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家族の姿"もはや昭和ではない"  ~世帯から個人単位に

竹田 忠  解説委員

先月、政府がまとめた男女共同参画白書。
人生100年時代を迎えて、
人生も家族も、その姿が大きく変わっているのに
政策や制度は昭和モデルをひきずったままだとして
大きく変更するよう求めています。竹田忠解説委員に聞きます。

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【 この白書で使われている「もはや、昭和ではない」という表現。
昭和世代の人は、ピンとくるのでは?】

そうなんです。これは「もはや戦後ではない」という、
昭和31年の経済白書の名文句が下敷きになってます。

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これで言わんとしているのは、こういうことです。
人生も家族も、昭和の時代とは様変わりしている。
なのに、政策や制度は昭和モデルをひきずっている。
その結果、女性の貧困リスクが増している。
税や社会保障を世帯ではなく、
個人単位の制度に変更する必要がある、と指摘している。

【 昭和モデルというのは? 】

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A
昭和の時代、多く見られたのが、
正社員のサラリーマンの夫と、専業主婦の妻と子供、という世帯でして、
さらにそこに高齢の親も同居する3世代同居も多かった。
社会保障や税、それに企業の様々な手当は、
こういう世帯を前提に作られたわけです。

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具体的に数字で見てみますと、
昭和55(1980)年時点では、
一番多い世帯は夫婦と子供で4割、
次は3世代同居で2割
3番目が単独世帯、つまり一人暮らしでした。
それが、40年後の令和2年になると、
一番多いのは一人暮らしの4割、
夫婦と子供は2番目で25%、
3世代同居に至っては、わずか8%足らず。
今や、1人暮らしが圧倒的に多くなった。

【 なぜ1人暮らしが多くなったのか? 】

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A
結婚する人が減ったため。
昭和45年(1970年)には、結婚は100万件を超えてました。
それが、およそ50年後の令和3年(2021年)には
コロナの影響もあって、
およそ半分の51万件に減って、戦後最も少なくなった。

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この結果、
たとえば、50歳の時点で、結婚していない人の割合は
昭和45年(1970年)には男性が1.7%、女性が3.3%でしたが、
それが、50年後の2020年には
男性が28.3%、女性が17.8%まで増えました。

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一方、離婚はというと、結婚のほぼ3分の1程度で推移している。
つまり、結婚しないまま、
または離婚した後、そのまま独身でいる人が全体として増えている、
ということになる。

【 一人暮らしが増えている、ということと、
女性の貧困リスクが増していることは、どんな関係があるのか ?】

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A
それを調べたのがこのグラフ。
男女それぞれ、一人で暮らしで働いている人が
どれくらい所得があるかを調べたもの。
男性の一人暮らしの場合、
一番多いのは、所得が300万円から399万円までの間の人。
全体としてみると、
所得が300万円に満たない世帯はおよそ3割。

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一方、女性の一人暮らしの場合、
一番多いのは、所得が200万円から299万円までの間。
その結果、年収300万円に満たない世帯はおよそ5割。
同じ一人暮らしでも、女性の方が男性よりも低所得の人が多くなっている。

【 一人暮らしで女性の貧困リスクが増している、ということだが、
  では、家庭を持っている人の場合は? 】

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A
家庭の場合は、昭和モデルが壁になっている。
どういうことかといいますと、
昭和モデルでは、専業主婦が多かった。
たとえば昭和60年(1985年)では、
専業主婦の世帯は共働き世帯の1.3倍あった。
それが、今では逆転して、
専業主婦世帯は半分以下に減って
一方、共働き世帯は専業主婦の倍以上に増えた。

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ここで注目したいのは
そうやって増えた共働きの女性の収入。
たとえば結婚して働いている40歳から59歳の女性の場合、
全体の半数以上(55%)が年収100万円未満、にとどまっている。
これはなぜか?
それは就業調整が行われているためではないかと。

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就業調整というのは
収入が一定の額に収まるように、働く時間を意図的に抑える、というもので、
そうすれば、夫に養われている、扶養されている、ということになって
税や社会保険料を払わなくてすむ。まさに昭和モデルの真髄です。
逆に、その範囲を超えて働くと、一気に負担増になるので
それを超えないように働く時間を調整しようとする。
つまり、昭和モデルは働くことを押さえる役割を果たしている。

【 しかし、こういう仕組みが必要な人も、たくさんいるのでは?
子育てや介護があって、長くは働けない、という人も多いのでは? 】

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 A
その通りです。人によって、また家族によって、いろんな事情があるので
一概にこうだと決めつけることはできない。
ただ、そこで白書がもう一つ、指摘しているのが
人生100年、という視点なんです。
どういうことかというと、
実は、すでに今、女性の2人に1人は90歳以上まで生きます。
90歳の時点で生存している割合は
女性は52.6%、男性は28.1%。
つまり女性の2人に1人、男性の4人に1人は、90歳以上まで生きる。

そうすると、長い人生、
配偶者と離婚したり、先立たれてしまったり、
また、ひとり親になったり、ということになると
それまで低所得だった人は貧困や、低年金になって、
しかもそれが長く続くかもしれない。
こうしたいろんな変化に対応できる制度が必要になってくる。

【 どうすればいいのか? 】

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A
白書が言うには、まず、女性が経済的に自立できる環境を整備する。
そのために、まず、男女の賃金格差の解消を目指すと。
実は、日本は男女の賃金格差が国際的にみて大きい。
OECDのデータでは
女性の賃金が男性より22.5%低くなっていて、
G7の中では差が最も大きい。
このため、実は今月、法律が改正されて
従業員301人以上の企業は
男女の賃金格差がどれだけあるか、
公表することが義務となりました。

また、税や社会保障の制度を
世帯単位から個人単位に変更する必要性も指摘しています。
具体的には、長年議論が続いている配偶者控除について
これまでいろいろ手直しが行われてはいるが、
「更なる取り組みが必要」という表現で
制度を更に見直すよう求めています。

男も女も一人ひとりが生きやすい社会、
平等に働ける社会を作る、
そこが重要なんだと思います。

(竹田 忠 解説委員)

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