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新型コロナ感染拡大『第7波』この夏の対策は

中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスの感染者が急激に増えています。夏休みを前に、計画をどうするか考えている方も多いのではないのでしょうか。再び感染が拡大している新型コロナについて、対策をどう進めていけばいいのか考えます。

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Q:感染者が増えていますが、これは「第7波」とみていいのでしょうか?
A:はい。政府の分科会の尾身茂会長も「第7波に入った」という認識を示しています。

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上のグラフが、全国の新規感染者の数の推移です。2022年7月14日は、1日の感染者が9万7000人あまりでした。

Q:第6波のピークに迫っていますね。6月の途中まで減少していたのに、なぜ増加するようになったのでしょうか?
A:専門家は、いくつかの要因を上げています。

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一つが、「BA.5」というウイルスが広がってきている点です。BA.5は、オミクロン株の仲間ですが、これまでのオミクロン株「BA.2」より感染力が高いとされています。
感染の主流が、BA.2からそのBA.5に置き換わっています。
そして、ワクチン接種によって体にできた免疫、つまりワクチンの効果が弱くなってきていること、
さらに、人と人の接触の機会が増えたことも、あるのではないかといわれています。
暑くなってきたことで、室内の十分な換気をしづらくなってきているという点などがあげられています。

Q:感染者が急激に増えていますが、なぜ増え方がこれほど急なのでしょうか?
A:BA.5のウイルスの特徴が、関係しているとみられます。

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感染力が高いということがありますが、それに加えて、オミクロン株はある人が感染してから次の人にうつすまでの期間、いわばサイクルが短いとされています。次々に感染するので、広がり始めると感染者が急増することになります。

Q:BA.5は感染すると、これまでよりも重症になりやすいといったことはないのでしょうか?
A:そうしたことを示唆する動物実験などの研究がありますが、今のところ、BA.5が、これまでより重症になりやすいかどうか、はっきりとしたことはわかっていません。

Q:今後が気になりますが、緊急事態宣言を発表するといった可能性もあるのでしょうか?
A:現時点では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出す必要はないというのが政府の見解です。ただ、専門家は、今後多くの地域で増加が続くと指摘しています。

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というのも、先程のBA.5が広がっていることやワクチンの効果が弱まっていることに加えて、今後は、あすからの3連休、夏休み、お盆など人の移動や、普段会わない人との接触の機会が増えることから、感染の拡大がなかなか収まらないのではないかと懸念する声も聞かれます。

Q:そうなると、これまでの感染拡大のときにも問題になった医療の状況が気になりますね。
A:各都道府県で用意されている新型コロナ用の病床の使用率は、現状は全国的には低いとされています。

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7月13日の時点で、病床の使用率は東京が31%、大阪が27%です。ただ、和歌山が54%と50%を超えて、沖縄は、以前から感染者が多い状況が続いていますが、61%と高くなっています。
今後、全国それぞれの地域で、どこまで、この使用率が上がるのか、注視する必要があります。

Q:救急医療は、どうなっていますか?
A:救急医療への影響も、出はじめています。

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救急搬送に時間がかかったケースは、7月10日までの1週間で、2800件余りあって、増え続けています。熱中症による増加もありますが、このうち、30%が新型コロナの疑いでした。この時期は熱中症も含めて、医療体制を維持することが重要で、難しい点でもあります。
感染者が、なかなか適切な治療を受けられない、あるいは急病などの患者を救うという日常的な医療が混乱して、維持できなくなるといった、過去の感染拡大の際に起きたようなことは、避けなければなりません。

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上の図の、上段は新規感染者、下段は亡くなった人の推移です。
オミクロン株は、「多く場合、軽症ですむのではないか」と考えているかもしれませんが、第6波のときを見てみますと、感染者がこのように多くなると、死亡する人も多くなってしまいます。

Q:亡くなった人は、第5波よりもこんなに多かったですね。

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A:ですから、感染者が多くならないようにすること、医療がひっ迫しないように特に重症になった感染者が、医療機関で適切な治療を受けられるよう体制を整えておくことが必要だと思います。

Q:では、私たちはこれからどういったことを心がければ、いいのでしょうか?
A:専門家は、これまで言われてきている感染対策を徹底してほしいと話しています。

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専門家が指摘する点、一つはワクチン接種です。高齢者や基礎疾患のある人といった重症化リスクのある人は、自治体から連絡があったら4回目接種を受けるよう勧めています。
この4回目接種について、政府は対象を医療従事者などにも広げることにしました。
4回目接種は、重症化を防ぐ効果があるとされています。ワクチンの効果が増強されることが期待されます。
あわせて、3回目接種をまだ受けていない人、1回目・2回目もまだの人は、もう一度検討をするよう求めています。
メッセンジャーRNAワクチン、つまり「ファイザー」や「モデルナ」のワクチンで副反応があった人などは、今は他の種類のワクチンも承認されていますので、医師と相談してほしいと思います。

Q:他には、どういったことがあるでしょうか?
A:マスクのつけ方について、政府が考え方を示しています。

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屋内では、距離が近かったり、会話をしたりするときにマスクをしますが、会話がほとんどなく、距離も保てる図書館やクラシックコンサートなどであれば、必要ないとされています。
一方、屋外では、周囲に人が居なくて、会話もしないのであれば、マスクの必要がありません。ただ、近い距離で会話をする場合は、マスクをするように、とされています。
通勤電車の中などでは、マスクをする必要がありますね。
Q:今は、感染症とともに、熱中症対策も考える必要がありますね。

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A:はい、この夏も、暑さには警戒が必要です。身を守るために熱中症対策を優先してください。屋外でマスクが必要になるような場面に行かないようにすることも大事だと思います。

Q:夏休みに、ふるさとに帰ろうと計画している人もいると思いますが、どうしたらよいでしょうか。

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A:特に高齢の親や祖父母に会うという場合は、あらかじめ、感染の有無を検査で調べるということも行ってほしいと思います。ただし、検査は100%確実な結果が出るわけでは、ありませんので、陰性だった場合も、慎重に感染対策を実践することが大切です。
あと、少しでも体調が悪いと感じたら、仕事を休むとか、外出を控えるなどして、医療機関を受診したり、検査を受けたりしてほしいと思います。

Q:リスクを抑えるよう考えることが大切ということですね。
A:第7波の感染を抑えるために、感染者を減らす、周囲に広げない、重症化リスクの高い人を守るといったことを心がけた行動を徹底することが大事になっています。

(中村 幸司 解説委員)


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