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2024年 物価は?賃上げは?利上げは? わかりやすく解説

今井 純子  解説委員

きょうは、2024年のくらしがどうなるのか。今井解説委員に聞きます。

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【最初に】
能登半島地震では、揺れや寒さが続いて、大変な思いをしている方が大勢いらっしゃいます。また、被災地は、観光地。それから、輪島塗などの伝統工芸品の産地としても有名ですし、農業・水産業も盛んです。まだ、全体状況は、わかっていませんが、今後の生活・くらしへの影響が心配です。

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【日本全体では】
そうした中、少し引いて、日本全体をみてみると、今年は「物価の上昇は定着するのか」「賃金は毎年上がっていくのか」そして、「ほぼゼロに近かった金利が上がるのか」。20年以上くらしを取り巻いてきた経済の環境が大きく変わるのか。それを見極める大事な年になると言われています。

【それで転換の年になるのか。というのがタイトルになっているのですね。まず、物価ですが、去年もいろいろなものが上がって、安いものを必死に探しました】
物価の推移をみてみると、去年1月に、4.2%と41年ぶりの上げ幅となった後、政府の物価対策、そして、原材料の国際価格が下がってきた影響などで、上昇の勢いは抑えられています。が、それでも、去年11月の時点で、2.5%の上昇と、多くのエコノミストの1年前の予測より高止まりしています。当初、エネルギー価格から始まった値上げの動きが、次第に食料品。そして、このところサービス価格へと、広がっていることが背景にあります。2度目、3度目の値上げも出てきています。

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【この物価の上昇。今年はどうなるのでしょうか?】
民間のエコノミスト38人の予測の平均をみてみますと、今年は少しずつ勢いは弱まっていく。それでも2%を上回る物価上昇が続くという予測になっています。

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【今年も物価の上昇が続くとすると、生活が一段と厳しくなる心配がありますね】
そうならないようにするためにも、今年は春闘で「去年を上回る賃上げ」。そして、「物価を上回る賃上げ」を実現することが、本当に大事です。去年は、およそ3.6%という、30年ぶりの高い水準の賃上げが実現しましたが、それでも、賃金が物価の上昇に追い付かない状態が20か月連続で続いています。それだけ、生活は厳しくなり、節約の動きもみられるようになっています。物価が上がり、賃金がそれ以上に上がり、消費が増える。経済のよい循環を実現し、くらしをよくするためにも、今年の春闘が大きなカギとなります。岸田総理大臣も、去年を上回る水準の賃上げに協力するよう、呼びかけています。

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【どうなりそうでしょうか?】
組合側は強気です。連合は、基本給の底上げにあたる「ベースアップ」相当分として3%以上。働いている年数などに応じて基本給が上がる「定期昇給」分をあわせて、5%以上の賃上げを要求する方針を決めています。去年は「5%程度」でしたので、それを上回る水準の要求です。
一方、大企業の経営側からも積極的な姿勢がみられます。
▼ 松屋フーズホールディングスやビックカメラは、いち早く、10%を超える、あるいは、7%から16%という大幅な賃上げを決めましたし、
▼ 三井不動産も、組合との交渉を前に、10%程度の賃上げをする方針を
▼ そして明治安田生命とサントリーホールディングスも、それぞれ7%の賃上げをする、あるいは、めざす方針を打ち出しています。
▼ 家電量販店のノジマは、今月から、前倒しで賃上げを実施します。

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【なぜ、経営側がこれだけ前向きなのですか?】
生活が厳しいという社員の声にこたえたい、という思いもあると思いますが、ここまで経営側が前向きになる背景には、なんといっても人手不足があります。例えば
▼ ホテルでベッドメイキングをする人が足りなくて、宿泊したいという希望があるのに、予約を断らざるをえない。
▼ レストランで、料理を運ぶ人がいなくて、定休日を設けざるをえない。
▼ 地方空港で、海外から飛行機を乗り入れたいという希望があっても、荷物を運ぶ人が足りなくて、断らざるをえない。
収益のチャンスを逃している事態に、経営者の間で、人を採用し、やめないでもらうためには、積極的に賃金をあげる必要がある!という考えが広がっているのです。

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【見通しはどうでしょうか?】
エコノミストの予想をみてみると3.7%から4%程度と、
連合の要求方針の「5%以上」には達しないけれど、30年ぶりの高い水準だった去年の実績3.6%より高くなるのではないか、という予想が目立っています。
能登半島地震が企業活動や消費に与える影響など、まだ見極めがつかない面はありますが、今のところ、大企業は、今年度、全体で、3年連続の過去最高益を更新する見通しです。抱える現金預金も343兆円。1年前よりおよそ3%増えて、膨らみ続けています。高い賃上げが実現するか。そして、働く人の70%の人が務める中小企業にこの動きが広がるかが、焦点になります。

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【実際、このように、去年を上回る賃上げが実現したとして、それで、物価を上回るのでしょうか?】
エコノミストの予想をみると、基本給の底上げにあたるベースアップの部分は1.9%から2.5%程度。
そして、物価が、先ほどみた予測通り、年初の2%台半ばから、徐々に下がっていくとなれば、今年の後半ごろから、わずかかもしれませんが、賃上げの効果が物価の上昇を上回る状態になる可能性も見えてくる。という見通しがエコノミストの間からあがっています。

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【そうなってほしいですね】
そうですね。物価を上回る賃上げの状態が続くとなると、生活に少しゆとりがでて、経済のよい循環につながっていく可能性もでてきます。
そして、日銀が目標としている「2%を安定して上回る物価上昇」。実際、すでに20か月続いて2%を上回っていますが、それが今年も続く。さらに、賃金の上昇が伴う見通しが立ってくると、3つ目のポイント。金利が上がる。日銀の政策転換という大きな節目を迎えることも現実味を帯びてきます。

【金利が上がるかもしれないということですね】
はい。日銀は、今年前半には、2016年以降続けてきた「マイナス金利政策」を解除して、ゼロに引き上げるのではないか。と予測する専門家が増えています。その先、さらにプラスに引き上げる可能性を指摘する専門家もいます。

【金利があがると、生活でもいろんな影響がでてきそうですね】
まず、預金などの金利が上がることが期待できます。
一方、住宅ローンについては、多くの人が借りている変動金利が上がる可能性も出てきます。

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【ローンを借りている、あるいは、これから借りようか考えている人は気になりますね】
これから物価・賃金・金利が上がる時代になるのかもしれない。ということを、私たちも頭に入れて、年齢や状況に応じて違いますが、例えば
▼ どう長く働いて収入を得ていくのか。
▼ どう知識や技術を磨いて、賃金を上げていくか。
▼ 資産を長期的に運用するか。
▼ あるいは、資産をどう守っていくのか。
これまでの20年とは違うことを考える必要がでてくるのかもしれません。

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【でも、そうはいっても、長く働いたり、スキルアップをはかったりするのは難しい。資産なんてない。という方も大勢いますよね】
ぎりぎりの生活で、物価が上がると生活に行き詰る心配がある方も大勢います。そうした方には、政府の支援を強化することが欠かせません。弱い立場の人たちを、どう社会で支えていくのか。そのしくみを考えることも大事な1年になってくると思います。すべての人たちが生活に明るさを感じられる。そんな1年になってほしいと思います。


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