今日のテーマは節電。
この夏の電力不足を受けて、政府はきょうから全国を対象に、7年ぶりとなる節電を要請。一方で猛烈な暑さも続いており、上手に節電するにはどうしたらよいのか、水野倫之解説委員の解説。
今週、東京電力管内で電力需給ひっ迫注意報が出されたが、ここ数年で最も厳しい電力需給が続いているから。
電力は使う量と発電量をバランスさせなければ停電してしまうため、使う量に対し発電量を3%余分に確保しなければ。
注意報はこの余力が5%を下回る場合に出されるもので、東電管内では27日から連日発表。
電力不足の原因は国内の火力発電所が減っているから。
脱炭素の流れもあって毎年数基のペースで廃止され、政府はその分、再エネと原発で補おうとしたものの制度設計がうまくいかずに十分補うことができず、日本の発電量全体が減っている。
これに加えて今週は想定外に早い梅雨明けで季節外れの暑さとなり、例年梅雨の時期の6月は分解点検して休止している発電所が多く、再開が間に合わず電力不足に。
東電管内の注意報は一旦解除されたが、今月からがまさに本格的な夏のシーズン。
厳しい暑さになった場合、政府の最新の予想では、東北から九州の各電力管内で余力が3.7%と3%わずかに上回る依然として厳しい状況。
そこで政府は、節電しかないと、きょうから9月末まで全国に要請した。
ただ猛烈な暑さは続いているので、無理に節電するのではなく、電力不足に対応した節電がポイント。
何も一日中、電力が足りないわけではない。
日中は太陽光パネルによる発電がかなりあるが、問題は夕方から夜にかけて。
太陽光の出力が減ってくるのに対し、家庭では家族が学校や仕事から帰宅し、エアコンを使い始めたり、夕食の準備を始めるなど需要が増え、電力に余裕がなくなる。
具体的には午後5時から8時までが特に余裕がなくなる。
経済産業省によると夏場の電力需要のピーク時に家庭で最も電力を使うのはエアコン、
次いで冷蔵庫や照明、炊事と続く。
そこでまずエアコン。
最初に注意したいのは熱中症をさけるためにもエアコンは必ず使うこと。
先月も埼玉県で94歳の男性がエアコンが使われていない部屋で熱中症の疑いで亡くなっている。
環境省によると、去年、東京23区内で屋内で熱中症で亡くなった人のうち、9割以上はエアコンを使っていなかった。
特に高齢者は暑さを感じにくく熱中症のリスクが特に高いので、周りが声をかけたり、実家に電話してエアコン使用を呼びかけて。
このエアコンの効率的な使い方はまず夕方帰宅して、すぐにエアコンをつけるのは待って。
というのもこの時期、閉め切った部屋の中は外気よりもあつい空気がたまっている。
そのままエアコンをつけると設定温度まで室温を下げようとかなり電力を消費。
窓を開けて熱い空気を外に逃がして室温を下げてからつければ、節電に。
次に設定温度。よく28度というが、あくまで室温。
それ以下の温度にエアコンを設定しないと部屋の中で28度より高いところが残り、熱中症の危険が高まる場合があるので、部屋の温度計で28度以下になっているか確認。
室温28度にすると26度になるよう使っていた場合に比べ、6%の節電効果。
また暑いと感じたときには扇風機を併用すれば、設定温度を下げなくても冷たい空気が効率よく循環。
扇風機の電力も気になるが機種にもよるが扇風機の消費電力はエアコンの10分の1以下とかなり少ないので、併用した方が涼しさが維持できて、かつ節電に。
また日差しが入ってくる場合は、カーテンを閉めてさえぎることで、効果的に部屋を涼しくできるし、フィルターを2週間に1回掃除することで2.1%の節電に。
もしも電力不足で停電しちゃったら命にもかかわる。
日本救急学会ではからだに水をスプレーすることを呼び掛け。
水が蒸発するときに熱が奪われ、熱中症の予防にもなるということ。
エアコンの次に電力を消費する冷蔵庫の節電は、夕方、買ってきた食料品を冷蔵室にぎゅうぎゅう詰めにするのは避け、隙間をもたせるのがコツ。
逆に冷凍庫はぎゅうぎゅうに詰め込んだ方が、お互いが保冷し合う形になるため、消費電力を減らせる。
そして冷蔵の設定は強から中にかえても食品は十分保存できるし、ドアの開閉時間も短くすれば、全体で1.8%の節電に。
夕食の準備で節電できるものは例えば炊飯器のご飯の保温、4時間以上保温するなら電子レンジで温め直した方が節電に。
また冷凍したお肉を料理する場合、朝のうちから、冷凍庫から冷蔵室に移しておけば、夕方電子レンジで解凍する必要がなくなり、節電に。
ほかにも、使っていない部屋の照明を消したり明るさを落とすことで1.1%の節電効果。
無理をするのではなく、ちょっとした工夫で快適な暮らしを維持しつつ節電できる方法があるということを知っていただけたら。
とはいっても、3月東電管内で電力が不足した時には節電が進まず、停電の一歩手前まで。
そこでポイントを付与して自発的に節電に取り組んでもらおうという、デマンドレスポンスと呼ばれる新しい節電方法が今、注目。
電力のひっ迫が予想される前日、電力会社から利用者にスマホのアプリやメールで節電を呼び掛ける通知。利用者がそれに応じて節電するとお金にも代えられるポイントがもらえるというもの。
これまでの取り組みでは、1世帯1日あたり平均1kWhの節電効果があるということ。
今月から、東電や関西電力、中部電力、また新電力では東京ガスなども家庭向けに始める計画で、政府も、取り組みに参加する人に2000円分のポイントを付与する方針を明らかに。
ただまだ導入している電力会社は多くはなく、問い合わせて導入済みであれば参加を検討してみては。
電力不足への警戒、しばらくは必要。
政府は電力不足の詳しい状況や、節電が必要な時間帯を速やかに、かつわかりやすく情報提供していくことが求められる。
(水野 倫之 解説委員)
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