新型コロナの感染は、「第7波」のピークを越え、感染者数は減少傾向になっています。こうした中、国はオミクロン株対応のワクチン接種を始めました。
今回は、この新しいワクチンについて、考えます。
Q:これまで2回、3回、人によっては4回とワクチン接種をしてきました。そして今度は、オミクロン株対応ワクチンということで、なぜ、いま新しいワクチンの接種を始めるのでしょうか?
A:国としては、次の感染拡大に備えたい考えがあります。
過去2年間、「第3波」「第6波」と年末年始に感染が拡大しています。次の年末年始の感染拡大を防ぎたいということです。
新しいワクチンについては、多くの専門家が接種を勧めていますが、ワクチン接種するかどうかは、基本的に本人、あるいは保護者が決めることです。
オミクロン株対応ワクチンについて、知ってもらって、判断の参考にしてほしいと思います。
Q:オミクロン株対応ワクチンとは、どういったワクチンなのでしょうか?
A:2年あまり前、感染が広がった当初のウイルス、ここでは「従来株」と言いますが、これをもとに作ったワクチンと、日本で2022年の初め頃に感染が広がったオミクロン株の「BA.1」をもとに作ったワクチンを混ぜたものです。
接種の対象となるのは、2回目の接種を終えた12歳以上のすべての人です。3回目、4回目の接種を終えた人も含まれます。
国は、高齢者だけでなく、若い人たちも含めて、2022年内に希望者すべてにワクチンを接種できるようにと準備をしています。
Q:そもそも、なぜオミクロン株対応の新しいワクチンが必要なのでしょうか?
A:いま広がっているウイルス=オミクロン株に対して、ワクチンの効果が低下してきたためです。これまでのワクチン=従来型ワクチンは、2年あまり前のころのウイルス=従来株をもとに作っています。
しかし、ウイルスは変異していて、日本では、アルファ株、デルタ株、オミクロン株と変わってきました。ウイルスの特徴も変化して、特にオミクロン株のウイルスは、免疫からのがれやすい性質があり、ワクチンの効果が下がっています。
そこで、オミクロン株に照準を合わせた新しいワクチンが必要と考えられたわけです。
Q:なぜ、従来のウイルスのワクチンと、オミクロン株のワクチンを混ぜるのでしょうか?
A:ウイルスは、今後も変異することが考えられますが、混ぜた方がより幅広いウイルスの『変異』に対応できると考えられています。
Q:ワクチンというと、効果と副反応が気になりますが、どうなのでしょうか?
A:まず、効果です。ワクチンの効果をみるとき、ウイルスを攻撃する際に、大きな役割をする「中和抗体」が指標になります。
臨床試験で、4回目接種についての中和抗体の増え方を見たところ、ファイザーのオミクロン株対応ワクチンを接種すると、従来型のワクチンより1.56倍、中和抗体が多かったのです。モデルナのワクチンは、1.745倍でした。
こうした結果から、従来型のワクチンより高い重症化予防効果や感染予防効果、発症予防効果が期待できると判断されました。ただ、感染予防や発症予防の効果は、持続期間は短い可能性があると考えられています。
Q:副反応は、どうなのでしょうか?
A:従来型のワクチンと比べて「安全性の状況はおおむね同様で、現時点で重大な懸念は認められていない」とされています。
Q:「同様」とは、どういったことでしょうか?
A:ひとつのデータがこちらです。
臨床試験で、4回目接種したとき、副反応が現れた割合です。左がファイザー、注射したところの痛み、疲労、頭痛、発熱。右がモデルナの副反応が出た割合です。
この薄い色の棒グラフが、従来型のワクチンの副反応です。
Q:オミクロン株対応のワクチンの方が「少し高いかな」という感じもしますが、ほぼ同じとも見えますでしょうか・・・・・。
A:こうしたことから「同様」とされました。さらに、副反応のほとんどが、軽度か中等度で、回復しているということなんです。
Q:対象が2回目の接種を終えた12歳以上ということでしたが、まだ接種をしていない人=接種0回の人は、どうしたらいいのでしょうか?
A:未接種の人は、まず、『従来型』のワクチンを2回接種することになります。そのあと、3回目以降ではオミクロン株対応ワクチンを接種できます。
Q:はじめから新しいワクチンを打てないのですか?
A:臨床試験で、効果や副反応を評価したのは、2回目接種を終えた後の追加接種についてなので、こうなります。
12歳以上という年齢ですが、ファイザーのワクチンは12歳以上が対象ですが、モデルナのワクチンは18歳以上です。12歳以上、18歳未満の人は、現状ではファイザーのワクチンしか接種できないので、注意が必要です。
Q:接種が始まって、私たちもすぐに接種を受けられるでしょうか?
A:接種回数別に整理すると、下の図のようになっています。
2回目接種を終えた人は、2022年10月半ばをめどに始められるよう準備が進められています。
3回接種した人の場合、60歳以上や基礎疾患のある人など、重症化リスクの高い人、医療従事者、高齢者施設の職員などは、9月20日から接種が始まっています。他の人は、10月半ばがめどです。
4回目接種を終えた人は、接種から5か月間隔をあけて打つことになります。
前回接種から5か月間隔をあけるというのは、4回目接種に限らず、すべてに共通した条件です。
ただ、海外では間隔を短くしているケースもあります。すぐ打てるようにしようということで、この間隔は、短縮することが検討されていて、10月下旬までに結論が出される予定です。
Q:接種券は、あらためて届くのでしょうか?
A:厚生労働省によりますと、3回目、4回目の接種券をお持ちの方は、その接種券を使って新しいワクチンの接種を受けることができます。接種券が、これから来るという方もいると思います。詳しくは、お住いの自治体に確認してください。
はじめに示した「年内に希望する人すべての接種に向け準備」するというのは、次の感染の規模を小さなものにしたいということです。
1年前の年末年始は、年明けころからオミクロン株が広がり、これが「第6波」につながりました。一部では、まん延防止等重点措置が適用されました。2年前は、「第3波」で、緊急事態が宣言されました。
特に「第6波」では、感染が拡大する中、ワクチンの供給や自治体の接種体制の準備が間に合わないということがありました。「第6波」については「ワクチン接種が遅れたという反省がある」と専門家は話しています。
こうならないよう、接種を急ごうとしているわけです。
今後、予想されている「第8波」に向けて、オミクロン株対応ワクチンの接種を進める。これによって、感染者の数を増えないようにする、あるいは、感染者が増えたとしても、重症になる人、亡くなる人を抑えることにつなげたいというのが、国の考えです。
Q:これまで新型コロナに振り回されてきただけに、そうできると、コロナとの闘いも変わってきそうですね。
A:今回は、オミクロン株対応ワクチンについて、いろいろな疑問に答えてきました。
ワクチン接種は、ひとり一人が決めることです。効果や副反応、接種が持つ意味などを考えて、判断することが大切だと思います。
(中村 幸司 解説委員)
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