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投資への関心に変化の兆し ただし注意も!

今井 純子  解説委員

投資への関心に変化の兆しが見えています。ただ、注意が必要という指摘もあがっています。今井解説委員。

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【投資への関心に変化の兆しがあるのですか?】
はい。日本では、長い間、個人は投資に慎重だと言われてきました。実際、家計が持っている金融資産の半分以上は、元本が保証されている現金・預金という状態が続いています。
ところが、このところ、投資に関心を持つ人が増えてきている、という調査結果がでてきているのです。

【どのような調査結果ですか?】
まず、
▼ 野村総合研究所が、3年おきに、1万人を対象に行っている調査です。株式や投資信託などへの投資を行っていると答えた人の割合が、2015年を底に増え始め、去年は21.1%と、6年前より5.2ポイント増えました。(生活者1万人アンケート調査)

▼ また、金融広報中央員会の調査では、「元本割れを起こす可能性があるけれど、収益性が高いと見込まれる金融商品を保有したいか」という質問に対して、
▼ 「全く思わない」という回答が、最も多く50%を超えてはいますが、3年前と比べると30ポイントあまり低くなっています。一方、
▼ 「一部、保有しようと思っている」「積極的に保有しようと思っている」があわせて49.6%と、3年前より31ポイントあまり増えています。(家計の金融行動に関する世論調査2021年)

【リスクはあるけれど、高い利益を求めたいという人が増えているということですね】
そうなのです。そして、ネット証券大手の楽天証券の話では、今年1月から5月の間に、新しく口座を開いた人、およそ100万人のうち64%が30代以下でした。これまで、投資をするのは、資産に余裕のある高齢者層が中心でしたが、若い人にも関心が広がっているというのです。

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【なぜでしょうか?】
背景として指摘されているのは、ここ数年で起きた3つの出来事です。
▼ まず、2018年に「つみたてNISA」の制度が始まりました。これは、資産形成の後押しをしようと、国が作った期限付きの制度です。少ない額からコツコツおかねを積み立てて運用し、利益にかかる税金が20年間、非課税になるなど優遇策があることもあって、初心者にとっても、投資へのハードルが少し低くなったと言われています。

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▼ 2つ目は、いわゆる「老後2000万円問題」です。老後の資金について関心が高まり、投資に関心を持つ人が増えたというのです。

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▼ そして、3つ目が、新型コロナの感染拡大です。

【投資とどう関係するのですか?】
家で過ごす時間が増え、投資の勉強をして実際に投資を始める人が増えたというのです。

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【確かに、家にいながら、スマホで口座を開いたり、取り引きしたりできるようになっていますよね】

さらに、電子マネーなどで買い物をした時のおつりやポイント、航空会社のマイルなどでも、投資ができる新たなサービスが次々でてきています。最近、物価も上がっていますので、投資に関心を持つ人が増えるのは、悪いことではありません。ただ、心配なのは、投資への関心が高まるのにあわせて、トラブルの相談も増えているという点です。例えば、
▼ 少ないおかねを担保として預けると、その何倍もの取引ができる、「外国為替証拠金取引」(FX)については、昨年度は、4年前の5.7倍。
▼ かつては「仮想通貨」と言われていた、インターネット上でやりとりでき、代金の支払いにも使える「暗号資産」の取り引きについては、2.2倍。
▼ また「この教材をみて投資をすると簡単にもうかると言われ、高額のDVDやPDFファイルなど教材を買わされた」という「情報商材」については、1.4倍の相談が寄せられています。
特に注意が必要なのは、投資への関心が高まっていることを悪用したとみられる、悪質な事業者による詐欺的なトラブルが多発しているという点です。

【どのようなトラブルですか?】
例えば、FXや暗号資産で、最近目立つのは
▼ 恋人などとの出会いを仲介する「出会い系アプリ」や、SNSで知り合った人から、「みんな投資をして、利益を得ている」などと言われて、投資サイトやアプリを紹介された。消費者金融からもおかねを借りて、投資をしたところ、利益が出たというので、引き出そうとしたら、出金できない。相手や事業者とも連絡がとれなくなった。といった相談。
▼ 情報商材については、数十万円で教材を買い、指示通り投資をしても損ばかりで、その後、友達を誘えば報酬がもらえると言われた。つまり、いわゆる「マルチ商法」だった、という相談。
こうした詐欺的なトラブルが多く起きています。

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【被害にあわないために、注意が必要ですね】
知り合いから誘われたと言って、すぐに投資をすることは本当に危険です。
まずは、詐欺的な事業者ではないか。慎重に判断することが大事です。

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▼ FXや暗号資産の場合、事業者は、金融庁・財務局の登録が義務付けられ、投資家を保護するための様々な規制がかけられています。金融庁のホームページから登録事業者かどうか、確かめることができます。取引する前に、必ずチェックして、無登録業者とは取り引きしないことが大事です。
▼ また、SNSなどで投資を誘われた場合、おカネを振り込んだ後、相手や事業者と連絡が取れなくなるケースも多くあると言います。簡単にもうかる話はありません。まず、疑ってください。
▼ その上で、トラブルに巻き込まれた場合、消費生活センターに相談してください。全国共通の188の電話番号から、身近な消費生活センターにつながる仕組みになっています。

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【投資に関心がある場合、どうしたらいいですか?】
投資の原則は、「長期、分散、積み立て」と言われています。ただ、それでも、損をすることがあります。例え、初心者向けと言われるつみたてNISAでも、きちんと勉強してから始めることが大事です。
まして、FXや暗号資産は、リスクの高い取引です。一定の専門知識も求められます。例え、登録事業者と取り引きする場合でも、きちんと仕組みを理解し、リスクも承知した上でやることが欠かせません。

【投資は、損をする可能性があるということを、わかっていないといけませんね】
はい。金融消費者問題に詳しい専門家の話では、投資をする場合、家計を
▼ 「生活に必要な資金」。病気になったり、仕事を失ったりしたときに必要な「準備資金」。損をしても生活に困らない「余裕資金」に分けて、投資をする場合は「余裕資金」ですることが大事だということです。
どうやって儲けるかではなく、どこまで損をしても大丈夫かという考えが大事だということです。

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一方の政府ですが、個人の金融資産を貯蓄から投資に一段とシフトさせるために、NISAの改革を含めた「資産所得倍増プラン」を年末までに策定する方針を打ち出しました。ただ、それなら、その前に、国民が投資をしやすくなる環境をつくることが欠かせないと思います。

【どのような環境ですか?】
まず、
▼ 悪質な事業者をなくすための摘発の強化と、規制の強化。
▼ 顧客のメリットを第一に考える顧客本位の取り組みを企業・事業者に徹底すること、
それとあわせて、
▼ 投資についての教育の強化(資産運用の基本的な考え方だけでなく、被害にあわないためにどうしたらいいかも含め)
こうした取り組みの充実、徹底が欠かせないと思います。

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その上で、投資を!と言うのであれば、誰もがこつこつ投資する余裕資金を持てるよう、賃金引き上げに力を入れることも忘れないようにしてほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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