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食物アレルギー どうつきあう?

矢島 ゆき子  解説委員

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◆今後、アレルギー食品表示が変わる予定!?

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お菓子の包装袋などについているアレルギーの食品表示。
今月6月1日に、消費者庁から、食品表示を推奨している「くるみ」の表示を義務づける手続きを、早ければ、今年度中に始める予定だという発表がありました。
食品表示制度で、アレルギーを引き起こすおそれがある食品の表示が義務づけられているものとして、にわとりの卵・牛乳・小麦・そば・ピーナツ・エビ・カニの7品目があります。また表示を推奨するものとしては、いくら・キウイフルーツ・くるみ・大豆などの21品目です。この中の「くるみ」を、今後、表示を義務化する予定だということです。

◆食物アレルギーの全国調査

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どうして、くるみの表示が、今後、義務化予定なのでしょうか?
3年に一度、行われている食物アレルギーの最新の全国調査結果で、くるみのアレルギーが増えていることがわかったのです。これは、食物アレルギーの症状、例えば皮膚のかゆみ・下痢・おう吐などがあった6080人を調査したものです。6080人を年齢別にみてみると、いちばん多かった年齢は0歳。また全体の79.5%を6歳までの子どもが占めるなど、小さな子どもが多いことがわかりました。そして、どんなアレルギー多かったのか分析したところ、にわとりの卵が最も多く33.4%。その次の牛乳が18.6%、小麦8.8%、そして、くるみが7.6 %でした。このくるみのアレルギー、3年前の調査から増加し、ピーナツを抜いて4番目になったのです。

◆どうして食物アレルギーになる?

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このくるみのアレルギーの増加は、最近、くるみの消費量が増えていることも関係しているかもしれないという話もあります。子どもがくるみを食べる機会が増えたかもしれませんが、周囲の大人がくるみを食べることが増えたために、くるみのアレルギー体質になる子どもが増えているかもしれないということを聞きました。どういうことなのでしょうか?
小さな子どもは、何らかの原因で皮膚の表面がカサカサするなど荒れたりしていることがあるかと思います。荒れた皮膚の表面を拡大してみると、細胞がきちんと並ばず、バリア機能が低下しているため、例えば大人が食べたくるみの一部が、皮膚の細胞の隙間から体内に入り、体の免疫に異物として認識され、抗体ができ、その結果、アレルギー体質になることがあるのです。

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そして、くるみを初めて食べたとき、くるみの一部が抗体がくっつき、その結果、アレルギー症状が出てしまうのです。これは、くるみに限らず、卵などでも同じことが起こっていると考えられています。

◆「これって食物アレルギー?」と思ったらどうすべき

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子どもが食物アレルギーだろうかと?と思うこともあるかと思います。その場合はどうしたらいいのでしょうか?
最新の全国調査に関わった、昭和大学医学部の今井孝成教授にお話しを伺ったところ、「本当に食物アレルギーかどうか、正しく診断してもらうことが大切」だということでした。例えば、日本では食物アレルギーになるのは乳幼児の5%くらいと言われ、子どもの一部です。また赤ちゃんの頃に発症した卵・牛乳・小麦の食物アレルギーの7割ほどは、小学生の頃までに自然に治るとも言われています。今井教授曰く、「成長が著しい子どもにとっては、食べることは本当に大切」で「アレルギーかもしれないと自己判断し、不必要に除去するのはかえってよくない」ため、きちんとした診断が大切とのことでした。最新の全国調査では、くるみアレルギーの増加など新しいこともわかりましたが、卵・牛乳・小麦など子どもの成長に大切な食品のアレルギーも多く、ともかく「食物アレルギーと診断されたら、上手につきあっていくのが基本」ということです。

◆食物アレルギーとどう上手につきあう?

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では、食物アレルギーと、どうつきあっていくのがよいのでしょうか?
最近は、完全に除去するより、食物アレルギー症状がでない量を、少しでも食べ続ける方が、日常生活での生活の質・安全性が高まると考えられるようになってきています。不必要な除去はしない。そのためにも、アレルギーがあっても食べられる量を知ることが大切です。具体的には、「食物経口負荷試験」で食べられる量が確かめられます。どのくらい食べられるか、食べてどんな症状がでるかは人によって大きく変わります。ですから、かならず専門の医師のもとで、原因となる食物を少量ずつ食べてみて、確かめることが大切です。
また、中には、ほんのちょっと食べるだけでも重いアレルギーの症状が出てしまう人もいるかと思います。これまでは、完全に食べないようにするしかなかったのですが、最近は、「経口免疫療法」がはじまっています。ただ、これは臨床研究段階のものです。症状がでない・食べられる量の上限を確認して、それより少ない目標設定で、ゆっくり増やしていくのですが、ひどいアレルギー・アナフィラキシーなどがおこる可能性もあり、リスクがあるため、経験豊かな専門の医療機関に限定して行われています。

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また、ふだんの生活の中で、安全性を高めるためにも、食べられるものかどうか食品表示をしっかり確認することが大切です。最新の調査に参加した3分の1以上人は、実は、卵・牛乳・小麦、くるみなど誤って食べてしまったためにアレルギー症状になっていたのです。そして、注意していても、アレルギーの原因になる食物を食べてしまうことがあるかもしれません。万が一、アレルギーの症状が出た時に、どうしたらよいのか、ふだんから、主治医に相談し、素早く適切に対処できるようにしておくことが大切かもしれません。
そして、食物アレルギーの予防については、考え方がかわってきています。以前は、授乳中、あるいは妊娠中に母親が卵などを食べなければ子どもがアレルギーにならないと考えられていたこともありましたが、今は、妊娠中・授乳中に母親が卵などを避けても、子どもが食物アレルギーになるのを予防する効果はないことがわかってきています。また最近、食物アレルギーの発症を予防するために、離乳食の開始時期を遅らせることは推奨されていません。
食物アレルギーの情報は日進月歩。ネット情報などで古い情報もあるので、わからないことがあれば、是非、主治医・食物アレルギーの専門医に確認をし、上手に食物アレルギーとつきあっていただけたらと思います。

(矢島 ゆき子 解説委員)

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