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ドローンの規制緩和 くらしへの影響は?

今井 純子  解説委員

きのう(5日)、ドローンについての規制が一部、緩和されました。くらしにどのような影響があるのでしょうか。

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【ドローンの規制。どのように緩和されたのですか?】
はい。改正航空法が施行され、一定の条件のもとで、ドローンが「一般の人がいる上空」を飛べるようになりました。

【これまで、人の上は飛べなかったのですか?】
そうなのです。ドローンには、様々な規制がありますが、その一つとして、落ちて、人にあたる心配があることから、
▼ これまでは人口が集中している地域だけでなく、離島や山間部など人が多くない地域でも、関係者以外の、一般の人や走っている車の上は飛ぶことが認められていませんでした。

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それが、きのうから、一定の条件のもと、飛べるようになったのです。このドローン、これまでは、撮影用とか、インフラの点検などに多く使われていましたが、今回の規制緩和をにらんで、このところ物流の取り組みが注目されています。

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【物流ですか?】
▼ 例えば、セブンーイレブン・ジャパンとANAホールディングスは、共同で、福岡県の離島や東京の郊外など、コンビニのない地域に住む住民が、ネットで注文した商品を、店の駐車場などから、ドローンで届ける実証実験を進めています。自動走行で飛んで、おでんやコーヒー、アイスなども、こぼさず熱いうちに、あるいは、溶けないうちに届けることができるとしており、2025年度に、まずは、離島地域での事業化をめざしたいとしています。

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▼ また、セイノ―ホールディングスとドローンのベンチャー企業エアロネクストは、山梨県や北海道などの人口減少が進んでいる地域で、スーパーや地域の商店などでの買い物代行や牛丼などの宅配、他の物流事業者との共同配送などに取り組んでいます。ドローンで、5キログラムまでの荷物を運ぶことができ、集落の中にあるドローンポートと呼ばれる発着場所や個人の家の庭などに、置き配をする形です。トラックでの配送と組み合わせることで、ドローンが飛べない気象の日でも着実に荷物を届ける、いわゆる「ラストワンマイル」を担う手段の1つという考えで、順次、有料のサービスとしての事業化に踏み切っています。

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【店が少ない地域では、助かるという方もいらっしゃるでしょうね】
はい。路線バスが廃止になったり、冬、雪に閉ざされたりする地域も多い中、高齢化が進んで、日常の買い物に困る人が増えています。こうした地域では、欲しいものを、頼んだらすぐに届けてくれるドローン配送への期待は高いと言います。
そして、事業者からみても、人が少ない地域にトラックでわずかな荷物を運ぶには、時間もコストもかかります。人手不足で運転手を確保するのも難しい状況になっている中、ドローンで運べるようになると、全体としてコスト削減につながったり、商圏が広がったりする。そんな期待があるのです。

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【事業者も助かるのですね】
そうなのです。ただ、これまでは、人や走っている車がいる上空は飛べませんでしたので、例えば、
▼ ルートを直線ではなく、川や海の上を飛ぶようにう回させる。とか、
▼ 交通量が比較的多い道路を横切るときには、監視のための人を配置して、歩行者や車がきたら、離れた場所にいる操縦者に連絡をして、ドローンをいったん停止させ、歩行者や車が通り過ぎてから横切るようにする。
▼ また、店が住宅街にある場合、注文を受けた商品を、まず、人がいない港などに車で運び、そこからドローンに載せて飛ばすなど、手間やコストがかかっていました。

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【それが、今回の規制緩和で、人の上空を飛ばせるようになったのですね】
飛べるようになります。ただ、すぐにではありません。今回、規制緩和とあわせて、新たに、機体の安全性を証明する「機体認証」。そして、操縦者の「ライセンス」(=国家資格)の制度ができました。人の上空を飛べる機体とその操縦者は、厳しい安全基準、難しい操縦技能と知識が求められる一種・一等をそれぞれ取得することが義務付けられました。
その手続きがきのうから始まり、早ければ、来年春くらいから、まずは、離島や山間部など人が少ない地域で。そして、その後、徐々に人口が集中している地域で。(原則、一回ごとに国の許可や承認が必要で、安全性を確認しながらになりますが)、人がいる上空を飛ばすことが認められることになります。

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そうなると、
▼ 最短ルートで飛ばせるようになったり、
▼ 監視のための人の配置が必要なくなったりします。また、
▼ 住宅街にある店からでも、直接、ドローンを飛ばせるようになり、
コストが減って、配送料も安く抑えられることでサービスが広がる。そんな期待があるのです。

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▼ さらに、サービスの可能性が広がることで、産業のすそ野が広がることも期待されています。

【産業のすそ野ですか?】
はい。ドローンはもともと海外製が多い。でも、物流での利用が広がることを見越して、日本企業も次々、機体や部品の製造に参入しています。また、ライセンスをとるためのドローンスクール。運航の管理、メンテナンス、保険などの事業に乗り出す企業も増えています。国内のドローンビジネスの市場は、2027年度には、およそ8000億円と、6年で3.4倍に拡大するという予測もあります。

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【店が少ない地域では便利かもしれませんが、都市部でも、上空をドローンが飛び交うようになるのですか?】
制度的には、その方向で進みます。ただ、実際、大都市でドローンが飛び交うようになるのかというと、慎重な見方も多くあります。安全や社会の理解という点で、まだ課題があるからです。

【課題ですか】
はい。まず、安全面ですが、今、ドローンが落下するケースは、少なくとも年間100件程度国に報告があります。多くは操縦ミスです。今回、機体の認証や操縦者のライセンスの制度ができて、安全性の規制は厳しくなりますが、それでも、人が多く行き交う場所で、落下したり、荷物を落としたりするようなことは許されません。まだ、ハードルが高いと言います。
また、ドローンでも騒音はあります。カメラがついているので、プライバシーの問題もあります。都市部の上空をドローンが飛び交うことに、社会の理解を得るのはなかなか難しいとみられています。

【確かに、心配はありますね】
事業者の中でも、こうした慎重な見方があります。加えて、そもそも、都市部では、車やバイク、将来的には、無人ロボットなど、様々な配送の選択肢があって、こちらの方がコストが安い。このため、大都市をドローンが飛べるようになったとしても、当面は、医薬品の輸送や、災害時など、緊急性が高いところにとどまるのではないか、という見方もあるのです。

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【人口が少ない地域でも、自分の頭の上や自宅の上は飛んでほしくないという方もいるでしょうね】
そうですね。制度上、住宅街の上を飛べるようになっても、自治体と連携して、地域の人たちに丁寧に説明をして、理解や賛同を得ていくことは、今後も欠かせないと思います。

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ぜひ、飛行の安全性を高めるとともに、社会の理解を得ながら丁寧に取り組みを進めていってほしいと思います。


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