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海外で感染拡大"サル痘" どんな感染症?

中村 幸司  解説委員

欧米など海外で、「サル痘」の感染者が報告されています。これまであまり聞くことがなかっただけに、気になっている方も多いと思います。
そこで、今回は「サル痘」がどういった感染症なのか、お伝えします。

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Q:サル痘はどのような病気なのでしょうか?
A:上の図のような発疹が、顔や手足などに出るのが特徴です。多くが軽症で治るとされています。アフリカで以前からある感染症ですが、いまの感染の状況は、以前とは違っています。今回は、そういった点も解説します。

Q:海外では、どこまで感染が広がっているでしょうか?

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A:WHO=世界保健機関によりますと、以前から上の世界地図で黄色で示したアフリカの国で、感染者がみられました。
それが、2022年5月に入って、アフリカ以外の地域で感染者が見つかりました。イギリスやスペインなどヨーロッパやカナダ、アメリカなど、6月2日までに世界27か国(地図の紫の国)で感染者があわせて700人以上確認されています。

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WHOのテドロス事務局長は、8日、最新の状況として、29か国、感染者は1000人を超えたと発表しています。さらに、各国に感染者の追跡調査の強化を求めています。

Q:警戒感が高まっているのですね。日本には、サル痘ウイルスは入ってはいないということですね。
A:はい。国内の報告例はありません。

Q:サル痘は感染症ということですが、どのように感染するのでしょうか?

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A:サル痘ウイルスに感染することで発症する感染症です。
感染経路は、動物からヒトに、さらにヒトからヒトにもうつります。

Q:動物というと、名前の通りサルからうつるのでしょうか?

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A:「サル痘」という名前は、1958年に最初に感染が報告された動物がサルだったことから、こう呼ばれています。
実際は、アフリカのリスやネズミといった動物の仲間が、主にこのウイルスを持っていると考えられています。他にサルなどが感染しているのが確認された例があります。

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国立感染症研究所によりますと、感染した動物にかまれるとか、動物の血液や体液、発疹に触る=接触により感染します。ヒトからヒトへの感染は、体液や発疹部分の接触、それに、飛沫による感染もあるということです。

Q:飛沫でも感染するとなると、感染力が高いのでしょうか?
A:飛沫で感染するといっても、感染が成立するのは、長い時間、換気の悪いところに一緒にいるような感染リスクが高い状況と考えられています。

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これまで、アフリカ以外で見つかった感染者は、感染者がいるアフリカの国から来た人=渡航歴のある人です。あるいは、そうした国からきた動物を介して感染したケースでした。
さらに、その感染者から周囲の人への感染=ヒトからヒトへの感染は、限られた例しか報告されていませんでした。

Q:でも今回は、ヒトからヒトに広がっているのではないでしょうか?
A:はい。これまでと状況が違っているようなんです。
今回、欧米などで報告されている感染者では、アフリカへの渡航歴のない人で、ヒトからヒトに感染しているとみられる例が相次いでいます。
なぜ今回、これまでと違う感染になって広がっているのか、詳しいことはわかっていません。

Q:ところで、症状はどうなのでしょうか?

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A:潜伏期間は、通常は7日から14日で、5日ないし長いと21日ということもあります。海外では、感染者が見つかったとき、接触の可能性がある人については21日=3週間、他の人との接触をしないような措置が取られています。
一般には、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などの症状」が1日から5日続いて、その後「発疹」がみられます。
発疹は、顔や手足、それに口の中や結膜、つまり目などにできることがあるということです。
多くが「軽症」です。

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Q:軽症ということで、少し安心しましたが、治療はどのように行われるのでしょうか?
A:治療法は、主に対症療法、つまり、熱が出たら熱を下げる薬を投与するといった治療が行われます。発症から2週間から4週間で治癒するということです。
アフリカでは死亡例はありますが、先進国で、死亡例は報告されていない」ということです。
ただ、病気などで免疫力が落ちている人、それに子どもなどで重症になることがあるということです。

症状などが、天然痘とよく似ているともいわれています。
Q:天然痘も発疹がでますね。

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A:サル痘のウイルスが、天然痘のウイルスと同じ仲間で、症状などが似ているようです。ただ、天然痘の方が感染力、致死率は高いということです。
天然痘には、ワクチンがあります。天然痘のワクチンは、サル痘にも効果があります。85%の発症予防効果があるとされています。

Q:高い効果があるのですね。
A:天然痘は、ワクチンによって世界から根絶されました。1980年にWHOが根絶を宣言しました。
天然痘が根絶されて以降、天然痘のワクチンは打たれなくなってきました。概ね50代より上の人は天然痘のワクチン接種をしていますが、日本でも海外でも若い世代は、天然痘のワクチンを打っていません。
サル痘は、2017年ころからアフリカの一部で感染者が増えていました。天然痘ワクチンを打っていない人が多くなってきたことが、サル痘の感染者が増えていることに影響しているのではないかとも指摘されています。

Q:サル痘も、ワクチンで根絶できないのでしょうか?
A:天然痘のようにはいかないのです。

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天然痘は、ヒトからヒトにしかうつらないと考えられています。このため、世界中でヒトにワクチンを接種することで、感染者を減らして、最終的に根絶できました。
一方のサル痘は、リスやネズミといった動物が感染しています。ヒトにワクチンを打っても、動物の間でウイルスの感染が続くので、根絶できないのです。

Q:日本に、サル痘が入ってくるおそれはあるのでしょうか?
A:いまは、新型コロナの対策で、コロナ前と比べて、海外から入国する人は少なくなっています。ただ、入国する人はいますので、サル痘が入る可能性は「ゼロ」とは言えません。

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国は、水際での検疫を徹底するとともに、国内に入ってきたときに備えて、ウイルスの検査ができる体制や、医療機関の患者の受け入れ体制を整えています。

Q:私たちは何かできることはあるでしょうか?
A:日常的に基本的な感染対策をしておくということになると専門家は話しています。
飛沫を受けない、あるいは周囲に広げないようにと、距離をとったりマスクをしたりしています。それと、こまめな手洗いも心がけています。
こうしたことは、サル痘の感染対策と共通していると言いますので、いまの感染対策を続けることが、サル痘の対策にもなるということになります。

Q:良く知らない感染症ということで、いろいろ心配していましたが、冷静に受け止める必要がありますね。
A:なぜ、いま感染が広がっているのか、その原因が次第に明らかになってくると思いますので、そうした科学的な調査に基づいて、各国が、対策進めることが重要になってくると思います。

(中村 幸司 解説委員)

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