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北海道のゴーカート事故を受けて注意喚起 子どものカート事故を防ぐための安全対策はどうなっているのか解説します

水野 倫之  解説委員

きょうのテーマは子どものカート事故。
今年9月、北海道の体験イベントで子どもが運転するカートに巻き込まれた男の子が死亡した事故を受け、消費者庁などが子どもがイベント会場で乗り物で遊ぶ際の注意点を呼び掛けている。水野倫之解説委員の解説。

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北海道の事故は痛ましい事故だったが現在も警察による捜査が続いている。
事故は今年9月、北海道森町で、子どもを対象としたモータースポーツの体験イベントで起きた。
駐車場に設けられた1周200mのコースで、小学校高学年の子どもが運転するカートがコース外に突っ込み、巻き込まれた2歳の男の子が死亡、2人の子どもがけが。

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この体験イベントのためにつくられた仮設のコースと見学者の間には、樹脂製の三角コーンでつくられた仕切りがあったが、防護ブロックなどは設置されていなかった。
警察ではイベントの主催者側が、事故を予防するために必要な対策をとっていたかどうか、業務上過失致死傷の疑いで調べている。
こうしたカート、むき出しのフレームやエンジンが特徴で、遊園地にある速度を抑えたゴーカートからレースに使われる高速のレーシングカートなど様々なタイプがあり、目線が地面に近く体感スピードが速いことから人気。
今回事故を起こしたカートは時速60キロ出せる性能があり、当時は40キロ程度のスピードが出ていたとみられる。
そんなにスピードを出せるものを仮設のコースで、こどもが運転できるのはなぜか。

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国土交通省や消費者庁によると、こうしたカートは公道で使用する車両ではないため、道路交通法による速度規制など国が定める安全規制や基準はない。
なので免許がない子どもでも運転できるわけ。
また遊園地のジェットコースターのような施設であれば遊戯施設として、建築基準法で安全管理基準が定められているが、仮設のコースについては規制や基準はなく、今回も事故現場とコースとの間を仕切っていたのは三角コーンだけだった。
つまり公道ではない場所でのイベントで、カートの走行を規制する法令はなく、安全対策が開催者任せになっている、ここが一番の問題。

事故から2か月半たった先週、関係団体と消費者庁で動きがあった。
まずJAF・日本自動車連盟が、カートの体験イベントでの自主的な安全対策の骨子をまとめた。
JAFは国内のF1などのモータースポーツの大会を管轄する団体で、各競技の安全基準を定めている。今回国からの要請もあり、カートの体験イベントでの安全基準を検討していた。

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まとまった骨子によると、
▽まずコースについては、乗り物が制御不能になった際に見学者に衝突しないよう防護体を設置することを求めている。
具体的にはコンクリート製のブロックやガードレール、衝撃吸収効果があるタイヤなどが推奨されると。
また見学者の区画は、カートの進行方向に対面する場所には設置せず、進行方向の横に設置するよう求めている。
▽次に子どもが乗るカートについては、速度に一定の制限があるものに限定すること、さらに乗る前にアクセルやブレーキの操作について動画などで説明することなどを求めており、今後乗り物イベントの関係団体へ周知されるということ。

また消費者庁は、カートに限らずイベントなどで子どもが乗り物を運転する際の、保護者への注意喚起をした。

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イベント会場などで起きた、カートや電動の立ち乗りの2輪車、それにバイクやバギーなどの事故は2009年から今年11月まで、30件報告されているが、35人がけがをし、うち19人が10代以下と、やはり子どもに多く発生しているという。
実際に起きた事故では、中学生がゴーカートでカーブを曲がり切れず壁に激突したり、幼児のゴーカートがコースを外れて分離帯に衝突するケースなどがあり、子どものけがの半数近くが重傷だということ。

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消費者庁ではまず、事前に乗り物の管理状況や施設の安全対策を確認することを呼びかけています。
具体的には運転前の安全講習があるか、乗り物や設備の点検をしているか、さらに運転エリアと観覧エリアが分離されているかなどについて、事前にWEBサイトや開催者に直接問い合わせて確認することが重要だと。
また現地で遊ぶ前にも、運転前の安全講習を子どもが正しく理解したか確認することも必要だと。
そこまでやらなければと思うかもしれないが、子どもが事故を起こして被害者が出れば、保護者が責任を問われるケースもある、それを忘れてはならない。
もちろん、子ども自身の安全も重要で、ヘルメットやシートベルトを正しく着用しているかの確認も必要だし、服装についても肌が露出しないよう、長袖長ズボン、靴もつま先まで覆われたものをはく。
またカートはタイヤが露出しているタイプが多いため、これからの季節、マフラーをしていると巻き込まれて窒息するおそれもある事から乗る前に外してあげる。

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このようにようやく安全対策の動きは出てきてはいるが、あくまで自主的な規制や注意喚起にとどまっていて、安全対策が開催者任せであることについての抜本的な対策は打ち出されていない。
事故は国会でも取り上げられ、政府側は、何らかの法規制について問われたのに対し、「刑法の業務上過失致死傷罪の処罰の対象となっており、必要な法制度は設けられている」との見解。
しかし、こうした事故が起きるたびに処罰を科すやり方だけでなく、事故を予防するための法令や規制とセットでなければ、同じような事故を根絶することは難しいと思う。
事故を受けて地元自治体からも、イベントでのカートなどについて定期的な安全点検を義務化することや、衝突回避や自動停止といった事故を未然に防ぐ機能の搭載の要望が国に出されている。
警察の捜査だけでなく、国としても今回の事故の原因と背景を究明し、レジャーの場で二度と子どもが被害者となることがないよう、また事故を起こして心に傷が残る子どもが出ることもないよう、事故の予防対策の検討を急がなければならない。


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