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税制改正 くらしへの影響は?

今井 純子  解説委員

来年度の税制改正大綱と、一体となる給付などの制度の大枠が、きのうまとまりました。今井解説委員。

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【家計の負担を軽くする項目が、たくさん盛り込まれましたね】
そうなのです。きょうは、この中から
▼ 「定額減税」と「給付金」そして
▼ 「高校生がいる世帯への児童手当の拡充と扶養控除の見直し」
この2つを中心にみていきたいと思います。

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【まず、定額減税と給付金。どのような内容ですか?】
定額減税は、物価高への経済対策として打ち出されたもので、原則、納税者本人とその扶養家族を対象に、1人あたり所得税3万円と住民税1万円。あわせて年間4万円を減税する内容です。
▼ ただし、年収2000万円を超える人と、その扶養家族は対象からはずれます。

【これは1回限りですか?】
決まったのは、来年実施するということです。その上で、その先については、賃金・物価の状況を踏まえて、必要な時は、家計支援を検討する、ということが盛り込まれました。

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【1世帯でなく、1人4万円ですね】
そうです。例えば、大人2人とこども2人の4人世帯だと、ひとり4万円が4人分。あわせて16万円の減税になります。

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【そこまで税金を納めていない人は、どうなるのですか?】
はい。減税額が、自分が納めている税金より大きく、減税しきれない場合、その差額分が給付されます。給付は1万円単位で切り上げとなります。
▼ 例えば、3人を扶養していて、税金を年14万5000円納めている人の場合。14万5000円の減税に加えて、差額1万5000円。これを、切り上げて2万円が給付されます。減税分とあわせると16万5000円の恩恵ということになります。

【切り上げになるのですね。そもそも収入が少なくて、税金を納めていない場合は?】
まず、所得税は納めていないけれど、一定の住民税だけ納めている世帯。こちらは、1世帯あたり一律で10万円が給付されます。

【こちらは、1世帯あたりですね】
はい。ただ、所得が高い層の16万円と比べて、恩恵が少ない。ということで、18歳以下のこども1人あたり5万円が追加で給付されることになりました。こども2人で10万円。ぜんぶあわせると、20万円の給付になります。そして、
▼ 所得税も住民税も収めていない世帯。今年3月に決まった物価対策で、1世帯3万円が給付されていますが、加えて、新たに7万円を給付します。あわせると10万円。そして、こちらも、こども1人あたり、5万円が給付され、ぜんぶで20万円になります。

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【減税や給付は、いつ実施されるのですか?】
減税については、来年の所得が対象となります。会社員などの場合、毎月支払われる給与から、税金分を納めています。それが、来年6月分、本来納める税金の額から減税分が引かれ、その分、手取りが増えることになります。6月だけでは引ききれない場合は、7月、8月と、減税していくことになります。自営業やフリーランスは、再来年の確定申告などの段階で、減税分が差し引かれます。

【給付は?】
給付は2022年の所得で判断します。
▼ 10万円の給付、さらに、こども1人5万円の給付については、自治体によりますが、来年2月から3月にかけて給付開始をめざすとしています。
▼ そして、減税で対応できない差額分については、準備に時間がかかるため、その後の給付になる可能性があります。
▼ 一方、非課税世帯への7万円の給付については、早い自治体では、年内から給付が始まる見通しです。

【時期がばらばらですね。待っていればもらえるのでしょうか?】
原則、自治体からお知らせが届いて、必要な場合、そのお知らせに従って振り込み口座など、申請の手続きを行うことになります。オンラインで申請できる自治体もあるということです。

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【手続きが必要な場合もあるのですね。次に、高校生がいる世帯への児童手当拡充と扶養控除の見直し。これは、どのような内容ですか?】
来年度から、これまで中学生までとなっていた児童手当の対象が、18歳までの高校生などに拡大されます。所得制限はなく、原則、こども1人あたり、年12万円が支給されることになります。最初の支給は来年12月で、2か月ごとに、2か月分ずつ、支給されます。
一方、それに伴い、こうした世代を扶養している人の所得税と住民税の税金の負担を軽くしてきた扶養控除が引き下げられます。控除が少なくなるということは、税金の負担が増える。つまり、増税となる方針が盛り込まれました。
具体的には、今、所得税は課税対象から年間38万円。住民税は33万円を差し引くことができる、その額を、それぞれ25万円と12万円にする案をもとに、来年結論を出すとしています。その上で所得税は2026年分から、住民税は27年度分から適用される予定です。

【増税だと、手当をもらっても、負担が増えることになりませんか?】
それは心配ないということです。こちらは、夫婦どちらかが働いていて、高校生のこどもが1人いる世帯について、新たに児童手当が支給される額から、税金の負担が増える分を差し引いた。つまり、手取りがどれだけふれるのか、という試算です。

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案の通りだと、例えば給与収入が
▼ 240万円以下の場合、もともと税の負担はありませんでしたので、手当ての分、年間12万円手取りが増えます。
▼ 558万円以下の場合、手当ての12万円から、税金が増える分を差し引いて、9万2000円。
▼ 752万円以下は、8万6000円。手取りが増えることになります。
収入が多い世帯ほど、手取りが増える額は少なくなりますが、それでも、教育にかかる費用が多い年代であることに配慮して、すべての所得層で手取りが増える仕組みになっています。

【高校生がいる世帯にとっては、ありがたいですね】
子育て世帯を支援する税制としては、他にも、「住宅ローン減税」や「生命保険の控除」があります。
まず、住宅ローン減税。来年から減税の対象となる借り入れ額の上限が引き下げられ、負担が増えることになっていますが、
▼ 18歳以下の子どもがいる世帯や、
▼ 夫婦のどちらかが39歳以下の世帯については、
上限の引き下げを見送り、今のまま据え置くことにしました。負担を増やさないことで、若い世代の住宅取得を後押ししようという狙いです。

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【住宅の価格が上がっていますので、住宅の購入を検討している人にとっては、ありがたいですね】
さらに、家族の死亡や病気にそなえて支払っている、生命保険の保険料の一部を、所得税の課税対象から差し引く生命保険料の控除。
▼ 22歳以下のこどもを扶養している世帯を対象に、
差し引ける額を今の4万円から6万円に拡大する方針が盛り込まれました。控除を増やすということは、税金の負担の軽減につながるということで、来年、正式に決定する方針です。

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【盛りだくさんですね】
物価が上がっている中、ありがたい面はありますが、
▼ 結局、国債の発行額が増え、財政を一段と悪化させるのではないか。人気取りのバラマキではないか。
▼ 子育て支援を拡充すると言いながら、税金の負担が増えるなど、狙いが複雑でわかりにくい。さらに、
▼ 特定の業界に向けた補助ではないか、といった声もあがっています。
政府は、来年の通常国会に、税制改正に関する法案を提出することにしています。国会の審議を通じて、なぜ、こうした対策が必要なのか。財政をどう立て直すのか。丁寧に、そして真摯に説明をしていってほしいと思います。


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