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Web3って何? 期待と現実について解説

三輪 誠司  解説委員

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インターネットの新しい使い方を提案する「Web3」というキーワードが注目を集めています。Web3を使った投資を呼びかける広告なども見られるようになりました。

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Web3は、次世代のインターネットを提唱する概念です。Web3.0とも呼ばれることがあります。
これまでのインターネットの問題点を解消できるのではないか、新しいビジネスにつながるかもしれないという期待があります。経済産業省は7月、Web3に関連する事業の課題を検討する政策推進室を設けました。また、8月には群馬県もWeb3推進プロジェクトチームを設置しました。

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これまでのインターネットの流れでWeb1.0と呼ばれているものは、インターネットによる情報発信の始まりのことをさします。1995年ごろのことです。最初は企業、研究者、行政などがホームページで情報発信をはじめました。それが先進的な取り組みといわれ、一般の人の発信は多くありませんでした。

次に出てきたWeb2.0は、SNSやブログなどを使って、多くの人が相互に情報を発信するようになったことを指します。2005年前後から始まったと言われています。何気ない会話をするだけでなく、インターネットを通じて政治や大企業などに対して意見を言いやすくなりました。有権者や消費者のパワーが大きくなったという変化も出てきたと思います。スマートフォンを通じてインターネットを利用する人が爆発的に増えました。

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しかし、それが経済的な豊かさにつながったかということについては、疑問の声が上がるようになりました。
経済的な恩恵は、GAFAM と呼ばれる巨大IT 企業、グーグル、アップル、今はメタという名前に変わったフェイスブック、アマゾン、マイクロソフトに集中したのではないかというものです。
例えば、グーグルは、ネット上で発信された数多くの文章や画像を収集して文章や画像を検索するサービスを展開し、多くの利用者を獲得しています。また、フェイスブックやアマゾンは、利用者の閲覧履歴などをAI・人工知能で分析し、おすすめの商品や広告を表示して収益を上げています。

それによって便利なサービスが生まれたという側面はありますが、それはネットサービスの中央集権化がもたらしたもので、もともとインターネットが求めてきた自由とは違うという意見が出てきました。

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それがWeb3という概念につながっています。ポイントは、集中ではなく分散です。自分の発信した情報は自分で管理すること、そして、それによって生じる利益は自分のものにすべきだというものです。

活用されるとみられているのが、「ブロックチェーン」という技術です。ビットコインなどの暗号資産の取引や、コンピューター処理された絵画や音楽などのデジタルアートの取引管理をするNFTという仕組みに使われています。ブロックチェーンを使うと、管理会社を通さなくても利用者が相互に協力する形でサービスを利用できます。つまり、巨大IT企業の囲い込みの外で、自由に情報を発信したり、作品の配信が可能になるため、独占企業の思惑に左右されずに、個人間の取引が可能になる可能性があります。

ただ、Web3 をとりまく現状についても、正しく知っておかなければなりません。
それは、定義がはっきりしていないこと、それにも関わらず、期待が先行しすぎていることです。Web3は目指すところは決まっていますが、実用的なサービスのアイデアが出てくるのかどうかもわかりません。まだ漠然としている段階です。

そういった現状にもかかわらず、今、注意した方がいいことがあります。それは、過剰な広告です。

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SNSやブログでは、「Web3でもうける方法」とか「Web3は副業のチャンス」などという書き込みが見られるようになりました。しかし、よく読んでみると、暗号資産への投資を勧誘しているだけというものも見られます。これは、Web3の定義が定まっていないことをいいことに、既存のサービスを宣伝しているだけに過ぎません。

また、Web3を使えば利益が出るというわけではないことを知っておく必要があります。そもそもWeb3は商品ではありませんので、そのものに価値があるわけではありません。取引される暗号資産やデジタルアートなどに価値があれば利益が出るわけで、Web3はそれをサポートする役割しかありません。Web3だから稼げると読めるネットの書き込みには注意が必要です。

インターネット上では、流行語が次々と出てきます。その中では、定義がはっきりしていないけれど、いかにも良さそうな響きやもうかりそうな印象があるものがあり、さまざまな宣伝文句に利用されてきました。Web3に限らず、意味がよくわからないキーワードが書かれている広告には、十分注意する必要があると思います。

Web3に関しては新しいネットビジネスに乗り遅れないようにしようということで、企業や行政が調査を始めるなどの動きを見せているものの、Web3は構想の段階にとどまっている分野が多いと思います。私たちはその現状を知っておいて、聞こえのいい宣伝文句に振り回されないよう、気をつける必要があります。

(三輪 誠司 解説委員)


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