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広がる欠食習慣 ~学力や健康に影響も

牛田 正史  解説委員

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いま、朝食を食べない「欠食習慣」が広がっています。
特に新型コロナの感染拡大で、朝食を食べない人が最近、増えているといいます。
なぜ欠食習慣は広がっているのでしょうか。

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まず「朝食の欠食率」の推移からご紹介します。
ここでの欠食率とは、朝食を週に2日から3日しか食べない、あるいはほとんど食べないという人、つまり、週に3日以下しか朝食を食べない人の割合を示します。
農林水産省の調査(食育に関する意識調査)では、増加傾向が続いていて、昨年度は13.9%に上っています。
中でも20代から30代の若い世代では、26.5%まであがり、4人に1人の割合となります。
注目して頂きたいのは、コロナ禍で一度、欠食率が下がったんですが、昨年度は再び大きく増えたという点です。

これはなぜなのか。要因として指摘されている1つは「生活リズムの変化」です。
食物学が専門で日本獣医生命科学大学の佐藤秀美客員教授に聞きました。

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まず在宅勤務やオンライン授業の機会が増えて、通勤や通学の必要がなくなり、朝起きる時間が遅くなった人が増えたとみられるということです。
通勤や通学の必要がなければ、いつもより遅く起きても朝食は食べられるんですが、徐々に行動制限が緩和されて、元のように通勤や通学が始まっていきます。
ところが朝遅く起きる習慣が直らず、朝食を食べる時間が無くなってしまったという人が増えたのではないかと佐藤さんは見ています。

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また、巣ごもり生活が続いて、インターネットで動画などを見る機会も増えたと思いますが、ついつい夜更かしをしてしまう癖が付いてしまって、朝起きる時間が遅くなったという人もいると見られています。

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コロナ禍で朝起きるのが遅くなったというのは、次のようなデータがあります。
子どもを対象にした調査ではありますが、コロナ前より、寝る時間が1時間以上遅くなったり、不規則になったりした割合は、小学校高学年で32%、中学生で34%、高校生では30%に上っています。(2020年・国立成育医療研究センター調査)
朝起きる時間が遅くなれば、それだけ朝食を食べる時間や機会が減りますので、欠食率の増加に繋がっていきます。

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では朝食を抜いてしまうと、どういったデメリットがあるのでしょうか。
朝食は一日の生活において、とても重要なエネルギー源です。
具体的に言いますと、「グリコーゲン」と呼ばれる物質が深く関わってきます。
これはブドウ糖が結合した物質ですが、食事をしますと、肝臓や筋肉に蓄えられます。
このグリコーゲンは、血糖を常に一定に保ちながら、空腹の時には脳や体のエネルギーの供給源となります。

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ところが、朝食を取らなければ、前の日の夜から次の日の昼まで、何も食べないことになります。
寝ている間にもグリコーゲンは減っていきますので、翌日のエネルギー源が不足してしまうわけです。

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実際に、こんなデータがあります。
小学6年生と中学3年生を対象に、文部科学省が行った学力調査の結果です。
「朝食を毎日食べている」という子どもの平均正答率の方が、朝食を全く食べていない子どもより、どの科目でも正答率が高くなっています。
朝食を食べないとエネルギー不足になるということが関係している可能性があります。
体力調査でも同じことが言えます。
男女ともに、朝食を毎日食べるという子どもの方が、合計点が高くなる傾向にあります。

これは子どもを対象にした調査ですが、大人でも、集中力や記憶力の低下、それに活動力の減少などに繋がるおそれもあるとされています。

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また、食事の回数を減らすことで、代謝が落ち、体脂肪が蓄積したり、コレステロールや中性脂肪が増加したりする場合があるとされています。
こうなると、太りやすさや生活習慣病に繋がる可能性も指摘されています。

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ただ、朝ごはんの大切さは感じているけど食べる時間が無いという人もいると思います。
実際、国の調査で、朝食を毎日は食べていないという人に、どうすれば朝食を食べるようになるか聞いたところ、「朝早く起きられること」と答えた人は43%いたそうです。
やはり、朝食を食べる時間が作れないというのが、欠食の大きな要因になっています。
ですから、まずは朝早く起きる習慣をつけることが大事なんですが、それでも時間が無い、あるいは食欲が無いという人もいると思います。
そんな人はどうすれば良いのか。
日本獣医生命科学大学の佐藤秀美客員教授は次のように話しています。

「時間が無い方は、簡単に食べられる朝食をまず食べる。
食べていくと、それが習慣化されて、朝食を食べ続けるようになる、そういう研究データもあります。
例えばグラノーラみたいなシリアルに牛乳かけてという、本当に、調理の手間がいらないものもあります。
非常に朝食の習慣化に役立つし、習慣化だけじゃなくて、栄養的にも朝食としては満足できる状況になると思います」

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まずは毎日、朝食をとる習慣を身に着けることが大事というわけです。
その1つの例として、挙げていたのは「グラノーラ」などのシリアルです。
例えばグラノーラは、オーツ麦や玄米などの穀物にシロップをかけて焼いた物なんですが、比較的バランス良く栄養素が取れます。
主原料のオーツ麦を見ますと、たんぱく質や食物繊維、それにミネラルなどの栄養素が多く含まれています。
このオーツ麦は、「オートミール」とも呼ばれて、日本での消費も伸びています。
ただ、ビタミンが少し不足してしまうので、フルーツや野菜と組み合わせて食べるのがおすすめだそうです。
また牛乳とバナナを食べるだけでも、一定の栄養素を取ることができるそうです。

一方、「朝食は毎日食べてます!」という方は何に気を付けるべきか。
まずは栄養をバランス良く取るということが重要になります。
日本人は「カロリー」や「糖質」は十分とれているんですが、たんぱく質やビタミン、それにミネラルや食物繊維などが不足する人は少なくないとも言われています。

ですので、毎日朝食を食べているという人は、穀物、肉類、野菜、豆など、食品を出来るだけ増やすことを心がけてもらいたいと思います。
例えば和食を食べる人は味噌汁の具を増やす、あるいはサラダを食べる人は野菜の種類を増やす、それだけでも効果があります。

新型コロナの影響で買い物に行く回数が減って、食べるものが偏ってしまうこともあります。朝食は特にその影響を受けやすいとも言えます。
朝食を抜きがちな人は、まず毎日食べる習慣をつけること。
そして、毎日食べている人は栄養のバランスに気を付けること。これが重要です。

(牛田 正史 解説委員)

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