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命を守る献血 若い世代の理解を広げよう!

牛田 正史  解説委員

いま、若い世代で献血を行う人が減ってきています。
献血は、けがや病気の治療に必要な輸血用血液を確保するために不可欠な取り組みです。
なぜ若い世代で献血が減っているのか。
どうすれば、将来に渡って安定供給を維持していけるのか。
牛田正史解説委員がお伝えします。

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【若年層の献血者が減少】
上記のグラフは、1年間に献血をした人の数を表しています。
この20年間、ほぼ横ばいで、500万人前後を推移しています。
ところが年代別に見ますと、青い部分で示した30代以下の数は、大きく減ってきています。
2002年度には361万人いましたが、2022年度は167万人と、半分以下になっています。
いまは比較的高齢の方の献血が増えて、量を維持出来ていますが、この傾向が続きますと、将来的に、血液の安定供給に支障を来す恐れも懸念されています。

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【減少の理由は】
若い世代の献血が減っている理由はいくつかあります。
まずは少子化で、そもそも若い世代が減っていることが挙げられます。
それに加えて、「学校献血」が減っているという点もあります。
献血は16歳から実施できますが、これまでは、高校や専門学校などに献血バスが出向いて、集団で採血を行う学校献血が数多く行われてきました。
それが、学校の方針の変更などによって、徐々に数が減ってきているのです。
若いうちに献血を経験する機会がないと、大人になっても、献血に意識が向かない可能性も出てきます。
なので、若い頃から献血の大切さを知ることは重要です。
この度の能登半島地震では、大勢の人がけがをしました。
輸血を受けた被災者の方もいたのではないかと思います。
医療の技術が進歩しているとは言え、血液を人工的に造ることは出来ません。
また血液を長期間、保存することも出来ません。
多くの人が継続的に、献血に協力していかなければなりません。
こうした献血の必要性を、若い世代にもっと理解をしてもらうことが、今の大きな課題であると言えます。
日本赤十字社や国などは、啓発活動を強めています。
毎年1月から2月にかけては、「はたちの献血」というキャンペーンを実施しています。
WEBサイトやテレビのCMなどで、若い人をターゲットに、献血の目的や意義を伝えたり、協力を呼び掛けたりしています。

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【献血血液の意外な用途】
この献血の目的ですが、実はあまり知られていないことがあります。
集められた血液のうち、病気やけがをした人の輸血用に使われるのは、実は全体の半分ほどです。
では、残りは何かというと、血漿分画製剤と呼ばれる医薬品の原料に使われています。
血液の中に含まれる「血漿(けっしょう)」という成分を、薬に変えています。
重症の感染症や一部の神経疾患などに使われる「免疫グロブリン製剤」。
やけどやショックなどの治療に使われる「アルブミン製剤」などがあります。

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【血漿の需要が急増】
重要なのは、こうした薬の原料となる血漿の需要が、いま急激に増えているという点です。
必要量は5年間で1.3倍になっています。
これは血漿で作る医薬品の使い道が、どんどん広がっているからです。
最近は、病気の症状が悪化する前に投与して、状態を維持するためにも使われています。
薬の原料としての需要も高まっているわけです。

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【成分献血の専用ルームも】
こうした状況に対応しようと、最近は、薬(血漿分画製剤)の原料となる「血漿」だけを取り出す、専用の献血ルームも出てきています。
このうち、JR東京駅前には、去年5月に新しい献血ルームがオープンしました。
ここでは、採血を行って「血漿」だけを取り出した後、血液をまた体内に戻していきます。
「成分献血」と呼ばれ、赤血球などが戻ってくるため、その点では、体への負担が比較的低く抑えられるとされています。
時間は40分から90分ほどと、血液を戻す分、少し長めです。
血液を戻さない献血は16歳から実施できますが、成分献血は18歳からです。
駅に近く、平日は仕事の合間に来る会社員などもいるそうで、去年5月の開所以来、これまで1万3000人ほどの利用があります。
日本赤十字社・関東甲信越ブロック血液センターの金井絵梨主査は、「今まで以上に若い世代の方の献血のご協力が必要となっていて、気軽にお越し頂ける献血ルームを目指して取り組んで参りたい」と話しています。
こうした血漿の成分献血だけを行う専用ルームは、名古屋や大阪にも出来ています。
成分献血は、こうした専用ルームだけでなく、各地にある献血ルームでも、受け付けている所が多くあります。
今では成分献血を行う人が、献血者全体の約3割に上っています。
血液を戻す成分献血も、戻さない全血献血も、どちらも重要です。

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【献血を行う時の注意点】
最後に、献血に協力する時の注意点もお伝えします。
献血で体調や健康を損ねないようにする、あるいは、輸血を受ける患者の安全を守るために、注意すべき点がいくつかあります。
その一部をご紹介します。次のような人は、原則、献血を控えてください。
まずは当日、体調不良であったり、発熱がある人です。
予防接種を受けたり、薬を飲んだりしている人も、状況によっては、遠慮してもらう場合もあるということです。
また3日以内に抜歯など、出血を伴う歯科治療を受けた人、
4週間以内に海外から帰国(入国)した人、それに新型コロナに感染し、軽快してからまだ2週間たっていない人も、献血は控えてください。
妊婦や授乳中の人も控えてください。
そして、エイズの検査を目的に、献血を受けることは絶対に止めてください。
エイズなどのウイルスは、感染初期には検査しても100%検出することができません。
輸血を受ける人の安全を守るためにも、責任ある行動が必要です。
このほか献血の注意点はいくつかあり、詳しくは日本赤十字社のホームページを参考にしてください。

献血によって、けがをした人、病気の人の命が救われます。
これからも献血の輪を広げていかなければなりません。
若い世代の方も含めて、是非、献血の大切さを広く知ってもらえればと思います。


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