NHK 解説委員室

これまでの解説記事

生後6か月~4歳の新型コロナワクチン 効果・副反応は?

矢島 ゆき子  解説委員

m221109_002.jpg

新型コロナのオミクロン株の流行で、子どもの感染者が増えました。小さな子どもは、マスク着用などが難しく、感染させないためにも、これまでは、周囲の大人のワクチン接種・感染対策が大切でしたが、10月24日以降、4歳以下の新型コロナワクチン接種がはじまりました。

◆どんなワクチン?回数・有効成分の量・接種間隔

m221109_009.jpg

自治体によっては、すでに接種がはじまっている4歳以下の子どもを対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種。このワクチンは、生後6か月から接種できます。接種するのは、ファイザーのmRNAワクチンで、3回接種することになります。回数はすでに接種がはじまっている5歳~11歳用のワクチンより多いのですが、1回あたりに接種するワクチンの有効成分の量は、同じファイザーの12歳以上の大人用と比べると10分の1、そして5歳~11歳用と比べると10分の3と少なく、それを合計3回接種します。そして、接種間隔も決まっていて、例えば、11月9日に新型コロナワクチンの1回目を接種した場合、2回目の接種は、基本、3週間はあけて11月30日に、そして、3回目接種は、さらに8週間以上あけるので、来年1月25日以降ということになります。もし、1回目接種から3週間あけて接種できなくても、8週間以内であれば効果はあるそうです。また、3回の接種終了まで時間がかかるので、もしかしたら、途中で、5歳になる子どもさんもいるかもしれませんが、その場合も、4歳以下用のワクチンの3回接種を完了させることが大切になります。

◆新型コロナワクチンの効果は?

m221109_013.jpg

臨床試験では、ワクチン接種したグループと、偽薬、つまりワクチンではなく無害な生理食塩水を接種したグループで、オミクロン株での効果を比較しています。調べてみると、3回目の接種をしてから、7日以降の発症予防効果が、73.2%ありました。ただ注意が必要なのは、このワクチンは、初期に流行した従来株をもとに作ったワクチンなので、2回の接種ではオミクロン株への効果は低く、そして長く続かなかったことです。あくまでも3回接種することでオミクロン株に対し効果があったのです。

◆新型コロナワクチンの副反応は?

m221109_020.jpg

副反応はどうなのでしょうか?例えば、生後6か月~23か月の子どもの、1回目接種後の主な副反応としては、38度以上の発熱が7.2%、注射部位の痛みが16.6%、食欲減退が22.2%、眠たくなる27.0%、機嫌が悪い51.2%などがありました。また2歳~4歳では、発熱が5.2%、注射部位の痛みが30.8%、頭痛が4.5%、けん怠感が29.7%などです。
これらの症状が現れる頻度は、2回目、さらに3回目の接種と進むと、少し減ることがあるようです。そして、これらの副反応は、種類によっては、ワクチン接種のグループだけでなく、生理食塩水を接種したグループでも同程度ありました。これは副反応とされる症状が、実は、ワクチンでなくても起こることがあるのです。
また、重大な副反応としては、まれな強いアレルギー反応・アナフィラキシー、さらにごくまれな心筋炎・心膜炎に注意するようにと言われています。
埼玉県立小児医療センター岡明院長にお話しを伺ったところ、「副反応の頻度は、接種するワクチンの有効成分量が少ないこともあり、大人あるいは5歳以上の子どものワクチンでの副反応の頻度と同等か低い。自分が接種後の発熱などでつらかったので、子どもへの接種をためらっている保護者も多いと思う。もちろん副反応は出ることもあるが、偽薬と比べ、発熱の頻度に差がなかったのは朗報だ」とのことでした。

