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能登半島地震から3週間 子どもと保護者に必要なこと

木村 祥子  解説委員

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能登半島地震の発生から3週間が経ちました。
長引く避難生活で子どもたちの心と体への影響が懸念され、子どもたちを支える保護者にも気を配る必要があります。
被災地の子どもや保護者にとってどんなことに注意し、支援をしていけばよいのか。
木村祥子解説委員です。

【子どもが示す災害ストレス】
震災から3週間が経ちましたが、現在も石川県内だけでも1万5000人以上の方が避難生活を続けています。
この中には多くの子どもたちも含まれているのですが、慣れない避難生活や家族と離れて集団避難をしている中学生など、子どもたちの心理的なストレスは計り知れません。

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こちらは文部科学省が東日本大震災の翌年、2012年に行った調査結果です。
岩手、宮城、福島などの被災した幼稚園児から高校生の保護者、およそ33万人を対象に「震災前と異なる現在の子どもの様子」について聞きました。
このうち、
「災害のことを思い出して突然、おびえたり、興奮や混乱をしたりすることがある」といったPTSDが疑われる症状がみられた子どもは
▽幼稚園では20%
▽小学校では18%
▽中学校では12%
▽高校では9%などとなり、年齢が低いほどPTSDが疑われる割合が高いことがわかりました。

PTSDは震災から1年以上経ってから気付かれることも稀ではなく、長期にわたって生活に支障をきたすこともあるため、専門機関で診断と治療を受けることが大切です。
ただ、現状ではすぐに医学的な対応が難しいという場合もあると思います。
今、できることとしては子どもの変化に気をつけてあげることが大切です。
そこで災害のストレスで子どもが示す反応について、主なものをまとめました。

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▽幼児期から小学校低学年ぐらいですと、片時も親から離れられず、トイレや着替えも1人ではできなくなることがあったり、地震の度に泣いたり、パニックになったりすることがあるということです。また
▽小学校の高学年から中学生ぐらいになると、乱暴な言動を示したり、一方で無口で引きこもり傾向になったり、また「自分が頑張らなければ」と過度に大人の役割を引き受けてしまう子どももいたりするということです。
災害時の子どものケアに詳しく、能登半島地震の被災地でも支援活動にあたっている国際NGOの「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の赤坂美幸さんによりますと
「こうした変化は非常事態にはよくみられるストレス反応で大人が当たり前だと認識することが大切です。子どもの変化に大人がイライラすることで、子どもが一層、ストレスをためるという負の連鎖に陥る危険がある」と指摘します。

【大人はどう対応?】
では、大人はどのように対応すればよいのでしょうか?

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まず、幼児期から小学校低学年ぐらいでは、
▽気分をリフレッシュするために、運動などで体を動かすようにする
▽スキンシップを必要としている場合は、じゃんけんなどの手遊びをしたり、歌などを歌ったりしてふだんより機会を多く作るように意識してあげて下さい。
次に小学校の高学年から中学生ぐらいでは
▽普段より頑張りすぎている場合は十分な休息の時間がとれるように配慮してあげたり、
▽不安な気持ちを無理に聞き出そうとせず、子どもが自発的に話をした場合には遮らずに共感しながら聴いてあげたりしてほしいといいます。
子どもの心のケアというと専門家でないとできないと思われがちですが、
赤坂さんによりますと
「身近な大人が子どもの様子を受け止め見守ることが、子どもが落ち着きを取り戻すための大切なサポートになる」と話していました。
また「ストレス反応は一般的には生活環境が整うことで自然に落ち着くとされているので、ほとんどの人が時間の経過とともに回復してきます。ただ、日常生活に大きな支障をきたしたり、自分自身や他者を傷つけたりするおそれがある時には、避難所を巡回する医療者や自治体の窓口に相談してほしい」ということです。
一方、震災から3週間がたち、子どもを見守る大人たちも疲れがたまっていらっしゃると思います。
もしかしたら子どもを見てあげたいと思う反面、気持ちに余裕がないという方もいらっしゃるかもしれません。
子どもを支えるには、大人が元気でなければなりません。
そこで大人への対策も始まっています。

【今こそ大人への支援を】

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こちらは石川県七尾市に作られた子ども用の遊び場ですが、大人を支援する場にもなっています。
教育支援を行っているNPOの「カタリバ」が開設しました。
保護者にとっては、子どもたちの喜ぶ姿が見られたり、支援員に相談ができたり、さらにバラバラな場所に避難している保護者にとっては、集まって情報交換ができる貴重な場にもなっているようです。

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居場所を提供しているNPOの今村久美さんは
「保護者の中には自分への無力感や子どもへの申し訳なさで押しつぶされそうになっている人もいます。子どものためにもまずは自分自身を大切にし、遠慮せず、人の助けを借りてほしい」と話していました。
そしてみなさんが今、気がかりの1つになっているのが、生活再建だと思います。

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このNPOでは東日本大震災や熊本地震など、過去の地震で支援した経験を生かして、今月「災害時の子どもの生活ガイド」というサイトを立ち上げました。
住まいを再建するために、どんな給付や貸付が受けられるのかや、子どもの学費や奨学金についてなど、どのタイミングで、どんなことをしておくとよいのかなど、震災発生から時系列で紹介されています。
また、オンラインで子育て相談も行っていて、精神保健福祉士などが無料で相談に応じます。
「災害時の子どもの生活ガイド」と検索してみて下さい。

<子どもの不安に寄り添う>
また、自治体でも教育に関する支援策を行っています。

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その1つが就学援助制度です。
家計が苦しくなった小・中学生の子どもがいる家庭に給付され、学用品や給食費などに使えます。
この他にも教育などに関する個別の支援情報は内閣府のホームページにまとめて掲載されています。
「被災者支援に関する各種制度の概要」と検索してみて下さい。
また先ほどご紹介した「カタリバ」では全国から寄せられた寄付金を活用して今月19日から被災した中学3年生と高校3年生など受験生を対象に返還不要の奨学金制度の募集を始めました。
緊急度などに応じて中学3年生は2万円、高校3年生は5万円が支給されます。
応募の締め切りは今月28日までです。
詳しい内容はこちらのQRコードから見ることができます。

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そして最後に、避難所など狭いスペ―スでもできるリラックス方法をご紹介したいと思います。
まずはイスにゆったりと腰をかけ、口を閉じて鼻から静かに息を吸います。
続いて、口を小さく開いて、息をそっとゆっくり長く吐ききります。
これを5回ほど繰り返すとよいということです。
こちらは先ほど紹介した「カタリバ」のサイトにも掲載されていて、この他にもひとりでできるストレッチなども紹介されています。
被災者の皆さんは気苦労が絶えないと思います。
ただ、皆さんの力になりたいと思っている方はたくさんいます。
今回ご紹介した支援などを上手に頼りながら、生活再建に向けて進めていって頂ければと思います。


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