NHK 解説委員室

これまでの解説記事

子どもの視力が低下 近視の予防策は

木村 祥子  解説委員

m231226_002.jpg

子どもの視力が低下し、調査を始めて以来、最も悪くなっていることがわかりました。
どうすれば視力の低下を防げるのか、木村祥子解説委員です。

<子どももたちの視力が低下>

m231226_007.jpg

文部科学省が昨年度、2022年度に(令和4年度)全国の小・中・高校などで行われた健康診断のうち、視力検査の結果です。
裸眼視力で1.0未満の子どもがどのくらいいるかを調べました。
▼小学生が37.9%、
▼中学生が61.2%、
▼高校生が71.6%という結果になりました。
そもそも視力が1.0というのはどのくらいの見え方なのかというと教室の1番後ろの席からでも黒板の文字が楽に読めるというものです。
小学生でも4割近くの子どもたち、中学生以上では6割以上が、裸眼視力が「1.0」ないという結果となりました。
文部科学省は現在とは調査時期が異なるため、単純な比較はできないとしながらも、検査が始まった今から40年ほど前、1979年度(昭和54年度)と比べて、およそ20ポイント増え、その割合は過去最多となりました。
このうち、子どもたちに増えてきている「近視」についてお話をしたいと思います。
なぜ、子どもたちはこんなにも目が悪くなってしまったのでしょうか。
背景にあるのではスマートフォンやタブレット端末の普及とみられています。
そこに加えて最近ではコロナが影響していると言われています。
文部科学省によりますと家で過ごす時間が増えたことで、オンライン学習やゲームなど「画面を長時間、そして至近距離で見続けることが多くなったことが影響している」と分析しています。
小学生でもスマホを持っていたりして、私たちの生活にとってこうした機器はなくてはならない存在になってきており、また学校でも1人1台、タブレットが配布され、様々な教科でタブレットを使った授業が行われています。
こうした機器を使いながらも、学校全体で目を守る取り組みを行っている小学校を取材しました。

<視力低下を防ぐ取り組みは>
福島県矢吹町にある三神小学校です。
学校全体で「目の健康」に取り組んでいます。
目の健康といっても、直接、目を触るのではなく、
椅子に座って簡単にできる上半身の「ストレッチ」を行っています。
このストレッチ、学校の名前をつけた「三神ストレッチ」と呼ばれています。
「姿勢をよくすること」で視力の低下を防ごうと、毎週2回、朝の会を使って全校でやっています。

m231226_v1.jpg

まずイスにこしかけた状態で背筋を伸ばします。
手を背中の後ろに組んで、ゆっくりと頭を後ろに倒しながら体をそらせます。
今度は手を前に組んで背中や首、腕を伸ばします。
最後は座った状態で背筋をただし「よい姿勢」を意識します。
子どもたちは気をつけているので、授業中も姿勢がとてもよいのです。

ただ、タブレットを使った6年生の算数の授業では最初は姿勢がよかった子どもたちも課題に集中してくると、目と画面の距離が近くなってきていました。
そこで先生は定期的に「画面から目を離して、背筋を伸ばして」と声掛けを行っていました。
6年生の子どもたちに話を聞くと
「三神ストレッチをやると姿勢が正せるし、授業中とか姿勢が悪くなっていると自分で気づける」とか「自分で平日、ゲームをしちゃだめとか、夜にやっちゃだめとか制限して、目が悪くならないように自分で取り組むようにしました」と話していました。
またこの学校では休み時間に子どもたちから「タブレットを使って遊びたい」という声があったということですが、今は禁止しているということです。
その代わり、外遊びを積極的に行っています。

m231226_v2.jpg

その理由について校長の東城正充先生に伺うと、先生が赴任してきた2年前は目が悪い子どもたちが多く、全国平均を上回る結果だったということです。
先生は体育が専門ということもあり、体を動かすことで改善ができないかと考え、思いついたがのが「三神ストレッチ」でした。
その他にも取り組みをはじめて3年。
子どもたちの視力は、年々改善し、1.0未満の割合は2年前と比べて、ことしは10ポイント以上も減りました。
東城先生は「続けていることで、子どもたちが意識をして当たり前に気をつけるようになった。ほかにも外遊びを奨励したりとか、運動する習慣を行ったりとか総合的にやったことが今の結果につながっていると感じます」と話していました。

m231226_011.jpg

タブレットを使った授業は全国の学校でも行われていますし、宿題もタブレット端末でという学校も出てきています。
家庭でもこうした機器を使う機会が増えていることから注意点として文部科学省は
▼目と画面の距離を30センチ以上離す
▼30分に1回は画面から目を離し、20秒以上、遠くを見る
▼寝る1時間前からは使わない といったことを呼び掛けています。

<家庭でも対策を>

m231226_013.jpg

大手製薬会社が全国の小・中学生の保護者、およそ2200人に「子どもが目を悪くしないために行っていること」を聞きました。
「部屋などの明るさに注意する」や「スマホやタブレットを使う時間を決める」が上位となりました。
ただ、注目して頂きたいのが
「何もしていない」と答えた人が18.9%、およそ5人に1人にのぼったのです。
視力を低下させないために、ぜひ、先ほど紹介した3か条を実践してほしいと思います。
また、子どもたちに増えてきている「近視」ですがそうでない人と比べて大きな病気のリスクが高まると言われています。

m231226_016.jpg

イラストを使って説明していきます。
通常、眼球はピンポン玉のようにきれいな丸い形をしていますが、近視では眼球が後ろに伸びて、だ円のような形に変形しています。
眼球が伸びることで、本来網膜上で合うはずのピントが合わなくなってしまうため、物がぼやけて見えるのです。

m231226_017.jpg

日本眼科医会で学校保健の担当を務める丸山耕一理事は
「眼球が伸びると、視力が低下するだけでなく網膜や視神経にも負担がかかる。そのため緑内障や網膜はく離などの病気のリスクが高まる」と言います。
近視の原因としては「遺伝」と「環境」の2つが関係していると言われていますが
最近の研究では近視の進行を抑えるために「屋外活動」が効果的だと言われています。
理由として考えられているのが日光です。
週に11時間以上、屋外でないと実現が難しいと言われている明るさ、1000ルクス以上の光、つまり日光を浴びることで近視の発症が抑えられるといわれています。
ただ、紫外線を心配される方もいらっしゃると思いますので1日、2時間程度がよいということです。
子どもの近視の問題は日本だけでなく、海外でも深刻で、シンガポールや台湾の研究では1日、2時間程度の屋外活動をすることで改善の効果がでています。
丸山理事は「近視による視力低下は10歳前後から増えてくるので小学校低学年の頃から積極的に外遊びをしてほしい」と話しています。
寒いので外に出るのは億劫になりがちですが、せっかくの冬休みですので、天気が良い日には家族で公園などに出掛け、体を動かしてみてはいかがでしょうか。


この委員の記事一覧はこちら

木村 祥子  解説委員

こちらもオススメ!