NHK 解説委員室

これまでの解説記事

規正法改正は 派閥解消は 信頼回復険しく

曽我 英弘  解説委員

能登半島地震は発生から2週間が経ったものの、いまだに孤立状態になったままの集落もある。一方自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題に国民の不信感は高まっている。
今年初めてのNHK世論調査から分かったことは、地震への政府の対応を評価する声の一方で一定の批判もあること。また自民党の派閥に引き続き厳しい視線が注がれていて1月の支持率は内閣・党ともに低迷している。

m240116_0_01.jpg

●能登半島地震●

m240116_1_05.jpg

【政府対応の評価】
能登半島の被災地への支援では1万6700人余りが避難所で過ごす中、体調を崩すなどして亡くなる「災害関連死」をいかに防ぐかが課題となっている。岸田首相は14日、現地を視察し、2次避難に向けた支援や仮設住宅の整備に全力を挙げる考えを示した。
政府の元日からの対応、国民にはどう映っているのだろうか。能登半島地震への政府のこれまでの対応を「評価する」という人は「大いに」「ある程度」あわせて55%。「評価しない」は「あまり」「まったく」あわせて40%だった。避難所には支援物資も届き始めているが、依然厳しい生活を強いられている。さらに生活再建に向け、住まいの確保やコミュニティーの維持、働く場の確保、教育環境の改善なども待ったなしだ。また野党側からは政府の初動が遅いなどといった批判も出ている。今は被災者への支援を最優先に、ただ状況を見ながら今回の対応の検証も必要になりそうだ。

【地震への備え】
私たち一人ひとりの備えも大事だ。地震に対する備えを「している」という人は「十分」「ある程度」あわせて43%。「していない」は「あまり」「まったく」あわせて55%だった。
ただ地域差もうかがえ、「北海道・東北」で「している」人は56%なのに対し、「九州」は31%にとどまる。西に行けば行くほど備えを「している」人が少なくなる傾向にある。被災後も自宅で過ごし自力で生活できるよう、また冬の避難に備えた防寒対策も大事になる。

●自民派閥資金問題●

m240116_2_08.jpg

【政治資金の透明化】
去年から続く自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で先週初めての逮捕者が出た。岸田首相は「自民党自らが変わらなければならない」として、党内で再発防止策などの議論を急いでいる。また公明党や野党各党からも意見が相次いでいる。
議論で急ぐべきは「政治資金の透明性」の徹底だ。事件の温床となったパーティー券について、購入者などを収支報告書に記載するよう義務つける公開基準を現在の「20万円超」から引き下げるのは必須だろう。また会計責任者だけでなく議員本人も法的な責任が問われる連座制の導入や違反行為のあった議員のいる政党への交付金の減額。さらに踏み込んで企業団体献金を禁止すべきだという意見も野党からあり、自民党の対応が焦点となる。
今回政治資金規正法を改正し、ルールを厳しくする必要があると思うかどうか聞いたところ「必要がある」は83%と圧倒的だった。一方で自民党が再発防止策などを検討しても国民の信頼回復に「つながらない」という人は78%に上ることからも信頼回復の道は険しそうだ。そもそもどんなに規定を見直しても、法律を作った議員本人が守らなければ、まさに「絵に描いた餅」に過ぎない。規正法が制定されたのは戦後まもなくの1948年。その後「政治とカネ」の事件が起きるたびに改正が繰り返されてきたが抜け道が多く「ザル法」などと揶揄されてもきた。来週から始まる通常国会で実効性ある再発防止策をまとめることができるか。とりわけ自民党はそれを守り抜く意志と覚悟があるのか。国民が注視していることを忘れるべきでない。

m240116_3_08.jpg

【自民派閥のあり方】
自民党が議論を始めたもうひとつが、「派閥のあり方に関するルールつくり」だ。岸田首相の意図や議論の方向性は判然としないが、岸田首相自身派閥の存続を否定せず、「政策を議論し、若手を育成する場」などとむしろその必要性を強調している。一方で派閥同士が衆議院の同じ選挙区で候補者の擁立を競い合っていた中選挙区時代と異なり、現在は小選挙区制のもと党の候補者は原則1人。公認権を握る党執行部の力が相対的に増した。このため現在、派閥に所属しない議員は80人近くと最大派閥の安倍派に次ぐ規模だ。今回、自民党の派閥のあり方についてどう思うか聞いたところ、「解消すべき」は49%。自民支持層でも37%が「解消すべき」とした。一方で存続を前提に「改革すべき」も40%に上ったが、「いまのままでよい」は5%にすぎなかった。
今回の不適切な会計処理は派閥が主導したとされるだけに、今後の議論の最大の焦点は派閥解消の是非だ。仮に解消しないとしても、パーティーなどを通じて資金を集め、派閥議員に配るやり方を続けるのかどうか。また人事の際派閥単位でポストを調整したり、要求したりするのを今後も認めるのかどうか。そもそもかつて自民党自ら決めた閣僚や党幹部に就任したら派閥を離脱するというルールの扱いをどうするか。周りの懸念をよそに、岸田首相は去年12月まで派閥の会長を務めてきたほか、今も執行部の多くは派閥幹部で占めている。
こうした点について、今回あいまいな形で終わらせたら国民は納得しないだろう。また議論の行方次第では党内抗争に発展する可能性もある。

●内閣・自民支持ともに低迷●

m240116_4.jpg

【内閣支持率】
内閣支持率は去年12月より3ポイント上がったものの26%。「支持しない」は56%。内閣の「危険水域」とされる30%割れは3か月連続だ。

m240116_5_03.jpg

【今の支持政党】
支持が低迷しているのは自民党も同様だ。自民党の支持率は30.9%。これに対し無党派層は45%と増加傾向にあり、岸田内閣になって最も高い数字だ。その差は14.1ポイントまで広がるなど、国民の政治不信の高まりがうかがえる。一方野党側は立憲民主党が5.3%と各党10%に満たない状態で、自民党に代わる政権の受け皿にはなり得ていない。

●今年の政治は●

m240116_6_05.jpg

政治の行方を考える。岸田内閣が今年、最も取り組むべきテーマを聞いたところ「賃上げ・経済対策」が最も多く31%。次いで「社会保障」「災害対策」などの順となった。ただ物価上昇を上回る所得の伸びを「期待しない」人は63%に上り、今年の景気は「変わらない」も63%と慎重な見方が大半だ。将来に対する不安を取り除き、日々の安心・安全を確かなものにしてほしいという国民の切実な願いにどう応え、解決策を見出すことができるのか。
各党・各議員が問われる一年となる。


この委員の記事一覧はこちら

曽我 英弘  解説委員

こちらもオススメ!