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7割が疲れ目? アイケアの実践を!

牛田 正史  解説委員

実は今、大人の7割が目の疲れを感じているといいます。
生活スタイルの変化によって目に関する様々なリスクが高まっています。
これをケアするにはどうすれば良いのか。牛田正史解説委員がお伝えします。

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7割が疲れ目を感じるという今回の調査、大変深刻な数字だと思います。
調査は眼科医などのグループがことし7月に行いました。

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30代から50代の500人に聞いたところ、目の疲れを毎日感じる人が約29%、 週に1日以上感じる人が46%いて、あわせると約75%にのぼりました。
また、小学校高学年の子どもでは、目の疲れを感じている子が、あわせて約36%いました。
これについて日本角膜学会の理事長で、杏林大学医学部の山田昌和教授は「デジタル社会の進展やコロナ禍による生活スタイルの変化が、目のリスクを高めている」と指摘しています。
これ、具体的にいうと、パソコンやスマホ、タブレットを操作するVDT作業の時間が増えたことが大きいんです。
各メディアの利用時間をまとめた調査では、パソコンやスマホなどのVDTの利用時間は、8年前と比べて、約1.6倍に増えています。
特にスマートフォンは急激に伸びています。
特にコロナ以降に利用が大きく増えています。外出の機会が減ったり、テレワークが拡大した影響が大きいと見られます。

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このVDT作業は場合によって目に悪影響を及ぼします。
まずは「目の疲れ」です。
パソコンやスマホを使う時は、集中して画面を見続けますし、画面と目の距離も近くなります。
そうしますと、目の毛様体筋という、ピントを調整する機能があるんですが、そこが緊張したり疲労したりします。
深刻な場合、視力の低下につながるおそれもあります。
そして、もう1つ「目の渇き」が起きることもあります。
実は画面を集中して見続けると、まばたきの回数が普段より4分の1に減ってしまうというデータがあるんです。
まばたきが減ると、ドライアイになるリスクが高まります。
このドライアイは、目を覆う涙の層が薄くなったり乾いたりします。
すると、目の表面にある角膜に傷が出来ることもあるんです。
こちらの写真ですが、白い部分はその傷になります。
こうした傷があると、目がゴロゴロしたりかすんだりします。
時には強い痛みを感じ、お子さんですと近視になる可能性も考えられるそうです。

「目の疲れ」や「目の渇き」には十分に気を付けてもらいたいと思いますが、具体的に何をしたら良いのでしょうか。
まずは、自分の目の状態をきちんと把握することが大切です。
そこで是非、試してもらいたいテストがあります。

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それが「まばたきテスト」です。
これは疲れ目やドライアイになりやすいかどうかを調べる簡単なテストです。
何秒間、自然な状態で、まばたきせずにいられるかを調べるというものなんです。
10秒未満ですと、ドライアイの可能性があるとも言われています。
10秒なんて簡単と思われるかもしれませんが、これが意外に難しいんです。
あくまで、自然に目を開けていられる時間を測ります。
目が痛くなってきたのに無理に開け続けてはいけませんし、目がピクピク動いたら、そこで終了です。
実際、私もやってみましたが、コンタクトレンズをはめて、目が疲れている状態ですと、10秒立たない間に目がピクピクしてしまいました。

次に、目をケアする具体的な方法についてお伝えしていきます。
まずコロナ禍で増えたパソコンやスマホなどのVDT作業。
この時に意識してほしいポイントについて、杏林大学医学部の山田教授に伺いました。

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1つ目は「意識的にまばたきをする」。
先ほどもお伝えしましたが、集中して画面を見続けると、まばたきの回数が減るので、作業中は意識してまばたきの回数を増やすことが大事です。

そして「視線を出来るだけ下げる」。
視線が上がると目が乾きやすくなります。
座っている椅子の高さを少し上げたり、背筋を伸ばしたりして、少しでも視線が下がるようにすると良いそうです。

あと「エアコンの風が直接当たらない場所で行う。
風が目に当たりますとそれだけ乾きやすくなります。

それに「1時間に1回、4・5分の休憩を取る」もあります。
目を単純につぶったまま、何もしないことが重要だそうです。

最後に「ディスプレー」を適切な照度にする。
国のガイドラインでは500ルクス以下などとされています。
簡単に言いますと「明るすぎず」「暗すぎず」というのがポイントです。
また周りの環境との関係も重要で、例えば部屋が暗いのに画面だけが明るいというのは目に負担が掛かるそうです。
いずれも、やろうと思えばやれることばかりです。

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そしてもう1つ、ご紹介したいのは「まばたき運動」です。
まず、2秒目を閉じて、パチパチと軽くまばたきを2回します。
そしてぎゅ~っと2秒間目を閉じてから、パッと目を開いてまぶしい目をする。
最後にキツネの目のように目を吊り上げて、まぶたを閉じる。
以上が一連の動作です。

これ、何のためにやるのかというと、
眼輪筋という目の周りの筋肉を鍛えるためなんです。
ここが鍛えられると、まばたきの回数が増える、あるいは、まばたきの質が上がる、つまり、まばたきの時にまぶたがきちんと閉じる、そうした効果に繋がります。
これによって、涙の質も高まるそうです。
この運動にはいくつかコツがあります。
眼科が専門の有田玲子医師によりますと、まず、目をぎゅ~と閉じる時、眉間にしわを寄せてはダメということです。
あくまで、まぶただけを、しっかり閉じることが大切です。
また、キツネの目のように目を吊り上げる運動。
目の下から吊り上げてはいけません。これでは下まぶたが動かないからです。
眉毛と目の間に指を置いて、吊り上げてください。
そして目を閉じようとすると、下まぶたもしっかり動きます。
この運動、1時間ごとに行うのが効果的なんですが、そこまで出来ないという人も、例えばトイレのタイミングに行うとか、何かの習慣に組み合わせるのも良いそうです。

また、目薬も、目のケアでよく使われますが、こちらは差し過ぎるのも良くなく、用法容量をきちんと守って使うことが大切だということです。

デジタル社会の進展で、私たちは知らず知らずのうちに目を酷使してしまいがちです。
是非、皆さんも自分の目の状態を意識して、アイケアを実践してみてください。


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