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SNSで誘われた悪質商法 摘発と規制の強化を!

今井 純子  解説委員

ラインなどのSNSがきっかけとなる悪質商法の被害が急激に増えています。国の消費者委員会の検討会が、対策の強化を求める報告書を、今週、まとめました。今井解説委員。

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【SNSが、悪質商法の被害のきっかけになっているのですか?】
そうなのです。SNSというと、個人と個人、あるいは、特定のグループで、メッセージのやり取りをしたり、企業などを友だち登録すると、お得なサービスの連絡が届いたりすることもあります。そのSNSで誘われたことがきっかけとなったトラブル。
全国の消費生活センターには、昨年度、5万4000件を超える相談が寄せられました。この2年で2倍に増えています。

【どのような相談がきているのですか?】
多くが、副業や投資の教材など、もうけ話に関するものです。3年前にいわゆる「老後2000万円不足問題」が話題になり、そこに、コロナの感染拡大で収入が減ったり、家にいる時間が増えたりしたことで、副業や投資に関心を持つ人が増えた。そこを悪質事業者が狙っているのです。

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【どのような手口なのでしょうか】
例えば、
▼ SNSで「副業」を検索して上位にきたサイトを見たところ、

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「収入率NO1」とか「簡単」と評価されている副業がありました。関心がある方は、友だち登録をしてください!とあったので、登録したら、

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「子育て中のママです」と称する人から、「誰でも毎日1万円以上稼げる副業を紹介します。今まで、何度も失敗してきたけれど、これは大丈夫」という、メッセージが送られてきました。何度かやりとりをした後、紹介された事業者のウェブサイトにアクセスして、およそ2万円の教材を買った。ところが、その教材の内容は、SNSで誘われた内容と全然違った。おカネを返してもらいたい、という被害。

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【つい安心してしまいそうな言葉が並んでいますね】
そうなのです。他にも、SNSをきっかけに、
▼ グループメッセージでの投資の勉強会に誘われ参加したら、他の参加者から「これは、稼げる」「私も始めます」など前向きなメッセージが相次ぎ・・・

【背中を押されますね・・】
そうですよね。そこで、高額の契約をしてしまった。でも、全くもうからず、その後、他の参加者と連絡がとれなくなった。グルだったと疑われる。

【さくらだったのですね】
手が込んでいますよね。また、
▼ 投資で成功した人から話を聞くよう誘われ、ウェブ会議で話を聞いたら、豊かな生活ぶりをみせられ、「あなたも必ずもうかる」などと誘われ、数十万円の教材をクレジット決済で購入した。というケースもあります。

【SNSのあと、ウェブ会議などで実際に会話をして誘われるケースもあるのですね】
はい。様々な手口があります。SNSがきっかけの場合、
▼ 匿名でやりとりするので、相手が事業者なのか、善意の第3者かわからないまま、つい、友だち感覚で信用して、契約してしまう。
▼ ところが、相手が会話から抜けると、連絡がとれなくなってしまう。
悪質事業者は、SNSのこうした特徴を悪用しているのです。

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【でも、うそをついていますよね。法律違反ではないのですか?】
それが、SNSについては、これまでの法律が想定をしていなかった部分があって、野放しに近い状態になっているという指摘がでています。

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【どういうことですか?】
トラブルが多い取り引きを規制する法律としては、特定商取引法という法律があります。
▼ 「電話勧誘販売」については、事業者が、言葉のやりとりで、ウソなどの勧誘をすることが禁止され、名前や連絡先など重要な事項について書面を渡すことが義務付けられています。違反した事業者は、業務停止命令など行政処分の対象になります。そして、消費者は、不意打ちで勧誘を受け、冷静に判断ができないまま契約に持ち込まれることがあることから、原則8日間、無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ」が認められています。
▼ 一方、ネットやカタログなどの「通信販売」については、文字などによるウソの広告などが禁止されていますが、勧誘の規制はありません。じっくり検討してから契約できるとの判断から、クーリング・オフも認められていません。

【SNSでの誘いは、どこに当てはまるのですか?】
それが、SNSのメッセージは、
▼ 「文字」ですので、電話勧誘ではなさそうですが、リアルタイムで「やりとり」をする中で、「こっちの方がもうかります」「きょうなら割安」などと誘導されることがあって、これまでの通信販売とも違っていて、はっきりしない。そこで、有識者や消費者の代表でつくる消費者委員会が検討会をもうけて、今週、法的な解釈や今後の規制について報告書をまとめました。

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【どのような内容ですか?】
▼ まず、きっかけはSNSでも、その後、ウェブ会議や無料電話(つまり言葉のやりとり)で勧誘され、契約をした。それは「電話勧誘販売」に当たるという見解を示しました。
▼ 一方、SNSで誘われた後、そのままネット上で契約した場合は、「通信販売」に当たるという見解です。

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【今の法律でも、規制できるのですね】
はい。電話勧誘であれば、クーリング・オフもできます。ただ、相談の現場からは、事業者に連絡がついても、「SNSは、電話勧誘ではない」と言い張られて、クーリング・オフに応じてもらえない。クレジット会社も、支払いの停止を認めてくれない、という指摘があがっています。このため、報告書では、消費者庁に対して、すみやかに明確な見解を示すとともに、摘発を強化することを求めています。

【これだけ被害がでているわけですから、すぐに対応してほしいですね】
そう思います。一方、通信販売だと、今の法律では、クーリング・オフが認められません。勧誘の規制もない。そこで、報告書は、リアルタイムで文字のやり取りをする中で、契約に勧誘されるケースなどは、電話勧誘と同じような不意打ち性があるとして、規制を強化すべきだという考えを示しました。どのような規制が必要か、今後、消費者委員会で詰めることになります。

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さらに、今回、報告書には、国だけでなく、民間の事業者ができる取り組みについても盛り込まれています。

【どのようなことですか?】
▼ まず、ラインなどのSNS事業者については、消費者からの苦情をきちんと受け付けて、悪質なアカウントについて、提供を停止するなど取り組みを強化してほしいという点。
▼ また、クレジット会社についても、加盟店が悪質な事業者でないかきちんと調査することが重要だという意見を踏まえ、今後、対策の検討が必要だという考えを盛り込みました。自主的に取り組める点もあると思いますので、ぜひ取り組んでほしいと思います。

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【ただ、消費者としても気を付けなければならない点がありそうですね】
消費者問題に詳しい専門家は、注意点として
▼ 検索で上位にくるよう作られたサイトもあります。上位にあるからと信じてはいけない。
▼ また、簡単にもうかる投資や副業はありません。「誰でもできる」「確実にもうかる」といった言葉は信じない。そして
▼ 投資や副業をしたいのなら、本を買うなど地道に勉強し、リスクをきちんとわかった上で、取り組むことが欠かせない。と話しています。
▼ また、ネットで契約をする場合は、契約書の内容、事業者の連絡先を確認し、できればトラブルに備え、スクリーンショットをとっておく。こうしたことも重要だとしています。
▼ その上で、トラブルに巻き込まれた場合は、身近な消費生活センターに相談をしていただきたいと思います。全国共通の188の電話番号からつながる仕組みになっています。

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【相談することも大事ですね】
泣き寝入りせずに、相談をしていただきたいと思います。
その上で。被害が増えていますので、国、民間事業者、それぞれ、できることから急いで対策に取り組んでほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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