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どう防ぐ? ネット販売の身近な製品の事故

今井 純子  解説委員

ネットで販売されている身近な製品の中には、危険な製品もあって、このところ事故が増えていると、政府などが注意を呼び掛けています。今井解説委員。

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【どのような事故が起きているのですか?】
独立行政法人のNITE=製品評価技術基盤機構に寄せられた事故の事例です。
例えば、
▼ ネットで買ったスマホなどを充電できる「モバイルバッテリー」。これをカバンに入れて持ち歩いていたら、煙がでて、周辺が焼けた。国の安全基準を守っている製品につけられるPSマークがついていませんでした。
▼ 次に、コードレス掃除機が、充電中、あるいは何もしていない保管中に、異常に発熱して、発火した。ネットで買った純正品でないリチウムイオン電池が使われていました。
▼ また、室内でのあぶり料理やキャンプの火おこしで人気が出ている「ガストーチ」。使っていたら、突然本体が炎につつまれ、慌てて手を放してしまい、周囲が焼けた。海外製の粗悪品とみられるということです。
▼ さらに、パソコンを充電中、火が出て、テーブルが焦げたという事例。これは、リコール製品でした。

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【こわいですね】
死亡、あるいは、全治1か月以上のケガ、火災などをともなう、いわゆる「重大事故」。去年は、1042件と、10年前より若干、減っています。一方、そのうち、ネット販売で買った製品の事故は、10年前の11件から、去年は76件と、大幅に増えています。
 
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【なぜ、ネット販売で買った製品の事故が増えているのですか?】
まず大前提として、コロナの感染拡大による巣ごもり需要で、ネット販売の利用が大幅に増えているということがあります。そして、その結果、
▼ 消費者が、手軽に、海外の事業者から直接、海外の製品を買うことができるようになりましたが、その海外製で、事故が相次いでいます。去年、国内で重大事故を起こした製品のうち、59%が、主に海外メーカーがつくった海外製でした。2年連続で、日本製を上回っています。
特に、このところ目立っているのが、先ほども触れましたが、日本の安全基準を満たしていない製品による事故だと言います。

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【安全基準ですか?】
はい。日本では、事故を起こすと生命や身体に重大な危害を及ぼすおそれがある身近な家電製品やガス製品など、491の品目について、国が安全性についての基準を設け、製造事業者。輸入品については、輸入事業者に対して、基準を守り、PSマークを表示するよう義務付けています。そして、販売事業者は、PSマークが表示されていない製品を売ることが禁止されています。PSマークは、製品の種類によって、形や下のアルファベットの文字が違いますが、上のPSという文字が目印です。

【PSマークが、安全基準を満たしている印なのですね】
はい。ところが、ネット上で、販売事業者に場所を提供しているだけのモール運営事業者は、義務の対象になっていません。このため、ルールを守らない海外の販売事業者が、PSマークがついてない製品を販売して、日本の消費者がそれを買うことができる状態になっているのです。

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【安全基準が守られていない海外製の製品が売られている。それが事故が起きる要因のひとつになっているのですね】
ネットで購入した製品で事故が多く起きている要因は、もうひとつあります。メーカーなどが回収や無料の修理を呼びかけている、いわゆるリコール製品が、フリーマーケットのサイトなどで売られているケースがある、という点です。NITEによると、2015年から2020年の間に、ネットで購入した製品によって起きた事故の14%がリコール製品によるものでした。

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【安全上問題がある製品が、ネットで出回っているというのでは、心配です】
政府や事業者も対策に乗り出しています。まず、政府は
▼ おととしから、大手モール事業者8社と協力して、モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使った製品と、レーザーポインター、それからキャンプなどで調理に使うカートリッジガスこんろ。事故の多いこの3つの品目について、出品の前にPSマークを確認し、表示がない場合、販売を停止したり、削除したりする取り組みを始めています。
▼ また、政府独自に、大手モール上をネットパトロールして、LEDランプやヘアアイロンなど8品目について、PSマークがあるか調査。去年1年間に、違反が疑われる179件について出品の削除につなげました。
▼ そのうえで、今年5月からは、新たな法律が施行され、PSマークがない、あるいは、リコールの対象になっているといった、より幅広い危険な製品について、販売事業者に連絡がとれない場合、モール事業者に削除を求めることができることになり、取り組みを始めています。

【政府独自の取り組みですね】
さらに、モール事業者の間でも、独自の取り組みを始める動きがでています。
▼ 例えば、ヤフーは、24時間ネット上をパトロールして、命や健康に被害が及ぶ危険性が特に高いと国が注意を呼びかけた、非純正品などの製品について、削除する。また、モール上で購入した製品で事故が起きた場合、NITEと連携して原因を調べ再発の防止につなげる。といった取り組みを進めています。また、
▼ フリマサイトを運営しているメルカリは、メーカーなどからリコール製品の連絡を受け、対象の製品が出品されていた場合、削除するよう出品者に依頼する。それとあわせて、過去、その製品を買った消費者にも、個別に、リコールになった旨を知らせる取り組みを始めています。

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【いろいろな取り組みが始まっているのですね】
はい。ただ、モールによって、取り組みに差があるので、消費者としても注意が必要です。

【どのような注意が必要でしょうか】
政府やNITEが呼び掛けている注意です。
まず、買う前に
▼ ネット上の製品の説明文をよく読んで、PSマークなど安全基準を満たしているか。リコール製品でないか、確認すること。(リコール製品については、消費者庁やNITEのホームページから確認できます)。説明文などで日本語がおかしいものは、注意が必要だということです。
▼ また、純正品でないバッテリーなどの場合、とりつけようとしている製品のホームページに、注意喚起が掲載されてないか、確認をすることも大事です。
▼ 販売事業者の電話番号や対応窓口が明記されているか、その電話番号が国内にあるかの確認も必要です。というのも、トラブルが起きた後、事業者と連絡がとれず、製品を交換したり、被害のおカネを取り戻したりできないというケースが多く起きているからです。
▼ さらに、他と比べて、あまりに安い製品の場合、注意が必要という指摘もあります。例えば、事故が多く起きているガストーチ。国が法的な安全基準をつくる方向で検討していますが、その前に、日本の業界団体が、事故を起こさないための任意の基準をつくり、日本の多くのメーカーはそれを守っています。安全を守るために、簡単な構造の海外製品より割高になっているという面があるのです。

Q)安いといって飛びつくと、危険な製品もある。安い理由を考えることが大事ですね。
A)はい。その上で、買った製品で事故などのトラブルが起きた場合、身近な消費生活センターに相談をしていただきたいと思います。全国共通188の番号から、身近なセンターにつながる仕組みになっています。

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コロナの感染が再拡大している中、ネット販売は非常に便利です。ただ、購入を決める前に、安全な製品か、しっかり考え、信頼できる情報をもとに確認することを、ぜひ忘れないでいただきたいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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