新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、2023年5月8日、「5類」に移行されました。これによって、法律に基づく行動制限などが出されなくなりました。
そこで今回は、「新型コロナ5類移行、何が変わった? どうする個人の判断」というテーマでお伝えします。
◇5類になって新規感染者の発表は、どうなる?
5月17日現在、5類になって、1週間余りが経ちました。変わった点の一つに、毎日の感染者数の発表がなくなったことがあります。
5月8日より前の「2類相当」のときは、感染者はすべて報告されていて(全数把握)、その数が毎日、厚生労働省から公表されていました。しかし、5類になったことで、その報告がなくなりました。
かわりに、インフルエンザのように全国のおよそ5000の医療機関が感染者数を報告することになっています。
1週間の感染者数が、次の金曜日に発表されることになります。5月8日(月)から14日(日)の1週間の感染者数は、5月19日(金)に発表されます。19日が5類になって最初の感染者数の公表になります。
毎日発表されていたときと、だいぶ変わります。データの把握・分析が遅れます。感染者の一部しか把握できません。その数から全体の感染状況を判断することになります。
死亡者数についても、推定の人数が、遅れて発表されることになります。
こうした方法で、感染状況は十分把握できるのか、課題として指摘されています。政府は、抗体を持っている人の割合の調査(抗体保有率調査)など、様々なデータを組み合わせて、感染状況を把握したいとしています。
仮に、感染拡大が心配される状況になったときは、政府や自治体から「注意」や「警戒」を呼びかけるメッセージが出されることが考えられます。
感染状況の把握に時間がかかると、特に急激な感染拡大の時に、対応が後手になる恐れがあります。私たちは、そうした急拡大を起さないように意識して日常の感染対策を進めることが一層重要になっていると思います。
◇マスク着用など感染対策を、どう考える?
マスク着用については、5類移行に先立って、2023年3月13日に考え方が見直されました。5類移行後も、3月13日のときと、考え方は変わっていません。
政府は「個人の判断」を基本としています。
その上で、マスク着用が効果的な場面として、
▽医療機関や高齢者施設を訪れるときや、
▽通勤ラッシュの時間帯に鉄道やバスに乗るときなどを示しています。
高齢者や基礎疾患のある人、つまり新型コロナの重症化リスクの高い人たちを守る行動が大切だという点は、忘れないでほしいと思います。
また、「手洗い」や「換気」も引き続き感染対策には有効ですので、続けることが大切になります。今後、夏に向けて暑い日に冷房を使う機会が増えますが、引き続き、十分換気を行うよう注意してほしいと思います。
こうした基本的な対策の重要性は、5類になっても変わらないと思います。
◇感染がわかったとき、どうする?
5類に移行後は、法律に基づく外出自粛は求められません。また、入院勧告などもなくなります。感染したとき、外出をどうするかも「個人の判断」となります。
具体的にどのように行動したらよいのか、厚生労働省は判断の目安を示しています。
発症の翌日から数えて5日間は、周囲の人に感染させるリスクが高いとされています。
このため、
▽発症後5日間は外出をひかえること。
▽なおかつ、症状が良くなってから24時間程度は外出をひかえて様子を見ること、
▽その上で、ウイルスを周囲に出す可能性がある10日間が経過するまでは、マスクを着用し、高齢者など重症化リスクの高い人との接触をひかえるなど、周囲への配慮が大切です。
◇同居家族が感染したとき、どうする?
5類になると、保健所から「濃厚接触者」として特定されることはなくなります。どう行動するか、こちらもいわば「個人の判断」になります。
感染した家族の発症から7日間は発症する可能性があります。外出するときは、人ごみを避け、マスクを着用することが大切になります。高齢者などとの接触をひかえるといったリスクを低く抑える行動をするよう心掛ける必要があります。
◇医療機関は、どこに行く?
2類相当のときは、感染者の受け入れは一部の医療機関が行っていました。5類に移行された後は、広く受け入れられるようになります。
ただ、まだインフルエンザと同様の数には、なっていません。受け入れ可能な医療機関は、自治体のホームページで調べることができます。各地域に「受診・相談センター」など相談窓口が、引き続き設置されていますので、利用してみるのも方法です。
医療費は、これまで公費負担でしたが、5類移行後は、自己負担が生じます。高額の治療薬などについては、しばらく公費負担が継続されます。
◇今後のワクチン接種は、どうなる?
新型コロナのワクチン接種は、5類になっても引き続き自己負担なしで受けられます。
高齢者や基礎疾患のある人、それに医療従事者などには、5月8日以降、新たにワクチン接種が始まっています。(「令和5年春開始接種」と呼ばれています)これが、6回目の接種になる人もいます。
その後、9月をめどに、すべての接種対象者について接種が開始される予定です。(「令和5年秋開始接種」)
◇ワクチン接種の必要性は?
これだけ感染者が少なくなっても、ワクチン接種は必要なのでしょうか。
感染者が少ないのは、第8波などで感染した人たちと、ワクチンを接種した人たちの免疫などによって、感染が抑えられていると考えられています。
ただ、この状況がずっと続くわけではありません。時間の経過とともに、免疫が弱まってきます。ここが、新型コロナ対策の「難しい」ところです。過去を見ても、大型連休のあと、感染者が増えて、夏に感染のピークができ、さらに冬にピークができるということを繰り返してきました。
このあと、第9波のピークが夏に来るのか、冬なのかはわかりませんが、「再び感染は拡大する」と専門家は指摘しています。
さらに、「変異ウイルス」にも警戒が必要です。死亡、あるいは重症になる割合が高い変異ウイルスが出現すると、対策を大きく見直さなければならなくなります。世界各国で、ウイルスの変異を監視しているのが現状です。
日本では、第6波、7波、8波など感染拡大のたびに、医療ひっ迫などで社会が混乱しました。ひとり一人の判断による感染対策などを積み上げて、第9波を小さな波に抑えることが、生活をコロナ前に近づけるために大切です。
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