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海産物の電話勧誘 「助けて!」に注意を 処理水放出で新たな勧誘トーク

今井 純子  解説委員

突然、事業者から電話がかかってきて、カニやサケなどの海産物を買ってほしいと勧誘される電話勧誘販売のトラブルが後をたたず、国民生活センターや北海道警察本部が、海産物を買う機会の多い年末年始に向けて注意するよう呼び掛けています。今井解説委員。

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【海産物の電話勧誘。具体的に、どんなトラブルが起きているのですか?】
国民生活センターによると、例えば
▼ 携帯電話に突然電話があり「北海道の支援のために、海産物を買ってほしい」と頼まれた。「北海道の事業者から仕入れていて、内容はよい。損はさせない」ということだったので、代引きで2万円のサケやホッケなどを買った。ところが、届いたものは、とても金額に見合うものではなかったので、事業者に返金を求め、商品を送り返した。ところが、2週間以上たっても、おカネが返ってこない。事業者に電話をしても出なくなってしまった。という相談があったといいます。

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【代金に見合う商品ではなかった・・】
いろいろなケースがありますが、中には、
▼ 「これとこれとこれが入った海産物のセットです」と説明を受けたのに、送られてきたら、説明された海産物が入っていない。
▼ 説明を受けたサイズと違って、小さすぎて値段に見合わない。
というケースもあるといいます。

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ほかにも、
▼ 娘さんからの相談で、80代の母親のところに、「日本の海産物が海外で問題になっていて、売れない。助けてください」と電話があった。親はあいまいに返事をしてしまったようで、履歴から折り返し電話をしたけれど、誰も出ない」というのです。

【契約してしまったかもしれないと、不安になりますよね】
事業者は契約したと思っているかもしれない。なので、「商品が届いたら、どうしたらいいか」という相談だったということです。

【相談は増えているのですか?】
2021年度におよそ5000件と、その前の年度より大幅に増え、次の1年もほぼ横ばい。それが今年度は11月末の時点で1629件。一年前より減る傾向がみえていました。

【減っているのですか】
増えていた年は「コロナの影響で、納入先の店が休業して困っている。助けてほしい」といった勧誘手口が目立っていた。それが、コロナが落ち着くとともに、減ってきていたのですが、ここへきて、新たな勧誘トークが目立ってきているというのです。

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【新たな勧誘トークですか?】
東京電力が福島第一原発の処理水を海に放出したことに伴い、今年の9月以降、一部の国や地域が輸入規制に踏み切ったことに触れて「輸出できずに困っているので、助けてほしい」といって勧誘されたというケースが目立つようになり、せっかく減ってきたトラブルが、一気に増えるのではないかという懸念の声が上がっているのです。

【先ほどの例にもありましたね。困っている産地を助けたい、という方は大勢いますよね】
まさに、人の善意を悪用した手口です。この手口でいける!となると、悪質事業者の間で、一気に広がる恐れがある。そこで、国民生活センターや北海道警察本部が、特に、海産物の購入機会が増える年末年始に向け、注意を呼び掛けているのです。

【こうした事例は、法律違反ではないのですか?】
電話勧誘販売で、ウソを言って勧誘するのは、「特定商取引法」という法律に違反しています。違法です。実際、今年6月、北海道警察本部は、漁師でもないのに「漁師になって、よいものがとれたので買ってください」と全国の消費者に電話をかけ、海外産などの海産物を売りつけていたとして、札幌市内の会社役員らを、特定商取引法違反の疑いで逮捕しました。ウソを言って勧誘していたほか、法律で義務付けられている契約書面なども交付していなかった疑いです。会社で組織的に勧誘していたとみられています。

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【悪質ですね】
例えば、北海道産と言われたのに、海外産の商品を送ってきたり、いろいろな名簿を手に入れた悪質な事業者が、それをもとに、組織的に手分けをして電話をかけてきたりするケースもあると言います。また、中には、そもそも電話の勧誘もなく、突然、一方的に、海産物を送られてきて、代金を請求されるケースもあります。

【生ものだと悪くなってしまう。と、思って、代金を払ってしまうこともありそうですね。違法な事業者は、どんどん摘発してほしいですね】
摘発してほしいと思いますが、現実には、追い付かない状況もあるので、被害にあわないように気を付けることも大事です。

【どうしたらいいのでしょう?】
まず「困っているから助けてほしい」などと勧誘された場合。トラブルが多く起きている。ということを、頭の中に入れておき、かかってきた電話ですぐには買わない。少しでもおかしいと感じたら、きっぱり断る。これが一番大事です。

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【まず、断ることですね】
はい。その上で、
万一、契約してしまっても、突然の電話勧誘販売の場合、法律で、書面を受け取った日から8日以内であれば、無条件で契約を解除できるクーリング・オフが認められています。この場合、電話だけでなく、郵便などの書面やメールで、事業者に、クーリング・オフすることを伝えてください。

【郵便やメールで伝えることが大事なのですね。もしクーリング・オフする前に、商品が届いてしまった場合は?】
商品が届いた後でも、クーリング・オフすることはできます。ただ、クーリング・オフした場合、原状を回復する、つまり、商品を送り返す必要があります。送り返す送料は事業者の負担となりますので、着払いで。そして、冷凍で送られてきた場合は冷凍で。冷蔵で送られてきた場合は、冷蔵で送り返すようにしていただきたいと思います。

【電話で勧誘された時に、断ったのに、商品が送られてきたら?】
送り主の名前や住所をメモするなどして、事業者の情報を控えたうえで、受け取りを拒否して、代金を支払わないようにしましょう。もし、おカネを払ってしまった場合でも、返金を求めることはできます。ただ、事業者と連絡がとれなくなったりすることもありますので、代引きの場合でも支払わないようにするのが一番です。

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【あと、先ほど指摘があった、そもそも勧誘の電話がかかってきていないのに突然、一方的に商品が届いて、代金の支払いを求められた場合は?】
送り付け商法と呼ばれていて、商品を受け取ってあけてしまったりしたことで、消費者に支払い義務があると勘違いさせる商法です。化粧品とか健康食品とかでもトラブルが起きています。このため、2021年に法律が改正されて、事業者が一方的に商品を送り付けた場合、事業者は、商品の返還を請求できないことになりました。消費者は、おカネを払う必要はなく、すぐ捨てるなり、使うなり、自由に処分することができます。

【おカネも払わずに、捨てたり使ってしまったりしてもいいのですか?】
はい。勝手に送ってきたわけですから、所有権は移ったという解釈です。事業者から代金を払うよう要求されても、応じる必要はありません。その上で、万一、しつこい勧誘や代金の請求、返金に応じてくれないなど、トラブルになった場合は、近くの消費生活センターに相談していただきたいと思います。全国共通で188の番号から、近くの消費生活センターにつながる仕組みになっています。これから海産物を買おうかな、と思っている方もいらっしゃると思いますが、突然の電話での勧誘には、ぜひ注意していただきたいと思います。


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