◆「努力義務」・日本小児科学会の「推奨」

m221109_027.jpg

4歳以下のワクチン接種は、5歳~11歳向けと同様、子どもが接種するように、保護者が努めなければならない「努力義務」になっています。これは強制されたり、罰則があるわけではなく、接種するかどうか保護者などが自分たちで決めることということです。そして、日本小児科学会は、持病の有無にかかわらず、すべての生後6か月以上4歳以下の子どもの新型コロナワクチン接種を「推奨」するとの考え方を示しています。これは、オミクロン株でのワクチンの効果・安全性が認められたこと、そして、感染した子どものほとんどは軽症だが、持病などがないのに重症化して亡くなっている子どももいるからです。例えば、今年のある調査では、新型コロナ感染で死亡した20歳未満の29人中、半分近くの14人が4歳以下で、そのうちの6人は持病がありませんでした。
日本小児科学会理事でもある新潟大学・齋藤昭彦教授は、「オミクロン株で子どもの感染者が増え、持病のない子どもでも重症化することがあるが、臨床試験で発症予防効果が確認されたので、重症化予防効果も十分期待できる。接種するメリットがデメリットを上回る」と話されていました。

◆新型コロナワクチン 他の予防接種とのスケジュールは?

m221109_image6_.png

様々な病気の予防接種は、生後2か月から順次、始まります。新型コロナワクチン接種は生後6か月からです。
例えば、1歳になった時点での予防接種を見てみると、ヒブ、肺炎球菌、四種混合や、はしか・風しんの混合、水ぼうそう、おたふくかぜの6つがあります。新型コロナのワクチン接種をする場合、これらの予防接種も含め、どういうスケジュールで接種したらよいのでしょうか?

齋藤教授に確認したところ、下記のようなポイントを挙げられていました。
●基本的には予定通り、これらの6つの予防接種を受ける
●新型コロナのワクチン接種は、これらの予防接種の前後にできるか検討
●そして、新型コロナのワクチン接種の際、インフルエンザワクチンと同時接種することも検討

「予防接種の前後」というのは、例えば、ある予防接種の予定が決まっていたら、その2週間前に、新型コロナのワクチン接種できるかどうか、それがダメなら、2週間あけた後に、ワクチン接種ができるのかを検討してみるということです。ただ、子どもの年齢などによっても、状況が違うので、主治医に相談しながら「新型コロナのワクチン接種」のスケジュールを検討するといいかもしれません。

◆接種当日に注意すべきことは?

m221109_039.jpg

ワクチンは筋肉に注射します。2歳以上は肩の筋肉への注射が基本。1歳未満は太ももです。1歳から2歳までは肩と太もも、どちらもあります。ですから、接種当日は、肩、あるいは太ももを出せる服装にしましょう。
そして、必ず「母子健康手帳」を持参しましょう。他の予防接種との接種間隔の確認できますし、子どもの予防接種履歴の管理のためにも、新型コロナワクチンの接種日を記入しておくと便利かもしれません。

最近、新型コロナの感染者が増えています。今後、第8波がどうなるのかわかりませんし、インフルエンザとの同時流行も心配されています。今年は、子ども同士での感染、どこで感染したのかわからないケースも増えましたので、今後も注意が必要です。
小さなお子さんの場合、マスクをきちんと着用したり、自分で手洗いするといった感染対策が難しいので、ワクチンは有効な予防策かもしれません。番組でご紹介した、ワクチンに関する効果・副反応の情報なども参考に、接種するかどうかについて、是非、検討をしていただけたらと思います。

◆5歳~11歳の新型コロナワクチンについてはこちら
「5~11歳の子どもの新型コロナワクチン接種」(みみより!くらし解説)

◆大人用の新型コロナワクチン・mRNAワクチンについてはこちら
「新型コロナワクチン 効果と副反応は?」(みみより!くらし解説)

◆新型コロナとインフルエンザの同時流行・ワクチンの同時接種についてはこちら
「今年はどうなる?インフルエンザに備える」(みみより!くらし解説)


この委員の記事一覧はこちら

矢島 ゆき子  解説委員

こちらもオススメ!