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冬の避難の注意点と求められる支援~能登半島地震~

清永 聡  解説委員

能登半島地震では震度7の揺れを観測した後も、地震活動が続いています。
いまも避難生活を強いられている人が多くいます。
今回は冬の避難の注意点と、これから求められる支援についてお伝えします。

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【なお続く地震活動】
Q:石川県などでは地震が続いていて不安な毎日だと思います。
A:地震活動は依然として活発です。こちらのグラフを見てください。

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これは地震回数を足し合わせたグラフです。ヨコが日数、タテが地震の回数です。これが熊本地震や阪神・淡路大震災などです。
今回の能登半島地震、1月5日までの推移はこちらです。

このグラフでみると同じ日数での地震は熊本地震の2倍近く、阪神・淡路大震災のおよそ4倍。93年の北海道南西沖地震に匹敵する多さです。

震度1以上の揺れは、9日午前4時までですでに1248回に上っています。
また、気象庁は8日の会見で「今後1か月程度は最大震度5強程度かそれ以上の揺れに注意するよう」呼びかけています。

【「避難所・避難生活学会」から緊急の呼びかけ】
医師や災害の専門家で作る「避難所・避難生活学会」が、今回の地震で避難している方々へ緊急の呼びかけを行っています。

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1、まずは低体温症を防ぐことが大切です。高齢の方は特に体温を失いやすいことが分かっています。
▽身体の震えが止まらない▽呼びかけへの反応が鈍いなど低体温症の兆候がある場合は、すぐに身体を温めるか、病院への搬送を呼びかけています。
温かいお茶を飲むとか、もう1枚防寒具を着てもらうこともできます。

2、それから車中避難されている方は、ガレージなどでエンジンをかけると一酸化炭素中毒の恐れがあります。
またエコノミークラス症候群に注意が必要です。長時間足を曲げた状態で過ごすと足に血栓が生じやすくなります。
定期的に足を動かしたり、マッサージしたりしてください。

3、停電中の自宅で過ごしている方もいると思います。
暖を取るため室内で炭や練炭を燃やすことや、室内で燃料を使う発電機を回すことは、一酸化炭素中毒の危険性が高まるため避けるべきだとします。
また、停電の時にはガスの警報器が作動していない可能性があります。ガス漏れにも十分注意してください。

【避難所の寒さ対策で求められることは】
Q:避難所の寒さ対策、どういうことが求められるでしょう。
A:1年前に北海道で、冬場の避難所運営の訓練が行われた際の映像があります。その取り組みをごらんください。

1月の最低気温の平均がおよそマイナス10度の釧路市。
この日行われたのは、夜間極寒避難所体験です。電気やガス水道など、ライフラインが絶たれたという条件の中、避難所となる体育館で一晩過ごします。ポイントは、TKBプラスW・ウオームです。
Tはトイレ、Kはキッチン、Bはベッド、それぞれできるだけ暖かさを確保することです。
B・ベッド。これは段ボールを使ったベッド。身体を床から離すことで冷えを防ぐことが期待されます。
続いてK・キッチン。発電機と炊き出し設備で温かい食事を作りました。寒い環境では多くのカロリーを消費するので、食べることが命を守るために大切です。
最後にT・トイレです。屋外の仮設トイレはどうしても寒さにさらされます。この訓練では屋内のトイレに携帯トイレを設置しました。少しでも寒さから身を守るという工夫が、避難所では大切です。

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Q:おさらいするとTがトイレ、Kがキッチン、Bがベッド、でウオームつまり「できるだけ暖かく」ですね。
A:しかし今回の被災地は物資がまだ大幅に不足しています。
ポイントである「暖かさ」を保つためには、十分な暖房機器・燃料、発電機や炊き出し設備などが欠かせません。
少しでも避難所で暖かさを保つための支援が急いで求められます。

【感染症対策と冬の避難所の難しさ】
Q:新型コロナウイルスなどの感染症も心配です。
A:今シーズンはインフルエンザも感染者数が多くなっています。またノロウイルスなどの懸念もあります。こちらも注意点をまとめました。

まずは密を避けることが感染症対策の基本です。特に新型コロナは普段皆さんが気をつけていることを避難所でも継続することが大切です。
避難所に入る場合は、体温計などで体調をチェックしましょう。

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体調に不安があれば、避難所の運営者に申し出てください。避難所が学校であれば、教室など他の人と離れた場所に移る必要があります。

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一方で、避難者が生活するスペースは大人数が集まりやすい場所です。
できれば間仕切りなどを活用して、避難者同士の間隔を2メートル以上保った状態にしましょう。
ほかにも、人が集中しやすい場所では密集を避ける行動を心がけましょう。

Q:マスクなどもした方が良いですね。
A:ただ、冬の避難所では感染症対策も難しくなります。こちらも課題と求められる支援をまとめました。
一番の予防はこまめな手洗いです。

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ところが断水しているところもあるほか、冬で水が冷たいためどうしても手洗いの頻度が低くなります。
水道の復旧を急ぐとともに、アルコールを含んだ消毒薬なども必要です。
それから換気が大切ですが、窓を開けると室内の気温が下がるため、避難所の空気がこもりがちになります。
定期的に空気を入れ換えるためにもやはり十分な暖房が必要です。
このほか衛生用品など、感染症対策の支援も急いでほしいです。

【広域避難の検討も】
長年被災者支援を行っている津久井進弁護士は、「過酷な冬場の避難所は限界がある。厳しい寒さが続く間、離れた旅館やホテル、自治体の外への広域避難も検討すべき」と提言しています。
新型コロナでもホテルや旅館を自治体が借り切った事例があります。
これだけ厳しい寒さが続いていますから、災害関連死を防ぐために、行政は生活環境が整った離れた地域へ集団で「広域避難」することも検討してもらいたいと思います。

【ボランティア受け入れはまだ】
Q:私たちにできることはあるでしょうか。
A:石川県によりますと、9日現在、災害ボランティアの受け入れは石川県内の多くの自治体がまだ行っていません。電話での問い合わせも控えてほしいということです。
今後の情報は「令和6年(2024年)能登半島地震・石川県災害ボランティア情報」の特設サイトなどで発信する予定だということです。
一方で、中央共同募金会などが支援金の受付を始めています。こうした支援も検討してください。

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NHKは「NHK防災」のホームページで、避難所の注意点や、能登半島地震を受けて気をつけてほしいことなどをまとめています。
QRコードから読むこともできます。
厳しい寒さが続きますが、被災地の方々はどうぞ身体をできるだけ温めるよう心がけてください。


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