもあっていまだ十分な診療はできないと言います。また、当初は大けがをしたペットが多かったのが、今は劣悪な環境での生活が長びく中、犬や猫も人間と同様ストレス性の下痢を起こしたり風邪も流行っていると言います。
こうした中、28日から獣医師会が輪島市の避難所などに動物用の移動診療車で巡回を始める予定です。雪の状況などによっては予定が変わる可能性もあります。

◆ペット連れで避難する困難

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なんと言っても人命が最優先ですので、避難所では特に初期の混雑する状況では動物までは受け入れてくれないケースが多いのが実情です。私がこれまで取材してきた災害現場でも避難所の玄関先にペット用ケージなどを置かせてくれたらよい方というのが実感でしたが、冬の北陸ではペットを玄関先や屋外に置くのは命の危険もあります。中には、学校で教室1つをペット連れの人用として区別してくれるケースもありますが、スペースも限られる中、こうした対応が行われる避難所は多くはありません。
今回の能登半島でも、ペットの同伴ができないため避難所に入るのをあきらめて車中泊や壊れた自宅に残った飼い主が多いと見られていますが、これは飼い主の命のリスクも高くします。

◆災害時にペットをどうしたらいいかのルールは?

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東日本大震災や熊本地震などを経て、国は2018年に「人とペットの災害対策ガイドライン」を策定しています。
これによるとペットの安全確保は飼い主の責任=「自助」が原則で、飼い主はペットを「同行避難」=つまり置き去りにせず連れて避難することが求められています。ただし、それを避難所が受け入れてくれるとは限らず、その場合は預け先なども自ら確保するよう求められています。
とは言え、今回のように交通手段が途絶えてしまうと預けようにも連れて行けませんし、動物病院やペットホテルがあったとしてもそこも被災していますから、預け先を事前に確保しておくというのは現実には難しい面もあります。
国のガイドラインでは3年前に自治体向けのチェックリストができ、市町村などには、ペットを受け入れられる避難所はどこにあるかなどの情報を平時から住民に公表しておくことを求めていますが、実際にはまだまだ進んでいません。
また「受け入れできる避難所」というのも、飼い主とは別の所にペットのキャリーバッグを置くなどして雨風をしのげる場所を提供するのが基本で、一緒に室内に入れることを意味しているわけではないので注意が必要です。これは避難所のキャパシティーや動物の毛などに深刻なアレルギーがある人もいることなどを考えるとやむを得ない面がありますが、飼い主側には避難所内に同伴できないなら入らない・入れないという人も少なくありません。

◆避難所にペットを連れて入れない場合などの支援は?

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今回の地震では石川県獣医師会がペットの一時預かりを始めています。受け入れ先まで自分で連れて行けることが原則ですが、犬・猫・ウサギ・小鳥を1か月間無料で預けられます。他に各地の動物愛護団体なども一時預かりを行っています。
また石川県は迷子になった犬・猫の保護情報などペットに関する相談を受け付けています。(*1月25日現在、能登中部保健福祉センター内に北部保健福祉センターの臨時窓口が設置されている形です)
今後の課題としては、まず自宅が損壊して戻れない方などは順次二次避難先のホテルなどに移っていますが、そうした時ペットはどうするのか?があります。飼い主からは「ペットが心の支えになる」「一緒だから頑張れる」という声があるということで、なるべくなら同伴できる受け入れ先が増えるとよいのですが、そうできない場合は中長期的なペットの預け先も必要で息の長い支援が求められます。また国のガイドラインも、同行避難などが必ずしも実態に合わないのでは?という面も今回浮かび上がって、災害の多い日本で今後どうすべきかはあらためて検討課題と言えます。

◆今回の被災地以外でペットを飼っている人も災害に備えておくことが必要

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飼い主には平時から備えておくべきことが沢山あります。まず、お住まいの地域の避難所の確認はもちろん、その避難所はペットを受け入れてくれるのか?あらかじめ自治体などに問い合わせておいた方がよいでしょう。その上で、避難所に入れないケースも想定し、自宅からある程度離れた、つまり同時に被災しなさそうな預け先もなるべく考えておいた方がいいでしょう。
そして、避難する時に必要な物を人間用だけでなくペット用もあらかじめ準備しておきましょう。まずキャリーバッグ。これは移動時だけでなく、避難所に入れる場合でもキャリーバッグに入れて置くことが条件の場合もあります。ペットフードや水は5日分以上。ペットシーツやトイレ用品、さらに好きなおもちゃもあると慣れない環境でも落ち着きやすくなります。

◆犬・猫ではマイクロチップについても確認を

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マイクロチップとは皮下に埋め込む長さ1cm、直径2mmほどの電子タグで飼い主の連絡先などの情報を登録しておくものです。2022年に動物愛護管理法が改正され、新たに販売される犬と猫にはマイクロチップ埋め込みが義務化されていますが、前から飼っていると入れていない場合も多いと思います。これは元々阪神・淡路大震災で迷子の犬や猫が多発したことから導入が進んだもので、迷子のペットを誰かが見つけてくれた際に飼い主に返しやすくなります。
このほかやはり日頃からのしつけも重要で、他の人や動物に慣らしたりむやみに吠えないようにしつけておくことや、キャリーバッグで過ごすことにも慣らしておくと避難時にも役立ちます。
ペットは災害時も心の支えになってくれる一方でこうした負担もあり、守れるのは飼い主である自分だという自覚を持って飼育することが大切だとあらためて感じます。
今も被災地では断水や寒さで大変な状況が続いていますが、どうか人もペットも体調に気をつけて過ごしてほしいと思います。


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土屋 敏之  解説委員

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