岸田政権は発足から丸2年経ったが支持低迷が続いている。年内衆院解散の可能性は?新たな経済対策の効果と期待は?最新のNHK世論調査から探る。
【政権発足2年】
10月の内閣支持率は9月と変わらず36%。「支持しない」は、1ポイント増えて44%。支持と不支持が逆転するのは4か月連続だ。内閣発足から2年が経ち支持率は当初の49%から13ポイント下げたことになる。
9月には内閣改造があり、これまで人事直後は支持が上向くことが多かったが今回、政権の浮揚にはつながらなかった。
岸田首相は19人の閣僚のうち過去最多に並ぶ5人の女性を大臣に起用した一方で、副大臣と政務官には起用しなかったのを「妥当だ」という人は11%にすぎず、「妥当ではない」は26%、「どちらともいえない」は58%だった。自民党所属の女性国会議員の割合がおよそ12%にとどまるなかで、岸田首相は「適材適所」としているが、与党支持層でも20%が「妥当ではない」としているのは首相にとって誤算だろう。
この2年間の内閣支持率を整理すると、前半と後半で世論の風向きは大きく変わった。最初の1年弱は、支持率はおおむね50%台を維持するなど好調で、政権発足直後の衆議院選挙で与党は大勝した。翌年7月の参議院選挙にも勝利をおさめ、この時支持率は岸田内閣で最も高い59%まで上昇した。しかし後半は不支持が支持を上回る時期が多くなる。参院選期間中に起きた安倍元首相の銃撃事件をきっかけに、旧統一教会と自民党議員との関係が明らかになったほか、政治とカネの問題などもあり、去年11月とことし1月に最低の33%に急落した。その後支持率は持ち直し、G7広島サミットが開催されたことし5月には46%にまで回復したが、マイナカードをめぐる一連の問題などで再び過去最低の水準にまで減少し、今も低迷が続いている。
内閣のこれまでを国民はどう見ているのだろうか。2年間の取り組みを「評価する」と答えた人は、「大いに」「ある程度」あわせて40%、「評価しない」は「あまり」「まったく」あわせて54%と見方が分かれている。
これまで、防衛力の強化や少子化対策、そしてウクライナ支援などに重点的に力を注いできた岸田内閣だが、「支持しない理由」として最も多いのは「政策に期待が持てない」で、10月は56%と政権発足以来最も高く、5人に1人が「実行力がない」とも答えている。
支持率の今後のカギを握るのが景気、経済の動向だ。岸田内閣が最優先で取り組むべきことを、6つの選択肢から1つ選んでもらった結果、「物価高対策を含む経済対策」を望む意見が50%と圧倒的だったことからもわかる。物価高に終わりが見えず、実質賃金も17か月連続で目減りしている現状への国民の不満の表れといえる。首相自身「国民が物価高に苦しんでいる」と認めており、10月取りまとめる新たな経済対策で、効果的な対策をどこまで示せるかが問われている。
【新たな経済対策】
岸田首相はあらたな経済対策の5本柱として「物価高対策」「持続的な賃上げ」「国内投資の促進」といった喫緊の課題のほか、「人口減少対策」「国土強じん化」といった中長期的なテーマもあげている。この対策の効果に期待しているかどうか聞いたところ、「期待している」という人は「大いに」「ある程度」あわせて38%。「期待していない」は「あまり」「まったく」あわせて57%だった。
このうち「物価高対策」のポイントとなるのは、すでに年末までの継続が決まっているガソリン価格や電気・都市ガスの料金の補助金をいつまで続けるのか。生活の下支えとはいえ、市場価格をゆがめ、地球温暖化対策にも逆行するとの指摘も根強い。またことしの春闘での賃上げ率は3%を超えおよそ30年ぶりの高い水準となったが、賃上げは企業業績に左右されるだけに、税制支援なども含めこの流れを一時的なものに終わらせない取り組みが重要だ。
そして中身とともに、政府与党内で議論となっているのが対策実現の裏付けとなる補正予算案の規模だ。政府与党内では、「少なくとも15兆円、できれば20兆円規模が必要」などと大規模な財政出動を求める声がある一方で、財政規律もしっかり考慮すべきだとの意見も根強くある。国の財政状況に不安を「感じている」という人は「大いに」「ある程度」あわせて75%に上る一方で、「感じていない」は「あまり」「まったく」あわせて19%にとどまった。補正予算は過去3年間、新型コロナ対策もあって30兆から多い年で70兆円の大型の予算編成が続き、防衛費の増額や、少子化対策のための財源確保もこれからだ。政府の方針通り歳出を平時に戻していくためにも、真に効果的な政策に絞り込み、規模ありきの対策は避けるべきだろう。
【衆院解散は】
今後の政治の行方について考える。
政界では、岸田首相が年内、つまり20日召集される臨時国会のどこかで衆議院の解散を考えているのではないかという憶測がなかなか消えない。こうした中で首相が経済対策を指示した際、「今こそ成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」と述べたことで、与党内では所得税などの「減税」の是非を国民に問うことが解散の大義になると、支持する声も上がっている。これに対し、野党側は「減税を喜ばない人はなく、争点になるのか」などと警戒を強めている。
解散の可能性を考える上でおさえるべきひとつは政党支持率だ。自民党は9月より増加し、野党各党に差もつけているが、実は政権発足時からは5ポイント減らしている。また補正予算案を臨時国会で成立させるとなると、年内に解散総選挙を行うことは日程的にかなり窮屈なことは確かだ。一方で来年の政治状況を今から見通すことは難しく、野党の選挙態勢が整わないうちに仕掛けるほうが有利だとの声も与党内にはある。
「先送りできない課題にひとつひとつ取り組んでいくことに尽きる」「今、解散のことは考えていない」。ここ最近、岸田首相は繰り返すが、内閣、政党の支持率の行方に加え、経済対策への国民の評価。さらに与野党がいま、総力戦を展開している衆参の2つの補欠選挙の結果も、首相の解散戦略を大きく左右するとみられる。
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